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【漫画感想】ダークファンタジーの傑作!『ベルセルク』①

ネタバレします。

ベルセルクの蝕ってあるじゃないですか、作者はあれを現在進行形でやってると思うんだ。愛する読者を捧げて彼は夢を叶える。つまり読者達を老いに捧げ、作者は画力を手に入れる。ベルセルク単行本がベヘリットの役目をする。さしずめ蝕(遅延型)と言ったところか.......え?言い過ぎ?

ちなみに、この作品、世界最大級の海外評価サイト『MyAnimeList』で堂々の一位である!(2020/12/15時点)

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リンク https://myanimelist.net/topmanga.php


所要時間 11分

世界観重視  10 
内面描写重視 9
メッセージ性 10
考察要素   9   合計 38

実を言うと、『ベルセルク』とフロムゲーについて書きたくてnoteを始めました。それぐらい私にとって最重要な作品です。なので、頑張って書きました。

しかし、『ベルセルク』の世界は壮大で、重厚で、神秘的なので言語化が困難で、言葉足らずな説明かも知れません。それでも、どうか暖かい目で見てやってください。

1グリフィス

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            ©三浦健太郎 白泉社

蝕についてはあとで詳しくやるので、飛ばします。

真っ先に言いたいことは、グリフィスみたいな平民出身の傭兵は絶対中世ヨーロッパにいない!

なぜなら、みんなその日を生きるのに精いっぱいで、夢を持つ心理的、物理的余裕がないから。仮に余裕があったとしても、当時の社会体制が障壁になります。

だから、グリフィスは現代人(の象徴)ですよ。

欲しいものは必ず手に入れる。夢を叶えるためなら何だってする。

あいつは「自分の国を手に入れる」というただ一つの渇望のために生きる。つまり、自分らしく好きなように生きてる。精神は完全に現代人です


ちょっと愚痴ります。すいません。

ゴッドハンド転生前は、心情がある程度理解出来ましたが、フェムトになってからは完全に理解が追いつきませんww

あいつは何がしたいんだ?もう国(ファルコニア)手に入れたやん。蝕後は心理描写は「トクン」しかないし。最近は無双シーンばっかりだし。もっと心情を細かく書いてほしいですね。

・考察とか陳情とか

・ところで何でグリフィスだけ、自分らしく好きなように生きることができたのでしょうか。その理由は単行本未収録83話 神との対話 深淵の神②で明かされたと思います。

それは人々がグリフィスという救世主を望み、深淵の神が裏で運命を操作していたからです。

でも、それってなんか残念ですよね。だって今までのドルドレイ要塞攻略とか、ミッドランド王国での昇進も深淵の神によってそうなると決まっていたことになるので

「フェムト」は数学的単位では10のマイナス15乗を指す言葉だそうです。5×3=15ですね。そしてゴッドハンドの数が5人ということを考慮すると意味深です。

ゴッドハンドは入れ替わり制だと仮定すると、「フェムト」は3巡目の最後のゴッドハンドだということを示しているのでしょう。

そして、もしこの説が合っているなら、1巡目のゴッドハンドがいつ誕生したか、また、深淵の神の誕生はそれ以前だと推定できるでしょう。(216年ごとにゴッドハンドは誕生するので、最初のゴッドハンドは216×15年前か。)

・他作品の話になってしまうのですが、『進撃の巨人』のマーレ編のエレンとフェムトの雰囲気が似てるなと思うのは私だけでしょうか?

あの悟った感じとか、カリスマ性とか。

進撃の作者が三浦健太郎のファンらしいので、何か参考にしてるかもですね。

ていうか、自分が影響を与えた漫画の方が先に終わりそうとか、異常ですねw

2ガッツ

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            ©三浦健太郎 白泉社

どう見ても20代前半には見えない。苦労が容姿から伺い知れますね。

彼は理不尽な運命と戦う人間の象徴だと思います。

いつだって大剣一つと己の技だけで、戦場を渡り、あの蝕さえ生き延びました。

彼は因果律という言葉を嫌います。髑髏の騎士が因果うんぬんの話をすると、くだらねぇと言って吐き捨てますねw

加えて、因果を塗り替えてしまうこともあります。特に逃れられない運命、因果である蝕を生き延びたこと。

ここで注目したいのは、彼が死体の腹から生まれたこと。

思うに、ガッツは母親の体の中で死ぬ運命だったが、奇跡的に生まれ落ちた。その時点で彼は、すでに因果律の外の存在なのでしょう。

だから蝕さえも生き延びたのではないでしょうか。

性質ごとに分けると、深淵の神やゴッドハンドが因果律側で、ガッツや髑髏の騎士が反因果律側でしょう。(おそらく髑髏の騎士も蝕を生き延びているので)

3二人の友情

ストーリー構想が上手すぎるんだよなぁ。漫画史に輝く傑作だと思います。最初の黄金時代で上げて、蝕で一気に落とす。そのストーリー展開が恐ろしいほど上手い。

特に12巻は傑作!私的単行本ランキング一位です。

詳しく説明します。

ガッツは孤児であまり愛情を受けずに育ってきました。加えて、子供の頃に掘られた過去があるので、極度に他人に触れるのを嫌います。

ちなみに、おそらくグリフィスも掘られてるので、主要キャラ二人が開発済みというトンデモない漫画です。

その後、ガッツは鷹の団に入って、はじめて友と呼べる存在に出会います。グリフィスです。

でもガッツは今まで人と親密に関わって来なかった過去から、友という感覚がまだ理解できていません。

グリフィスがピンチに陥った時の「やめろー!!そいつは俺の・・・!!」というセリフが凄くもどかしいです。

孤独だったガッツにとって、鷹の団で過ごした時期は正に黄金時代でした。

ガッツは「今はあいつ(グリフィス)の為だけに、己の剣を振ろう。」とまで思うようになります。

そしてグリフィスはプロムローズ館にて友とは何か語ります。すなわち、

「生まれてきてしまったからただ仕方なく生きる。それで生きていると言えるのか。」「友とは他人の夢になびかず自分の夢を持ち、その達成のためなら仲間さえも切り捨てるもの。」「私にとって友とはそんな対等な者だと思っています。」

カッケェ... 美しい友情ですね。しかしここから破滅への道が始まります。

先のセリフを聞いたガッツは、自分もグリフィスと対等な存在になりたい、夢を持ちたいと思い、鷹の団を抜けて、夢探しの旅に出ようとします。

今までのガッツは、目的があってそのために闘うのではなく、闘いたいから闘っていました。また他の団員と同じで、グリフィスに自分の夢を預けていました。(篝火の比喩が結構好き)


しかし、グリフィスは退団を許しません。恐ろしい程の執着心で、ガッツに勝負を挑みますが、負けます。ガッツは鷹の団を出ていきます。

話逸れますが、グリフィスという人物の特徴は二面性ですね。並外れた行動力とカリスマ性があり大勢を魅了する一方で、無邪気でそして強い執着心があります。(体癖論では絶対6種ですねw)

話を戻して、ガッツという心の支えを失ったショックからグリフィスは愚行を犯し、牢獄に囚われます。

しばらく経って、戻ってきたガッツと共に鷹の団はグリフィスを救出しますが、グリフィスは幾多の拷問で無残な姿になり、もう戦えない状態でした。

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            ©三浦健太郎 白泉社

もう鷹の団を率いることは出来ないと思ったのか、はたまたもう一度ガッツを手放すことに耐えきれなかったのか、グリフィスは馬車で一人で逃げようとします。

しかしあえなく転落。ガッツがグリフィスを助けに来ますが、グリフィスはこう思います。

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            ©三浦健太郎 白泉社

「二度とお前を・・・」の後は何が言いたかったのか。いろんな解釈があると思いますが、私は「諦め切れなくなる」だと思います。

グリフィスは、夢かガッツか一方しか選べない。ガッツはグリフィスに夢を忘れさせるほど大きな存在だったのです。

そして蝕が来ます。ボイドのセリフ「彼なりし亜の刻 亜なりし彼の地へ」は何回見ても意味不明ですw きっと大した意味はないのでしょう。

蝕の凄惨さはきっと読者に焼き付いていると思うので、ここでは主にグリフィスの選択に注目します。

彼はなぜ大切な仲間を「捧げる」と言ったのか。彼はただ仲間を犠牲にした訳では無く、何かもっと大きな意味があると思います。

そしてそこに、『ベルセルク』が傑作と呼ばれる理由があると思います。

4蝕(継承)

死んだ仲間の思いを受け継ぐこと、彼らの死を無駄にしないために進み続けることを「継承」と呼んでいます。

マンガでは、よく以下のような手法で、死んだ仲間たちの存在を印象付けます。

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              (C)諫山創/講談社


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            ©幸村誠 アフタヌーン


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             ©三浦健太郎 白泉社

死体の山です。グリフィスは意識界においてこんな事を詰問されます。

「皆お前を信じて着いて来たんだ。お前が行くなんて言い出さなければ、こんな死体の山は出来なかった。どうしてあの城を見上げているだけで満足できなっかたんだい。」

「ここまで来たからにはもう引き返せない。さぁ、あの城に届く為にもっと多くの死体を積み上げるんだ。」

最後の一押しがガッツであることがなんとも哀しいですね。

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             ©三浦健太郎 白泉社

そうです。仲間の死を無駄にしないために、グリフィスは夢を追い続けるしかないのです…

これはグリフィスのセリフに強く表れています。

「詫びてしまえば 悔やんでしまえば すべて終わってしまうから。」

そしてゴッドハンド達の必死の説得(笑)もあって、彼は夢を追うために仲間を犠牲にします。

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もっと言うと、大切な仲間の為を思っているから、仲間を殺すのです。

私は、グリフィスがただの悪役だとは思えません。むしろ結果論で言えば彼は人類の味方です。

蝕で鷹の団を犠牲にすることで、後にファルコニアを築き、全人類を救うことになるのですから。

更に、グリフィスの望みがすなわち人類の望みである、と深淵の神に保証されています。

そして、最も重要なことは、仲間の死を、夢の達成というゴールで以って、意味づける為に、鷹の団を捧げたのです。

エレンやグリシャと同じように、彼もまた過去に、夢に縛られて、途中で妥協することが出来なくなったのです...

5その他

・ガッツとグリフィス、二人が最後どうなるのか知りたいので早く続きを書いて欲しいですね。もし絵が時間を奪う原因なら、少し絵の精度を下げてもいいから、早く進めて欲しいです。

それか、平沢進が新曲発表すれば、もしかしたらモチベーションが上がるかもしれませんねw でも師匠も良い年齢だしなぁ…

・BGMのススメ

・『Forces』・・・歌詞が力強くかつ、美しい。素晴らしい歌。

・『Sign』・・・ワージ!造語の歌詞作るとか天才か?

・『Aria』・・・ベルセルクに合う曲を作れるのは平沢しかいないと思えるほど、よく世界観にマッチしてます。

選曲が偏ってて、私が馬の骨だとバレそうですが、どれも本当に良い曲です。

6まとめ

いつも通り要素を分析して終わります。

・蝕システム
・遺志の継承・・・「詫びてしまえば 悔やんでしまえば すべて終わってしまうから。」
・修羅の道/相対善・・・主人公側が少数派であること。グリフィスは、ガッツにとって敵だが、多くの人にとっては救世主。ガッツは私怨を晴らすために人類の敵となるのでしょうか。



記事で詳しく言及したかった、好きなセリフを載せておきます。

「あんたは… 自分の心の苦痛から逃げ出すためにそうなったんだ!自分から逃げ出すために…!あんたは人間であることをやめたんだ!あんたこそ儚い人間じゃないか!」(第3巻)
「この世界には人の運命を司る何らかの超越的な"律"… "神の手"が存在するのだろうか?少なくとも人は自らの意志さえ自由にはできない。人は記憶の彼方、遥か遠い日、心に負った小さな傷を庇うために剣を執る。人は思いの彼方、遥か遠い日、微笑みながら逝くために剣を奮う。」(第5巻)
「どうして終わったりなくしたりしてから いつもそうだと気がつくんだろう」「こんなところで何を怯えている 少し休みすぎた もう行かなくちゃ もう行かなくちゃ この遊びは終わってはいないのだから」「くるな…くるな今お前に触れられたら、二度とお前を…!」「僕は知っていた。知ってて屍の…みんなの上を歩いてここまで… 詫びることなどできない。これはオレが自分から進んできた道 欲しいものを手に入れるために… 詫びはしない! 詫びてしまえば悔やんでしまえば、すべて終わってしまうあそこにはもう届かなくなってしまうから。」「…そう 何千の仲間、何万の敵の中で 唯一人お前だけが 唯一人お前だけが オレに夢を忘れさせた。 

……げる。」(第12巻)
その夢を踏みにじる者があれば 全身全霊をかけて 立ち向かう... たとえそれが.........(第13巻)
ドラゴンてのは、人間の手におえねえからこそ ドラゴンなんだぜ。
(第14巻)
「逃げ出した先に楽園なんてありゃしねぇのさ 辿り着いた先 そこにあるのはやっぱり戦場だけだ。」(第16巻)
「人は同じ過ちを繰り返す様に見えるけど 因果は決して円環ではない 螺旋なのです」(第26巻)
「なればこそ安らかにあれ」(第26巻)
「この石の籠の中で ようやく分かりました ここは私の戻る場所ではない もう昔に旅立った場所なのだと」「ただ懐かしくて 立ち寄ってみた… それだけです」(第30巻)

最後までお読みいただきありがとうございます。

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