パワハラも時には必要という歪んだ考え方について。 (数字至上主義が人の心を蝕む)
会社は何のために存在をしているのか。
社会にどう貢献できるのか。
こういったそもそも論を議論する事もなく、ひたすら数字(予算)を追い求め続けると、その歪みが社内のいたるところに出てきます。
そして深刻なケースにおいては、その組織は腐敗していきます。
物哀しさを感じつつも、そんな事例を紹介します。
私は、入社以来、営業職として活動をしてきました。当然、予算(ノルマ)ありきの世界です。
毎期毎期、予算との戦い。会社の中では上層部から現場の末端まで、全て数字を起点としてオペレーションが回されていきます。
よって、中間管理職は、数字をまとめたEXCELシートと頻繁ににらめっこする事になります。
そこにまとめられているのは、何の意味合いもない、ただ結果を集計しただけの無機質な数字の羅列です。
しかし、経営幹部の最大の関心が数字に向かっていると、当然、中間管理職の意識も全て数字に向かいます。
数字さえいけば評価され、余計な指摘も受けなくて済みます。しかし数字がいかなければ、叱責され対策を講じろとうるさく言われます。
その為、特に予算進捗が芳しくない時には、上層部への報告に全神経を使います。時には数字を誤魔化して報告することすらあります。
そこには残念ながら、お客様の存在も、現場を駆けずり回っている社員の存在もありません。
そして期末に向かうにつれ、数字の進捗が悪いとあれこれ指示が飛んできます。
「最後まで諦めるな。」
「1円でも多く積み上げろ。」
「数字をかき集めてこい。」
繰り返し言いますが、そこには、お客様の存在も、現場を駆けずり回っている社員の存在もありません。
全てに数字が優先する世界。
こんな日々を過ごしているうちに、人はその本来持っている心を失っていくようです。
他人を気遣う心を失い、お客様への感謝の気持ちも忘れ、そして部下は駒のように扱われる。
数字をあげられる社員は無条件に重宝され、数字のあげられない社員は、その人格とは切り離され、見下される。
ある時、人事考課の面接で、以下のように言われました。
「もっとパワハラするくらいの勢いで部下をリードしてもらいたい。」
部下を高圧的な態度で脅してまで数字をやらせる。ここではそれが正義になってしまっている。
その行為が、部下の心を傷つける事になるかもしれないという想像力すら失ってしまっている。
恐ろしい世界だと思いました。
意味のない数字を無条件にやらせる。やらされる方はやる姿勢を見せないと、評価が下がり社内での立場が危うくなるので、せめてやろうとする素振りは見せる。
ただし、やらされ感満載で当然モチベーションは下がる一方です。
そんな風景が、今の日本中の至る所で見られるのでは無いでしょうか。
そんな中、見事にこの問題を指摘し、解決の道を示してくれる本が出版されました。
『ノルマは逆効果 ~なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか〜 』 藤田 勝利 著
著者の藤田勝利さんは、あのドラッカースクールで、生前のドラッカーから直々にマネジメントを学んだという経験を有するコンサルタントの方です。
日経ビジネスのWebサイトにマネジメントのコラムを書かれており、その存在を知りましたが、その丁寧に選び抜かれた言葉のひとつひとつは、とても分かりやすく、かつ端的に本質を突いており、腹落ち度が高いのです。
そして何よりこの本は、今の日本の実情(惨状)に合わせて書かれているので説得力があります。
これは日本でいちばんわかりやすい、日本人向けの、ドラッカー理論の解説本と私は思います。
これまで組織やマネジメントに関する本をたくさん読んできましたが、この本は飛び抜けていると感じました。
胸に響くフレーズが盛り沢山なので、次回より何回かのシリーズに分けてご紹介をしたいと思います。
藤田さんに直接、マネジメントを学びたいです。