後追い世代によるパロディ歌手アル・ヤンコビックの自伝映画「こいつで、今夜もイート・イット アル・ヤンコビック物語」の感想&一部解説
※この感想は一部ネタバレを含みます
今作はマイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット」のパロディ「今夜もイート・イット」で知られ、日本の「オレたちひょうきん族」にも出演した事もあるパロディ歌手兼アコーディオン奏者アル・ヤンコビックの自伝(風)コメディで、アルを演じるのは「ハリー・ポッター」シリーズでお馴染みのダニエル・ラドクリフ(彼が主演ということで日本で公開される際はアルにも注目が集まるだろうなと思っていたら劇場公開はなし&WOWOWで放送一部のサイトで配信に留まりちょっと残念)。
「オレたちひょうきん族」に出演時のアル
アコーディオンの才能を開花させるも厳しい父親と対立し家を出て、その後たまたま思いついたパロディ曲が受けスーパースターとなり、数多くのパロディ曲が出来ていくエピソード&そのパフォーマンスを描いていくのが大まかな流れ。取り上げられた曲は「今夜もイート・イット」の他にマドンナ「Like A Virgin」のパロディ「Like a Surgeon」、クーリオ「Gangsta's Paradise」のパロディ「Amish Paradise」等が有り、歌詞も字幕が表示されるのでそのユーモラスな内容もちゃんと楽しめます。
事実に忠実かと思いきや、マドンナと出逢った以降や「今夜もイート・イット」がアルのオリジナルでマイケルがそれをパクッた云々と騒ぐ辺りから曲だけでなく今作そのものもパロディと気付かされ、その後は恋人となったマドンナが麻薬カルテルに誘拐されメキシコに単身乗り込み「ランボー」の如く暴れる始末。
その暴れっぷりは案外大人しい&短く、もっと面白く出来た感じがしなくもないのですがその後は仲違いしていた父との和解も描き、感動的に終わるかと思いきやミュージシャンの自伝映画あるあるの悲劇的最後(勿論捏造)を遂げ、更に写真でアルの生涯(やはり一部捏造)が伺えるエンドロールに「キャリー」なオチが待ってたりと彼らしく締めてくれ、この辺りはかなり充実してます。
ダニエルの見事な演じっぷりも必見ですが、アル本人も実際に所属していたレコード会社スコッティ・ブラザーズ(80年代中盤のジェームス・ブラウンやサバイバー、悲劇のLAメタルバンドのライオンらも所属)の設立者を演じてます。
また、洋楽好きなら序盤のパーティーでジャック・ブラック演じる「アメリカン・グラフィティ」でもお馴染みDJのウルフマン・ジャックにサルバドール・ダリ、アンディ・ウォーホル(「人は誰でもその生涯で15分だけは有名になれる」という彼の発言をベースにしたと思われる「15分だけ時間をやろう」という台詞有り)、存在感薄目故に?拍手がまばらなクイーンのジョン・ディーコンらに混じりディーヴォやエルトン・ジョンにアリス・クーパー、フランク・ザッパらしき面々を見つける事が楽しいかもしれません(実在した歌手について言えば終盤の授賞式ではダイアナ・ロスにプリンスらしき人物が登場しており、後者に関してはアコーディオン部門なのに何故かそわそわしている姿にウケました)。
ちなみにアルは現在も北米では第一線で活躍しており、約10年前ながら最新アルバムは全米1位を獲得。これを機に前述の「ランボー」のもっと濃いパロディも含むアル主演の傑作「パロディ放送局UHF」も再注目&どこかで配信されると嬉しいですね。ガンズにジョージ・マイケル、プリンスらのPVをパロディにした主題歌の「UHF」のPVもアルに興味を持った方ならオススメ。
アル主演「パロディ放送局UHF」の「ランボー」パロディ
自伝(風)ながらネタ満載の作風は彼らしくもついていける人が限られるかもしれませんが、アルのファンは勿論80s洋楽好きなら楽しめる要素が沢山有る作品だと思います!
現在のアル・ヤンコビック
1998年にレーシック手術を受け、現在はメガネ無し&ヒゲ無しのビジュアルに。このインタビューによると実際マドンナとは付き合うどころか45秒程度しか会ったことがないとの事(笑)。7:40辺りからはアルの今作の出演シーンも一部観れます。
この感想は下記のFilmarksのレビューを一部加筆修正しています。
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