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【仏教×現代社会】~第1回「デジタル時代を生きる私たちの心」~


デジタルの波に揺られる現代人

朝、目が覚めてからの5分間

「あ、また朝イチでSNSチェックしちゃった...」

皆さん、心当たりありませんか?
私自身、僧侶でありながら、ついついしてしまう・・。
スマートフォンのアラームで目覚め、そのままタイムラインをスクロール。いつの間にか、これが私たちの「朝のルーティン」になっています。

たとえば、昨日の私。
早起きして読経をしようと決めていたのに、ついSNSを開いてしまい、気づけば30分が経過。
「やってしまった...」
という後悔と共に一日が始まる。
きっと皆さんにも、似たような経験があるのではないでしょうか。

知らず知らずの心の疲れ

デジタルの世界は、私たちに便利さと共に、目に見えない疲れも与えています。

たとえば、こんな経験はありませんか?

  • 投稿へのいいね数が少なくて落ち込む

  • 友人の華やかな投稿を見て焦りを感じる

  • 休日なのに仕事のメールが気になって仕方ない

  • 新しい通知を確認せずにいられない

私の場合、Stand.fmで配信を始めた当初、再生数やいいねの数が気になって仕方ありませんでした。
数字が伸びない日は
「自分の話し方が悪いのかな」
「内容がつまらないのかな」
と、必要以上に悩んでしまったものです。

仏教の智慧が照らす現代社会

無常:移ろいゆくデジタルの世界

仏教では、この世のあらゆるものは常に変化し、永遠に続くものはないと説きます。
これを「無常」と呼びます。

デジタルの世界を見てみましょう。
たとえば、昨日バズった投稿は、今日には下の方へスクロールされ、誰の目にも触れなくなっています。
先週話題になっていたニュースは、もう誰も覚えていない。
フォロワー数やいいねの数も、まるで波のように上がったり下がったり。

これって、まさに無常そのものですよね。

私が特に印象に残っている出来事があります。
あるとき、とても工夫して作った動画がたくさんのいいねを集めました。
嬉しくて何度も再生数をチェックしていたのですが、次の投稿では、いつも通りの反応に。
その時、「あぁ、これこそが無常なんだ」と実感したのです。

縁起:つながりの本質を考える

「縁起」とは、この世界のあらゆるものが互いに関連し合い、支え合って存在しているという考え方です。

SNSでの出会いも、一つの縁です。
でも、そこだけにとらわれていると、目の前にある大切な縁を見失ってしまうかもしれません。
たとえば、家族との何気ない会話、友人とのランチ、通勤途中で見かける季節の花々。
そういった日常の「縁」の中にこそ、心を豊かにするヒントが隠れているのです。

中道:バランスある生き方へ

「中道」は、極端を避け、バランスの取れた道を歩むという教えです。

デジタル機器を完全に遮断する必要はありません。
大切なのは、使う時間や場所、目的を意識すること。
たとえば、
「食事中はスマホを見ない」
「寝室にはデジタル機器を持ち込まない」
といった、自分なりのルールを作ってみてはどうでしょうか。

明日からできる心の整え方

呼吸と共にある生活

まずは、朝目覚めてすぐの「呼吸の時間」から始めてみましょう。
スマートフォンに手を伸ばす前に、深いゆっくりとした呼吸を3回。
たったこれだけで、一日の始まり方が変わってきます。

具体的なやり方をご紹介します:

  1. 目覚めたら、まずはゆっくりと背筋を伸ばす

  2. 目を軽く閉じるか、柔らかな視線で前方を見つめる

  3. 8秒かけてゆっくりと息を吐き出す

  4. 4秒かけて自然に息を吸う

  5. これを3回繰り返す

慣れてきたら、呼吸に合わせて数を数えてみましょう。
雑念が浮かんでも無理に排除する必要はありません。
「あ、考え事が浮かんできたな」と気づいたら、また優しく呼吸に意識を戻す。これが瞑想の第一歩です。

デジタルとの新しい付き合い方

私が実践している方法をいくつかご紹介します:

  • 「デジタルフリーの時間帯」を設定

    • 食事の時間(約30分)

    • お風呂の時間(約20分)

    • 就寝前の1時間

  • 通知の見直し

    • 本当に必要な通知だけを残す

    • 仕事用と私用でアプリを分ける

    • 特定の時間帯は通知をオフに

  • 意識的なオフライン時間の創出

    • 週に1度の「デジタルデトックスデー」

    • 散歩やヨガなど、体を動かす時間

    • 読書や習字など、趣味の時間

五感で感じる生活の豊かさ

デジタルの画面から少し目を離して、五感を使って過ごす時間を作ってみましょう。

たとえば、お寺の庭の手入れをしていると、土の香り、鳥のさえずり、木々のざわめき、風の温度...さまざまな感覚が意識に上ってきます。
画面の中の世界とは違う、立体的な豊かさがそこにはあります。

皆さんも、日常の中で「今、ここ」を意識する時間を作ってみてはいかがでしょうか。

これからの時代を生きるために

デジタル技術は、私たちの生活に大きな便利さをもたらしました。
それは否定すべきことではありません。
ただ、その便利さに振り回されるのではなく、上手に活用していく智慧が必要なのです。

そして、どんなに社会が変化しても、変わらない大切なものがあります。
それは、あなたの内側にある「静かな心の源」です。
デジタルの波に飲み込まれそうになったとき、ぜひ思い出してください。たった一呼吸でいい、心を内側に向ける時間を作ることを。

次回は「環境問題と仏教観」をテーマに、人間と地球環境との関わりについて、仏教の視点からお話しさせていただきます。
どうぞお楽しみに。

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