【アイデアだけでは入選できない!】予選突破のために気を付けたい11のポイントその1(2017年10月号特集)
ここまで「最初の思いつきの発想やひねっていない作品では予選落ち」と説明してきたが、実はアイデア自体はよくても、予選であっさり落ちてしまう理由はほかにもある。
ここでは「入選するにはもう少し精度を上げておきたい」という11のポイントについて説明する。
1.趣旨とあっていない
応募要項には書いてなくても、求められる趣旨を踏まえないと入選しにくいことも!
公募と主催団体の趣旨からすると、「こんな作品が求められそう」のようにわかる場合がある。同じ川柳募集でも、こっちはシンプルに面白いもの、こっちは深みのあるものが選ばれそうとか。
また、ジャンル違いにも注意したい。鈴木光司の「リング」は「横溝正史賞」の最終選考まで残ったが、狭義のミステリーではないという理由で落選した。特に本格推理とSFはジャンルの定義にうるさい。
公募の趣旨を見分ける最良の方法は、応募要項をよく読み、過去の入選作品を見ることに尽きる。
具体的な例と対策
賞の趣旨とあっていない
たとえば公募実施の目的が「交通安全」なら、それに反するものが入選しないのは当然。「感動作文」の募集なら、感動できない作品は入選しない。
テーマからそれている
テーマが設けられている公募は、テーマから外れていれば入選しにくい。テーマが「平和」なら、読後に自然に「平和」という言葉が立ち上ってくるかをチェック!
ジャンル違い
この賞は純文学系、この賞はミステリーでも社会派ミステリーといったジャンルに注意。ジャンルの線引きは曖昧だが、乗り越えられないジャンルの壁もある。
2.過去の入選作と似ている
毎年同じ趣旨で募集していても、毎年微妙に違うものが選ばれている。そこに注目!
毎年同じ趣旨で募集している公募でも、選ばれる作品はやはり違う。たとえば、「交通安全年間スローガン」は、平成29年度の一般部門Bの最優秀賞は「身につけよう命のお守り反射板」、平成28年度の一般部門Bの最優秀賞は「シニアこそジュニアのお手本交通安全」。前者のテーマは「夕暮れ時、夜間の交通事故防止」で、後者のテーマは「高齢者の交通安全」。テーマが違う。
文学賞も同じで、募集内容は毎年同じでも、やはり直近の受賞作と似たものは避ける。ジャンルは同じでも、題材や作風は違ったものを選ぶ。
似てはいけない作品
直近の受賞作
前回の入選作品はちらっとでもいいので見ておくとよい。標語などの定期開催公募は例年似た作品が受賞するが、それでも何から何までまるかぶりでは入選しない。
賞を代表する作品
たとえば、群像新人文学賞に村上龍の「限りなく透明に近いブルー」っぽい作品で応募するようなことは得策ではない。似たものは入選しないし、比較もされる。
有名な作品(名作)
有名な作品には似ないようにする。ミステリーであれば、過去に使われた有名なトリックも調べておく。本人は知らなくても、選考委員が知っていれば落とされる。
3.見た目で損をしている
「読みにくそうだ」「初心者が書いたものだ」という先入観を持たれると損をする
社会心理学に「ハロー効果」というのがある。ハローというのは後光のことで、「お坊さんだから徳が高いだろう」「大学教授だから頭がいいのだろう」という思い込みを言うが、この逆もある。
文芸作品では普通は算用数字を使わないし、まして「1長1短」なんて書かない。そうした常識的な書き方をしていないと、「これは相当なド素人だな、そんな人がうまいはずはない」と思って読んでしまう。そこで評価が決まるわけではないが、いい影響ではない。審査は作品本位とはいえ、余計なハンデは背負わないように事前に取り除いておこう。
これは今すぐ直そう
横書きで書いている
字が読めない
書式がおかしい
短詩型の分かち書き
算用数字を使っている
算段組、両面印刷
改行一字下げをしていない
4.基本の文章力不足
文章の基本のキができていないと思われたら損。気を付ければすぐに直るので今日から実行!
「漢字を使ったほうが高尚そう」というのは鎌倉時代ぐらいからある思い込みだが、「此の様にしたので御座います」なんて書いてあると、常用漢字を知らないんだなと思われる。
表記の不統一、誤字、よじれ文は、あまりにひどいと、神経が行き届いていないか、推敲していないかはわからないが、いずれにしてもそんな人にいい文章が書けるはずがないと思われる。
うまくはないが非常に素直に書いていて、そのたどたどしさがかえっていいということもあるが、やはりちゃんと書いてあるに越したことはない。
文章、これだけは直そう
漢字の使い過ぎ
表記の不統一
よじれ文
誤字、誤変換
5.文章が粗く、伝わらない
発想が良くても書き方が悪ければ伝わらない。
では、伝わる文章にするにはどうしたらいいか。
文章の基本のきは卒業していて、一読してみるとちゃんと書けている。しかし、言語明瞭、意味不明、何が言いたいのかさっぱりわからないという文章がある。文章にとってもっとも大事なのは達意で、伝わらないのでは意味がない。
伝わるようにするには、まずは第三者の目で見ること。また、「この表現で伝わる?」「その表現で大丈夫?」「そんな説明でわかる?」「要するに何が言いたい?」と常に自分に問うこと。
無駄は、削るしかない。削れば削るほど文意は鮮明になり、文章のテンポもよくなる。
ここにも注意しよう
説明してしまっていないか
出来事を通じて感じてもらうべきこと、行間に書くべきことは説明しない。
抽象的で言いたいことが不明
具体的には何を言いたいのか伝わらないと思ったら、わかりやすい例を出す。
文章のロジックがおかしい
文章がテーマに向かっていない。論旨をまとめ、論理の筋道を確認しよう。
手あかのついた表現をしている
ありふれた慣用句は使わない。使うときは違和感がないか、効果があるか考える。
無駄な文章がある
テーマから見て、なくていいものはないほうがいいもの。
残りの6点は下記リンクに掲載!
特集「その作品、みんなとかぶってますよ」
公開全文はこちらから!
※本記事は「公募ガイド2017年10月号」の記事を再掲載したものです。