あの日のあなたの淋しさへ
たしか、「とんび」というドラマのセリフだったと思う。
放送当時(10年以上前?)に見たきりなので、詳細は自信がないが、こんな内容だった。
友人の話を聞いていたら、突然このセリフのことを思い出した。
友人は、幼い頃両親が仕事で忙しかったようだが、特別淋しかった記憶はないと言う。
でも、もしかしたら、淋しかったのだろうか、と、あるキッカケがあって、自身の記憶をたどっていた。
しんしんと降り積もる淋しさ。
一つ一つは大したことはない。
手のひらに舞い落ちた雪の粒は、ふっと溶けて消えてしまい、それきりだ。大して冷たいとも感じない。
しかし、ずっとそうして雪の中にいると、次第に身体は冷えていき、雪は降り積もっていく。
音もなく、
音もなく。
気がつけば心は冷え切って身動きがとれない。
こういう淋しさは、多くの人が、心の奥、幼い記憶の中に抱えているのだろう。
そして、そのままでは死んでしまうから、淋しさに冷え切った子供は、心を閉ざしたり、自分を叱咤激励したり、振り向いてもらえる自分を作り出して、生き延びる。
大人になったらある日、時期が来たら、そのことを振り返る日があるかもしれない。
子供の頃の自分を癒すため、淋しさを思い出し、今はもう淋しくないよと、伝えられるかもしれない。
あの日の自分を、温めてあげられるかもしれない。
全ての瞬間は、同時に存在していると言われている。
あの日の幼い自分と、今ここにいる自分は、同時に存在している。
感覚的にはよくわからないかもしれないが、そういうこともあるかもしれないと、想像してみる。
あの日孤独だった自分を知っているのは、今の自分だけだ。
あの日、しんしんと降り積もる雪の中で、凍えずにいられたのは、きっと今日のあなたがいるからだ。
ちゃんとここはあたたかいから大丈夫だと、伝えてあげて欲しい。
あなたのことを覚えていると、心の中で寄り添ってあげて欲しい。
きっとその繋がりが、あの日あなたを生き延びさせてくれたのだ。
全ての瞬間のあなたに、優しさが降り積もりますように。