11の倍数の見つけ方についての補足
「『合同式』の性質」について、「等式の性質」とパラレルに論じられるという趣旨のことを書きましたが、まずはその理由を説明します。
そのまえに、話がはやいので、Wikipediaの情報を紹介します。
a を整数、d を0でない整数とすると、式 a = qd + r(0 ≤ r < |d|)を満たすただ一組の整数 q および r が存在する。ここで q は「商」、r は「剰余」とそれぞれ呼ばれる。
ここで気付いていただきたいことは、いわゆる「割り算」には2つの種類があるということです。
1つは、一般に普及している電卓でやる「割り算」で、
9÷5=1.8
というものです。これは、「割り算」という演算について、整数÷整数の結果が整数でなくてもよいと考える場合を示しています。
もう1つは、整数÷整数の結果が整数以外になる場合を認めないと考える場合と言えますが、これは「割り算」というより、上のWikipediaからの引用のように整数の表し方の問題だと見たほうがいいかもしれません。高校でやる整式÷整式の問題については、完全に式変形の話と言ってもいいことに通じます。最初の「割り算」に対応するのは分数式ということになるでしょうか。
二つの整数A, Bをそれぞれ0でない整数dで割った時の余りが r (0≦r<d)で等しくなるときを考えます。それぞれの商をp, qとすると、引用部分にしたがって、
A = dp + r、B = dq + r
と表せます。これが、A ≡ B (mod. d)であることに対応しています。
整数 n を考えます。
A + n = dp + r + n、B + n = dq + r + n
となり、dp と dq は d で割り切れるので、結局 r + n を d で割った余りが新しい余りとなりますから、A + n と B + n を d で割った余りも等しくなります。
つまり、A ≡ B (mod. d)ならば、A + n ≡ B + n (mod. d) というわけです。
引き算、掛け算の場合も同様にして余りの部分が一致していることを示せば終わりです。
次に、10 の偶数乗のとき11を法として、1と合同であり、奇数乗のとき11を法として、-1と合同であることを示します。
1.10の偶数偶数乗が11を法として1と合同であることの証明
10^ (2n) ≡ 1 (mod. 11、以下同様なので省略)であることを示す。
( i ) n = 1 のとき、10^2 = 100 ≡ 1 で成立
( ii ) n = k ( k = 1, 2, 3, … ) のとき、10^(2k) ≡ 1 だと仮定する
両辺に10^2をかけると
10^(2k+2) ≡ 10^2 ≡ 1
すなわち、10^{2(k+1)} ≡ 1 が導かれ、
n = k + 1 のときにも成立する
( i )、( ii ) より、全ての正の整数 n について、10^(2n) ≡ 1である■
*合同式の定義から、A ≡ B , B ≡ C のとき、A ≡ C で、これを使っちゃ
ています。
2.10の奇数乗が-1と合同であることの証明
10(2n+1) ≡ -1 であることを示す。なお、これについては後から詳しく説
明します。やり方は1と同じです(書くのが少しダルいですね)。
(iii) n = 0 のとき、10 ≡ -1 で成立
( iv) n = k ( k = 0, 1, 2, 3,… ) のとき、10^(2k+1) ≡ -1 だと仮定する
両辺に10^2をかけると、
10^(2k+1+2) ≡ -1 × 10^2 ≡ -1 × 1 = -1 ( ≡ と = を区別しています)
すなわち、10^{2(k+1)+1} ≡ -1 ←2k+3 = 2 ( k + 1 ) + 1と変形
つまり、n = K + 1 のときにも成立する
(iii)、( iv ) より、0 以上の全ての整数 n について、10^(2n+1)≡-1である■
いわゆる数学的帰納法ってやつですね。
7の倍数とか17の倍数とか素数の倍数の見つけ方について、京都先端科学大学付属中学校高等学校の先生が解説をしておられることが分かりました。大学入試で多くの受験生が苦手とする(と聴いています)「整数論」なので、このような問題を出すのは、ひょっとすると優秀な受験生の青田買いなのではないかと勘繰ってしまいますね。
今回の締めとして、余りを-1とみることについて、説明します。
冒頭の
Wikipediaからの引用ではなく、剰余(余り)の数を最小化するという提
案である絶対的最小剰余という考え方を用いています。これもWikipedia
からの引用を貼っておきます(一部改変)。
絶対的最小剰余
剰余の絶対値が最小となるよう商を定める方法。この方法では、
−|d|/2 < r ≤ |d|/2 あるいは −|d|/2 ≤ r < |d|/2
の範囲に剰余 r が含まれる。
要するに、この場合、r を -5から5までで考えようということです。
10を11で割った余りが10とするのは、負でない最小の11の倍数である0
から見たら10大きいからで、それを、次の11の倍数の11から見たら1 小
さい数だと見方をかえて、 -1 余るとするのです。
な、なんか疲れました。ご読了いただいた方には感謝いたします。