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小さな改善で生活は変化するー『私の生活改善運動(安達茉莉子)』ー

本を半分ほど読んだ時、栞を挟んでふと自分の部屋を見回してみた。
すると次から次に目につく、なんとなくそこに存在するなにか。
もらったけど全く使っていないコップ。
いつか片付けようと山積みのチラシ。
ちょっと欠けているお皿。
賞味期限切れのお菓子。
そんなに好きじゃないけどまだ着られる服。
いつか使うだろうとしまい込んでいる鞄。

あ、だめだ。
手放したい。
もっと、きちんと、私の好きなものだけに囲まれて暮らしていきたい。

猛烈な衝動が腹の底から突き上げてきて、次の瞬間にはゴミ袋を掴んでいた。
何年も放置されていた、実は不要なもの。
なんとなく使っていたけれど、そんなに好きではなかったもの。
見ていて少し気分が下がってしまうもの。
なくても全く困らないもの。
そもそも、もう使えないもの。

ほんの30分くらいで、大きなゴミ袋が一つ満タンになった。
その中のひとつ、結婚してからずっと使っていたウォールポケットには、いつのものか分からない郵便物やチラシが山のように刺さっていて、埃もたっぷり詰まっていた。
思い切ってウォールポケットごと中身も全て手放した。
ぽっかりと空いた壁に、ずっと箱に入れっぱなしだった絵を取り出して飾ってみる。するとその絵が視界に入るだけで、ほんのり心の光度が上がるようになった。

この本は今年通い始めたTOUTEN BOOKSTOREさんのイベントで、クレオさんに選書していただいた一冊。

「生きるぞ!って気持ちになる本をお願いします!」
とお願いして、三冊選んでいただいた中にこれが入っていた。
手触りの良い紙、可愛らしい表紙が気に入って真っ先に読み始める。
(TOUTENさんはいま一番好きな本屋さんなので、名古屋住みの方は是非行ってみてください)

元々はZINEとして出されていたエッセイをまとめて書籍化されたそう。
著者の安達さんはバリバリのキャリアを積まれたエリートな方、だけど、今は作家さん。
忙しさに埋もれるような日々から、少しずつ自分の生活を良い方へ、良い方へ変えていく姿が描かれる。

タイトルだけ見ると、よくある(失礼、)お部屋を綺麗にするためのアイデア本かな?と思われそうだけど。
この本に詰まっているのは便利で実用的な内容ではなく、不器用だけど一歩ずつ自分と向き合う一人のひとのまっさらな姿。
だからこそ、自分もやってみたい、このひとのように自分自身ときちんと向き合いたい、と衝動がほとばしる。

本棚を自分で作って、そこに並べる時に「過去に大切だった本が、今並べたい本ではなくなっている」ことに気づいて愕然とする場面にはたまらない気持ちになった。
時間は進む。
昔の自分と今の自分は違うから、好きなものや大切なものも変化していく。
昔大切だったから…と、いつまでもしがみついて放置することがないようにしないと、部屋の中が過去の遺物だらけになってしまう。

全て読み終わった今、私が改善したいことはまだまだある。
①器を自分が本当に気に入っているものだけにしたい
②肌触りの良いバスタオルだけにしたい
③見るだけでわくわくする本棚にしたい
④音楽を良い音で聴きたい
⑤いつでもみんなで見られるように写真をぴしっと整頓したい
今思いつくだけでもこれだけあって、全て実行しようとすると何日、何ヶ月かかるか分からない。
でも、人間いつ死ぬかわからないし。
死ぬ間際に「もっとあれもこれもやりたかった…」となるのは絶対に嫌。
やらない後悔よりも、やった後悔の方が何百倍も良いはず。

生まれ変わるなら、生きてるうちに。
今日も明日も少しずつ、好きなものと嫌いなものをはっきりさせながら、生活を良くしていきたい。
なんとなくで生きる方が力を使わないし、悩まないし、楽ではある。
だけど、どうせなら心から好きなものを選んで、見るだけで幸せな気持ちになる部屋で生きていきたい。
雑誌に載っているような誰もが羨む部屋ではなく、今の自分が選んだものに囲まれた生活をすることが一番だと教えてくれる本。
この本は本棚にお守りのように入れておきたい。
迷った時「自分が今、ほんとうに好きなものを選ぶこと」を思い出せるように。

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