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中高生と滋賀を学んだら、最高の夏になった話。

滋賀県民は出身を聞かれると、「京都のあたりです。」と滋賀出身であることを隠すらしい。どうせ東京から行くなら京都や大阪、と素通りされがちな、ちょっと目立ちにくい場所なのだ。

そんな滋賀で、滋賀キャンプという中高生を対象にした3泊4日のサマーキャンプがあったので、大学生メンターとして参加した。

テーマは「滋賀を知る、自分を知る。やってみたいに出会う夏。

そこで中高生が、滋賀に隠れたストーリーを知り、自分について振り返り、そして新しいやってみたいを見つけていく様子を目の当たりにした。

少しでも多くの中高生に最高の夏の思い出、そして大げさに言うなら人生の転機のカケラを届けるため、来年も開催する滋賀キャンプの魅力について語ってみる。

・滋賀を体験して、実感にする
・普段とは違う世界で、自分を知る
・作る側からみたキャンプ

滋賀を体験して、実感にする

滋賀キャンプのメインは、地域学習。地元の人と一緒に、滋賀の歴史や文化、仕事を体験する時間だ。

今回は、政所茶発祥の地でお茶作り体験・古着の絞り染め体験・琵琶湖での漁業体験・歴史がつまった近江八幡のまち歩きなど、計13種類のアクティビティがあった。

わたしの母は地域学習の説明を読んで、参加を迷っていた高三の妹に「見た?あのムダな内容。あんなキャンプより塾に行きなさい。」と言っていた。

たしかに、大学試験では「滋賀県で有機農法でお米を作っている女性農家が感じるやりがい」や「朝4時に起きて炎天下で作業する漁業の大変さ」について聞かれることはない。

でも参加した中高生は、田んぼの雑草とりから学ぶのは、雑草とりの仕方だけではないということを証明してくれた。

書き起こしではないため細部は曖昧だが、1日の振り返りの時間に、参加者の高校生がこんなことを言っていたのだ。

わたしはもともと、仕事に対して大変だとか、しんどいだとか、マイナスなイメージしかなかったんです。だけど今日農家の方に「一番大変なことはなんですか?」って聞いたときに、なかなか答えが出なくて。仕事ってお金をもらうから、絶対大変なものだと思っていたから、それにすごく驚きました。それで、仕事の目的がお金を稼ぐことであるならば大変なのかもしれないけれど、もしそれが自分が大切にしているものの一部だったり、好きなものだったりしたら、それがやりがいになって、仕事って楽しいんじゃないかなと気付きました。

この高校生の感想は、好きなものを仕事にすべき、好きなものであれば努力も辛くないといった、「世間でよく言われていること」に要約できてしまうかもしれない。

それでも、実際に農業の大変さを炎天下での作業で実感し、そして農家に直接質問をしたからこそ、よく言われている「真実らしきもの」が彼女の中で「実感」になったのだ。

そうやって自分がなんとなく抱いていた思い込みを、経験をもとにした実感にすること。それが、未来を自分の手で作り始めるきっかけ、人生の転機のカケラになると私は思っている。

キャンプ最終日に、 振り返りとして15人の中高生の感想や気付きを一つひとつ聞いた。それぞれが自分なりのキラキラした実感を得ていることに、大学生はみんな泣きそうになった。

地域学習は滋賀の魅力を発見することを目的にしているため、滋賀県ならではの文化や活動についての体験が多い。

東京出身の中高生は、名前を聞いたこともない新しいものとして滋賀の魅力に触れ、滋賀県出身の中高生は、身近すぎて見えていなかった魅力に気づく。

「わたしはキャンプに来る前、自分が住む滋賀のことがあまり好きではありませんでした。」なんて一文で始まる参加者のスピーチを聞くことができるのも、「滋賀を知る」をテーマにしている滋賀キャンプならではだ。

普段とは違う世界で、自分を知る

地域学習などキャンプならではの活動はもちろん、日本全国から集まった中高生同士や大学生との交流も、滋賀キャンプの大きな魅力の一つだと思う。

住んでいる場所に関わらず、中高生は学校と自宅、通っているならさらに塾をひたすら回る生活になりがちだ。

でも滋賀キャンプでは、違う学校や都道府県から来た、部活も趣味も違う同世代の子と必ず出会える。

今回のキャンプでも、滋賀出身の子と東京出身の子、生徒会を頑張っている子とスポーツを頑張っている子など、滋賀キャンプがなければ関わりもないであろう学生たちが、さまざまな垣根を超えて仲良くなっていた。

今回のキャンプでは、「人生で大切にしている言葉」というテーマで大学生メンターが自分の人生を語る時間もあった。

大学生が自分の人生を振り返って選んだ「頑張るのは恥ずかしいことではない」「自分の成功の裏には周りの人の支えがある」「何かを達成しようと思えば必ず誰かに嫌われなければいけない」といったメッセージ。

それは私たちが今回のキャンプのように、慣れた生活圏から勇気を出して一歩踏み出したことで得た実感だ。

キャンプ全体でもっとも心が動いた瞬間として、地域学習ではなくこの大学生の話を選んだ参加者もいた。中高生にとっては少し先輩だけれど、まだ社会人ではない。そんな大学生が中心となって作っている滋賀キャンプだからこそ起きる、化学反応があるんだと思う。

作る側からみたキャンプ

そう実は、滋賀キャンプを中心となって動かしているのは、私たち大学生メンターだ。

13もの地域学習に協力してくれる地元の方を探し、時間や内容を調整したり。ワークショップや最終日の発表会の内容を一から考えたり。

8月のキャンプ当日のために、前年の12月から滋賀・東京・アメリカの3拠点でそれぞれの作業を積み重ねてきた。

作る側としては、お花を育てているような感覚だった。

気を使って優しく種を植え、じっくりじっくり水をやり、芽を育てる。そうやって準備をきちんとしても、花を咲かせてくれるかはわからない。いつ花が開くかもわからない。

そんな期待と不安で迎えた当日。結果としては、きちんと花が咲いた。

滋賀県近江八幡のお祭りで、炎を奉納するために使われる松明。その松明づくりの体験をした高校生が、松明の魅力を広めるためのプロジェクトを始めたり。

地域学習から帰るタクシーで、明日帰りたくないね、さみしいねという会話が聞こえたり。

「滋賀キャンプで、考え方がガラッと変わりました。」と報告してもらったり。

こんな風に、たくさんの花が咲いた滋賀キャンプ。一番の肥料は「ありがとう」だった。

大学生メンターは、仕事を頼んだり頼まれたり、ありがとうを重ねてキャンプを運営する。最終日の打ち上げでは、あの時ありがとう、これをしてくれありがとう、いてくれてありがとうと、みんなで泣き合うくらいだった。

キャンプに協力してくださった地域の方もきっと、自分が生まれ育った、もしくは何らかの縁でたどり着いた滋賀へのありがとうが、「滋賀の魅力を高校生に伝えたい」という思いにつながっていたんだと思う。

中高生も、私たちにたくさんのありがとうをくれた。

親の賛同を得られず、泣く泣く滋賀キャンプに行かないことを選択した妹を間近でみた私としては、滋賀キャンプ開催の情報が偶然やつながりで届いてくれて、その価値を彼ら彼女らが感じてくれて、さらにその保護者の方も価値を信じてくれて、実際に中高生が滋賀キャンプに来てくれたということに、逆にありがとうと言いたいのだけれど。

とまあそんな風に、ありがとうで回る世界。そんな世界を中高生という多感な時期に体験するのは、とっても大切なことなんじゃないかなと思う。

滋賀キャンプの拠点となった近江八幡市の名誉市民・ヴォーリズさんの言葉に「近江八幡は世界の中心だ」という言葉があるらしい。

その話をしてくれたまちづくり会社まっせの田口さんは「彼は本当に近江八幡を世界の中心として捉えていたわけではなく、自分がいる場所が世界の中心だという意味で言った」と解説していた。

ここで生きたいと思えるような場所は、言い換えてみれば自分の世界の中心なんだと、私は理解した。

滋賀の魅力を伝える滋賀キャンプだけれど、滋賀出身であってもなくても、自分がいる場所を理解し感謝するための、そしてどこを自分の世界の中心にするかを開拓する力を養えるキャンプでもある。

そんな滋賀キャンプに、来年は参加したいという中高生、もしくは参加して欲しい人が頭に浮かんだ方は、滋賀キャンプ公式Facebookページやnoteをフォローして、来年のキャンプ情報をお待ちください!

またこのnoteを通して滋賀キャンプという活動がより多くの人に伝われば嬉しいです。

写真提供:Masaya Hirose

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