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【古社寺さんぽ】鳥取藩主 池田家の菩提寺・興禅寺へ@鳥取・鳥取市

古社寺さんぽ鳥取編です(^^)/ 鳥取編 中の人は文学好きなので、お寺の紹介と合わせて、郷土の文学者も紹介できたらと思います。
記念すべき1本目の記事では、鳥取を代表する自由律俳人・尾崎 放哉(おざき・ほうさい)の句碑もあり、鳥取藩主 池田家の菩提寺としても知られる興禅寺を紹介します。

興禅寺(こうぜんじ)は、鳥取県庁から歩いて5分、閑静な住宅地の一角に、広大な墓地を有して佇んでいます。
鳥取市民やカメラファンには、秋の夜間庭園ライトアップでなじみのある方も多いかもしれません。庭園内の工事のため休止していた夜間庭園ライトアップが2024年に再開し(4年ぶり・・・!)、地元紙1面でも紹介されました。

庭園夜間ライトアップの期間が終わった昨年12月初旬。
日中の庭園の様子が気になり、ふらっと立ち寄ってみることに。

12月なのに、桜が…!

興禅寺ってどんなところ?

興禅寺は、鳥取県鳥取市にある鳥取藩主・池田家の菩提寺(ぼだいじ・先祖を弔う目的で建てられたお寺)として知られる黄檗宗(おうばくしゅう)のお寺です。

黄檗宗は、日本三禅宗(あと2つは臨済宗と曹洞宗)の一つで、江戸時代初期に来日した隠元隆琦(いんげんりゅうき)が始めました。総本山は、黄檗山萬福寺(まんぷくじ・京都府宇治市)です。

興禅寺は、その黄檗宗の三代叢林として、仙台藩伊達家の「大年寺(だいねんじ)」、長州藩毛利家の「東光寺(とうこうじ)」と並んで、「聖賢林」と呼ばれて栄えました。

隠元和尚と黄檗宗は日本に多くのものを伝えました・・・!
写真は県立博物館作成のパネル。受付から庫裏へつながる廊下に設置されています。

所在地・拝観時間・拝観料

所在地/鳥取県鳥取市栗谷町10
拝観時間/9:00~17:00
拝観料/200円
※秋の庭園ライトアップ期間中は400円(枇杷茶・お茶菓子つき)

興禅寺の見どころ

(1)池泉鑑賞式庭園~秋には夜間ライトアップも~

庭園は、江戸時代(池田光政藩主時代か)に作庭された書院造の蓬莱山・池泉鑑賞式庭園です。
一年中、公開されており、毎年秋には夜間ライトアップも行っています。
拝観料は、秋の夜間ライトアップ期間は400円(枇杷茶・お茶菓子つき)、普段は200円です。

庭石には鶴と亀がかくされています!探してみてください(^^)/

夏は蓮、秋は紅葉、冬は雪と、季節によって異なった表情を見せてくれます。せわしい日常から少し離れて、心が清らかになりました。

そして、庭園の西隅にぽつんと立っている灯籠は、県指定保護文化財に登録されている「キリシタン灯籠」です。

かくれ切支丹たちが、キリスト像の代わりに祈りを捧げました。

一見するとお地蔵さんが彫られた何の変哲もない灯籠なのですが、上部に刻まれているのはラテン語で「父」を、お地蔵さんに見える像は「神の子(=イエス・キリスト)」、左右には「聖霊」を意味する漢詩が刻んであり、この灯籠そのものがキリスト教の三位一体の世界を表現しています。

(2)黄檗宗ならではの仏さま

庫裏から渡り廊下でつながる本堂には、ご本尊の釈迦如来さまをはじめ、華光菩薩(かこうぼさつ)さまや布袋(ほてい)さまといった、黄檗宗の寺院だからこそお会いできた仏さまがいっらしゃいました!

現在の本堂は、もともとは池田家藩主の位牌堂でした。

もとの本堂は三度焼失し、再建後の本堂は明治の廃仏毀釈時に兵庫県新温泉町の龍雲寺(りゅううんじ)に売却、移築したことに伴って、位牌堂が本堂になりました。

ご住職に本堂の仏様の見どころをたっぷりと解説いただきました!
この日は、アポなしで伺ったにも関わらず、庭園や本堂をご丁寧に説明くださり、本当にありがとうございました。

見どころ①ご本尊の釈迦如来の光背に注目!
本堂は3つの空間に区切られています。
その中心に安置されているのが、ご本尊・釈迦如来さまです。
前にせり出した光背が特徴的で、くっきりと掘り出された薔薇のような雲が際立つ光背でした。
ご本尊の両脇にいらっしゃるのは、ご本尊の向かって右が獅子に乗った文殊菩薩さま、左が白象に乗った普賢菩薩さまです。

見どころ②華光菩薩(かこうぼさつ)さま
中心の空間の右隅には、黄檗宗ならではの仏さま・華光菩薩さまもいらっしゃいます。
中国風の帽子をかぶった、三つ目のりりしいお顔で、伽藍神(がらんじん・伽藍を守る神様)とも称され、黄檗宗の総本山・萬福寺にもいらっしゃるそうです。
いつか萬福寺の華光菩薩さまにもお会いにしたいです。

見どころ③布袋(ほてい)さま
本堂の向かって左側の空間にいらっしゃるのは、布袋さまです。
この方も黄檗宗ならではの仏様で、弥勒菩薩の化身(現世に姿を表したお姿)とされています。でっぷりとしたおなかが愛らしかったです。
黄檗宗の寺院では、天王殿(てんのうでん)といって、布袋菩薩をお祀りする専用のお堂があるお寺が多いそうです。
布袋さまの後ろには達磨大師(だるまたいし)さま、達磨大師さまの左には第4世 提宗慧全(ていじゅうえぜん)和尚の彩色座像が安置されていました。提宗慧全和尚は、興禅寺を臨済宗から黄檗宗に転派した人物です。

見どころ④池田家歴代藩主のご位牌
本堂の向かって左側の空間には、池田家初代・光仲(みつなか)から11代・慶栄(よしたか)まで、池田家の歴代藩主のご位牌が安置されています。

境内散策も楽しめます

興禅寺には、少し変わった建物の意匠(ほかのお寺では見たことがない…!)や鳥取ゆかりの人たちのお墓(猪田伊折佐・渡辺数馬・臼井本覚・尾崎放哉)があります。
本堂のお参りが終わった後は、ぜひ境内散策も楽しんでみてください~

(1)◇〇をさがせ!

参道は、正方形の石をひし形に敷いた特殊な形式。
龍の背のうろこを表現する黄檗宗独特のもの。

(2)藩主・池田家の家紋「とまり揚羽蝶」🦋をさがせ!

藩主・池田家の「とまり揚羽蝶」の家紋が、境内の至る所に・・・!
一体いくつあるんでしょう…?
「とまり揚羽蝶」の家紋は、池田恒興(つねおき)が織田信長から拝領したと伝えられています。

(3)鳥取ゆかりの人たちのお墓

渡辺数馬(わたなべ・かずま)は、荒木又右衛門(あらき・またえもん)とともに
日本三大仇討ちのひとつ「伊賀上野 鍵屋の辻仇討ち」を行なった人物。

(4)尾崎 放哉の句碑&尾崎家のお墓

境内には、鳥取を代表する自由律俳人・尾崎 放哉(おざき・ほうさい)の句碑と尾崎家のお墓もあります。放哉は小豆島で没しており、放哉自身のお墓はそちらにありますが、興禅寺の尾崎家のお墓にも分骨されています。

筆者は文学部出身なので、古社寺にある句碑や歌碑にはつい立ち止まってしまいます(^^;

放哉の辞世の句と言われている
「はるの/山の/うしろ/から/けむりが/出だした 放哉
(春の山のうしろから烟が出だした)」が刻まれていました
境内の駐車場脇には、生誕130年記念事業で建てられた句碑も。
「こんな大きい/石塔の下で/死んでゐる(こんな大きい石塔の下で死んでいる)」が刻まれていました

尾崎 放哉は、感じたままを自由に表現する俳句の型・自由律俳句を多く残しました。

  • 咳をしても一人

  • 入れものが無い両手で受ける

  • 一日物云はず蝶の影さす

  • こんなよい月を一人で見て寝る

  • わが顔ぶらさげてあやまりにゆく

五・七・五の十七音にも、季語にもとらわれない、これを俳句と言ってよいのか、という自由な句、そして、一人の自分にフォーカスした寂寥感のにじむ句を多く残しています。

明治18年(1885)現在の鳥取市吉方町に生まれ、高校時代から句作をはじめ、明治38年(1905)東京帝国大学法学部に入学。
と、ここまでは、エリート街道まっしぐらでしたが、従妹との結婚を周囲に反対されて以後、お酒に溺れ、人間不信も強くなり、就職しても次々と辞める生活を送りました。 

大正12年(1923)、仕事も家族も捨て、京都、須磨などの寺を転々とし、孤独と貧困、放浪の生活を送ります。大正14年(1925)師である荻原 井泉水(おぎわら・せいせんすい)の尽力により、小豆島にある南郷庵(みなんごあん)に落ち着つきますが、極貧と病苦の生活が続き、大正15年(1926)4月7日、41歳で亡くなりました。

青空文庫で、放哉選句集や彼が残した随筆を読むことができます。
ぜひその作品を味わってみてください(^o^)/ 沁みます…


御朱印をいただきました

ご住職が直々に書いてくださいました。
ほれぼれとする達筆です…!

ご住職にインタビュー🎤

ご住職には、庭園や本堂に安置される仏様など、たくさんのお話をうかがいました。
さらに後日、お時間をとっていただき、お寺についてお聞きしました。

Q お寺のどんなところを見ていただきたいですか?
A やはり庭園でしょうか。秋の紅葉はもちろん綺麗ですが、それ以外の季節のお庭もいいものですよ。

Q 子どもも楽しめる場所ですか?
A 楽しめますよ。境内には、アベマキ(ブナ科コナラ属の落葉高木)の群生があり、大きなドングリが落ちます。アベマキがこんなに群生しているのは、鳥取東部では、殿ダム周辺と興禅寺の境内くらいで珍しいそうですよ。

子どもの目線で魅力発信

アベマキのドングリあったよ
ご住職のお話を聞き、「ぜひアベマキのドングリを見つけたい!」と、子ども(3歳、のりもの&外遊び大好き人間)を連れて、年明けに探しに行きました。

アベマキのドングリ!ありました!子どもと一緒に大興奮
クヌギのドングリより少し細長いのが特長です。

3歳児のお気に入りはここ

「かか、こっち、こっち!!」と手を引っ張っられ、行ってみた先には…
大人とは違う視点で境内探検を楽しんでいました。

ディズニーキャラクターの前掛けをされた六地蔵さん

「お寺BINGO」と「しぜんさがし」も楽しみました
地域の古社寺をもっと気軽に、もっと楽しく巡れないかと思い、ワークシートを作ってみました。こちらから無料ダウンロードできます。

興禅寺へのアクセス

JR鳥取駅より市内循環バス「ループ麒麟獅子(きりんじし)」、日ノ丸バス・日交バス白兎行もしくは岩井方面行きにて約5 - 6分・「県庁日赤前」のバス停下車、徒歩10分。

興禅寺の駐車場情報

山門脇の道をあがると駐車場スペースがあります。(10台)
墓地近くのスペースは月極駐車場のため、駐車禁止です。

お車でお越しの場合、山門脇の道を入った奥に駐車スペースがあります。

興禅寺のバリアフリー情報

受付には、手すり付きの補助段があります。
  • 入口段差 あり

  • 通路段差 なし

  • 車椅子使用者用トイレ なし

  • 点字表示 なし

  • コミュニケーションボード あり

お寺さんにこんなのあったらいいなと、指差しシートを作りました。
こちらから無料ダウンロード可能です。
「うちの社寺では、この項目を新たに作ってほしい」等のご要望にもお応えします。興禅寺さんでもご要望にお応えし、オリジナルの指差しシートをおつくりしました。[koshajisanpo@gmail.com]までご連絡お願いします。

古社寺さんぽ作成の指差しシートを玄関に設置いただきました(^_^)/ ありがとうございます!
ご要望をお伺いし、「庭園拝観」の項目をつけた興禅寺版です。

興禅寺のサイト 

鳥取市の公式観光サイトにも掲載されています。

興禅寺 周辺のおさんぽスポット

a) 菓子匠庵「一善や」
興禅寺から徒歩1分。
京都本店と鳥取の2店舗経営の洋菓子屋さん。ランチも人気です。

b) 龍峰寺(りゅうほうじ)
興禅寺から徒歩3分。
興禅寺の仏像はもともとはこちらのお寺に安置されていました。

c) 栗渓(くりたに)神社 
立派な狛犬に出会えます。

d) 池田家墓所
車で少し足を伸ばして、鳥取市国府町奥谷にある池田家墓所へもぜひ。
12代を除く、初代から11代までの歴代藩主の壮麗なお墓があります。
「亀趺(きふ)」と呼ばれる、亀の形をした台座に墓石がのっています。
毎年秋には墓地清掃をボランティアを募って行っており、私も家族と参加しました!地域の方や地元で学ぶ学生さんなど、15人ほどで、墓地内の落ち葉や枯れ枝を掃除しました。県民に広く墓所を知ってもらうために、写真コンクールや灯籠会を行っています。
墓所内には、墓所を管理するために清源寺(せいげんじ)というお寺があり、そのお寺の住職は、興禅寺の住職が兼務していたそうです。お寺は現存していませんが、墓所には興禅寺の歴代のご住職たちのお墓もあるそうです。(清掃ボランティアの時は気づきませんでした!また行ってみます!)

e) 倉田八幡宮
藩主・池田家の氏神さま。こちらもお車で。
社叢は国の天然記念物にしてされています。
樹齢1000年の大イチョウが有名です。
初詣や例祭では露店の出店もあり、大変にぎわいます。

読んでいただき、ありがとうございました(^_^)/
各地で【古社寺さんぽ】を楽しみましょう~

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※本記事の情報は、記事作成・更新時点のものです。最新の情報は、各種公式サイトをご確認ください。
※「拝観時間、拝観料が変わった」等の情報がありましたら、コメントからご一報ください。
※写真の無断掲載・使用を禁止します。


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