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偏差値55でも塾屋になった話⑤

前回、前年度の教室長が急死したことでショックを引きずっていた生徒達、
それを痛感した私だったが・・・?

このような教室状況でまずは受験生中心に保護者面談を実施することにした。
普段どう思って塾に来ているのかを知りたかったのと、保護者の気持ちも知りたかった。
前任者のI先生は懸命に教室運営をしていたとは思うが、そのまた前任の方の急死の後では如何ともしがたく、生徒保護者の支持をなかなか得られなかったようだが、それが私には幸いだったのか、まあ悪くは思われていなかったようだ。
前年度は退塾者が続出していたが、それが止まった。
また、小学生の月例テストの成績が少しずつ向上し、当時小6と小4の姉妹が算数で100点を連発するようになってからは活気が出てきた。
特に小4の妹の方はその後2年間もの間、毎月100点をキープしていた。
(彼女は後に県内No. 1の女子校に合格する)
それが良かったのかその年度の後半になると他の生徒も月例テストで100点を取る子が出始め、掲示板に貼り出される成績上位者に名前が載る子が増えてきた。
そうなると小学生中心に入塾者が増え始めた。

一方、中3の受験生の方だが、劇的な成績の伸びを見せる子はいなかったが、夏期講習の時期になると友達紹介で1人の入塾希望者が現れ、面談をしてみると、我々にプレッシャーのかかる案件であったことがわかった。

その生徒Y君は家庭の事情で私立高校には通わせられないので公立志望なのだが、志望校の偏差値と当時の彼の成績には乖離があった。

秋も深まった頃、併願私立の志望校を決定する時期に行なった三者面談では、現状の成績から合格可能な私立高校を案内するも併願する気は全く見せない。

「(経済的に)行けない高校は受けません!」

と公立単願を宣言してきたのだった。

通常であればすべり止めの私立を受けておくことで安心感を得てから本命の公立を受けるのがセオリーなのだが、この子は退路を絶っている。
夏期講習の頑張りで偏差値はボーダーラインまでは来ていたが公立単眼というプレッシャーを受けながらでは本来の実力を出し切れるのかという懸念が残った。
私は更なる実力の上積みをしてもらうことしか方法はないと考えたので、とてもではないがあり得ない量の課題を彼にだけ課すことにし、教室の講師を総動員して、彼の為の課題のプリント作成に取り掛かった。
A3のプリント5科目分!50枚〜60枚程度を数日でこなさせた。それとは別に塾の通常授業で出された宿題もある。
(中学生時代の私があの量を勉強した記憶はない)


その後、彼は授業の無い日も塾に来て空いている教室で自習をし、授業が終わった後も居残りしてそのあり得ない量の課題と向き合った。

それから半月くらい経っただろうか、思わぬ副産物が生まれることになる。

次回へ続く

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