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「二層構造の時代の観光客」という話

まえがき:ポスト・モダンに生きる動物たち

 近代(モダン)の世界では、多くの知識人たちは人類には共通の目標があると考えていました。たとえば、「科学が発展すれば人類は皆幸せになれる」「国民全員が政治参加できるようになれば(民主主義になれば)人類は皆幸せになれる」というような人類にとって共通の目標があると考えられていたわけです。

 そういった人類共通の目標を哲学者のジャン=フランソワ・リオタールは「大きな物語」と名づけました。では、この「大きな物語」はポスト・モダン(近代の後)ではどうなったのでしょうか。

 それは今の国際情勢を見ても明らかなように崩壊したのです。大きな物語が崩壊したのがポスト・モダンです。

 人類にとって共通の目標などなかったのです。大きな物語などなかったのです。「民主主義が良い」と思っている国もあれば、「独裁的であれ衆愚政治を避けられるのならばそれでいい」と考える国もあります。科学を信じる国もあれば、科学を(全面的には)信じない国もあります。

 みんなが信じているような大きな物語などなく、それぞれの人間がそれぞれの「小さな物語」を信じるようになったのです。

 ポスト・モダンは、ざっくり言ってしまえば「人類にとって共通の価値観や目標などなく、みんな考えてることも目標も違うよね」というようなまとまりのない時代の事です。

 つまり、ポスト・モダンでは、社会がバラバラになり、複雑化していくことになります。みんな考えていることが違うとなれば、一つの(あるいは少数の)評価軸で物事を判断できないので複雑になるのも無理がありません。

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