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「憑在論的加速主義」という話


まえがき:未来は亡霊のように回帰する?

 未来は過去に存在する。そんなテーゼからこの話を始めてみたい。かつて、思想家のカール・マルクスは、唯物史観という独自の人類史観を打ち出して、我々、人類の未来を予言した。

 マルクスによれば、人類史は、原始共産制から始まり、古代奴隷社会、封建社会、資本主義社会、社会主義社会、共産主義社会へと進歩してゆくという。これは進歩史観でもある。人類は、必ず共産主義という輝かしい未来へと一歩一歩近づいてゆくのだと…。

 しかし、ポスト・モダンである現代において、そのような「マルクス主義」という大きな物語は存在しない。つまり、我々の未来は潰えたのだ。

 欲望にまみれた資本家たちによる労働者への搾取に抗ったはずの共産主義が、ソ連の崩壊とともに非現実的なものと疑われるようになっていった。左翼たちは、共産主義という資本主義に代わる制度を失い、現代でも資本主義に代わる制度を打ち出せないままでいる。こうした状況を見て、哲学者のスラヴォイ・ジジェクは「左翼の敗北」だと語っている。

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