読む、聴く、出会う。
【過去の投稿です】
●河合隼雄・立花隆・谷川俊太郎著『読む力、聴く力』<岩波現代文庫>(06/15)
http://bookmeter.com/b/4006022700
セミナーでの対談記録と、同テーマに拠る一文(谷川さんは詩)。
「読む」行為も「聴く」行為も、現代人は疎かになっていないか。「読む」は読書に限らず「先を読む」や「気持ちを読む」といった行為も含まれる。「聴く」は音楽を聴く事から、他人の話を聴く事まで含まれる。「耳を傾ける」と言えば良いか。
速いテンポで大量の情報が流れている世の中。文章や他人の話を深く掘り下げるより、情報や知識として「知ってる」「知らない」だけで終わる。これでは「読む」も「聴く」も不十分である。
各氏は各々の立場から「読む力、聴く力」を自己涵養する為のヒントを述べられている。河合さんは、心理カウンセリングの現場でのクライアントの話を聴く姿勢について。立花さんは、音が聞こえる身体の仕組みや、結局世の中は「出会い」であるといった話。谷川さんは、文字や言葉を超えた身体感覚の重要性について。
自分の糧になる「出会い」は、情報や知識のつまみ食いでは得られない。理屈以前の純粋な感動(身体感覚)が有って初めて「出会える」。カウンセリングも、クライアントに喋りたいように喋らせて、泣けてくれば泣くし、つまらなければつまらないと言うとの事。すると、相手の方で自分の問題点を掘り下げていけるらしい。クライアントの立場に立てば、聴いてもらった事で「出会えた」のだろう。
音楽や映画、小説、芸能等で、多数の支持を得ていても、自分にはピンと来ないというのが誰しもあると思う。この感覚が大事な気がする。感じてから考える意識を常に持っていれば、世間の動向に惑わされず、出会える。良い意味での我が道を行ける。