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米栗カレンダ

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米栗久三郎による、1日1絵の、日めくりエッセイ。 3歳の「彼」の今日を綴ります。 こどものありようって、哲学だなあ…と思うのです。
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なんで忘れちゃうの?【weekly 米栗カレンダ 20201208】

■なまえを書きたい「みつきちゃんって、かいてみたいの。」と3歳男子が言う。 同じ幼稚園の、年長さんの娘さんが好きなんだそうな。その子の名前を書いてみたいんだそうな。いいねえ、初恋にしては早いと思うけど、好きなこの名前を書いてみたいって、その重度の高い「好き」が、いいねえと思うのだ。 ■おおむかし3歳 「恐竜さんがいたのは、1おく9せんねんまえなんだって。それって、すごく昔なの?」 45歳 「そうだよ。まだ人間もいなかったしね。」 3歳 「人間が発明される前だったの?」

骨にひび、熱と鼻水【weekly 米栗カレンダ 20201103】

■あれよあれよ幼稚園で「緊急時ひきわたし訓練」が行われた。 大地震が起きた時、確実に「保護者と証明できるひと」に子供を引き渡す訓練だ。 まず「大地震が発生したので迎えに来てください」の連絡がオヤに来る。それから幼稚園に迎えに行く。 幼稚園に到着した保護者は、先生たちに保護者証明を提示して、子供を引き取る……で行ったら、うちの3歳の彼は半泣きで待っていた。何やら機嫌が悪い。駐車場の車までも歩きたくないと駄々をこねる。 夜ふかしのせいで眠いのか?……と思っていたら、あれよ

ああ、いい一日だった【weekly 米栗カレンダ 20201013】

■シュレッダーばあばが、溜めに溜め込んだ書類を、一気にシュレッダーにかけた。 それはそれは大量の「シュレッダー済の紙ふぶき」ができた。 ばあばがゴミ袋にまとめたそれを、ざーーーーーっと床にぶちまけた3歳の彼は、それを雪に見立てて傍若無人の遊びっぷり。 片付けが…と白目になっているオヤ。部屋中が…いや、家中が紙ゴミの館と化したのでした。彼が寝たあとの片付けは、果てしなく大変だったのでした。 ■風船近所のおじさんが「薬屋からもらってさ」と、風船(まだふくらませていないゴム

【米栗カレンダ 20200906】うんざりするほど

(プールはそれほど好きじゃないけれど、水たまりや池に入るのが好きな彼。 車で、ちょっと大きな公園に遊びに行って、さっそく池に入り、浅瀬にはえていた水苔(のようなもの)に滑って転んで、全身水浸しになって大泣きした彼。 車内で苔臭い濡れた服を着替えたら、 「別の公園にお願いしま〜す」と元気に、次の公園へせかす彼。 休日、人の少ない公園めぐりをする日々を楽しみにしている彼。 いまはオヤに連れて行ってもらわないと移動できないけれど、「ずっと昔、トレーラー運転してたの、ひとり

【米栗カレンダ 20200831】寂しすぎる、こっち見て!

ぎゅっとするおとなになって! (彼は最近、眉根を八の字にして「寂しいお顔」の演技をする。 その顔になっている彼を見つけたら、オヤは、 「ああ、寂しい子がいる!こっちにおいで、ぎゅっとしてあげる。」と言うのがお約束だ。そう言うと、彼は寂しいお顔のまま駆けてくるので、それをギュッと抱きしめてやる…(何の芝居なんだろう?) が、先日、オヤは洗濯物をたたくのに気を取られて、寂しい子の演技にきづかなかった。 すると彼は、きっぱりと、 「寂しすぎる!こっち見て!ぎゅっとする大

【米栗カレンダ 20200829】シュールなループ

スピード、出しすぎちゃって! (3歳の彼をチャイルドシートに乗せて高速道路を走った。 彼は大好きなトミカのミニカー『クラウンのパトカー』を握りしめながら窓外をゆく「タイヤ3つのトラック!」「ジープ!」「交通パトロールカー!」「タンクローリー!」と車両の走りを楽しんでいた。 途中、SAに車を止めたら、パトカーが入ってきた。 「本物のパトカーだ!」と目を丸くした彼。さっそくパパと手をつないで、リアルパトカーにダッシュした。 パトカーは、SAで接触事故を起こしたらしい2台

【米栗カレンダ 20200828】子どもの長さ、大人の短さ

(最近、時間の進み方が変わった。 もちろん体感として。 楽しいことをしているのに時間の進み方がゆっくりに感じることがある。 逆に、ちょっとしんどい事をしているのに、思いがけず時間が過ぎていたり。 これまでは、楽しい時間は矢の如く過ぎ、辛い時間はだらだら長びくものだった。 楽しい…が、子どもの楽しいと直結しているからか。 子どもの1日は長いから、その体感とシンクロしている気がする。 対して辛い時間は、たいがい自分問題だから、大人にとって1週間があっという間に感じるよ

【米栗カレンダ 20200826】壊したつもりで壊せてない。

アメリカの大統領の夫人が、歴代大統領婦人の植えた薔薇やチューリップを根こそぎ引き抜いてしまったらしい。 そして自分の気に入った庭に作り変えたらしいけど、 歴史を壊して自分らしい場所を作るというこの行為……何かに似ている。 そう、砂漠の国の過激派がバーミヤンの仏像を破壊したり、遺跡を爆破したのとそっくりだ。 破壊は快感を伴うから、キモチイイんだろう。 でも歴史的存在を消しても、歴史を消すことなんてできないから、時間が経てば無常感に苛まれるんだろうなぁ…… だって歴史

【米栗カレンダ 20200824】共感されない

なに、とってるの? (シャベルですくい上げた砂を、ワゴンにザザっと入れる。 砂場で、彼はそれを何度も繰り返した。 他に誰もいないからいいものの、かなりの砂埃がたちこめる。 汗をかいているから肌に砂が張りつくし、 ゴホゴホと咳き込むことにもなる。 が、いいこともあった。 微細な砂ホコリのおかげで、虹がたったのだ。 急いで写真に撮っていたら、彼が「何、撮ってるの?」とお尋ねになる。 「虹だよ。」と写真を見せたら、 「ふうん。」と興味なさげに、また土木作業に戻っ

【米栗カレンダ 20200522】ブレるひと

たのしいのよ!でも、とらないで〜。たのしいんだから! (3歳の誕生日に記念写真をとろうとカメラを設置したら、特別な感じが嬉しいのか、 「たのしいのよ!」と謎のおどり(阿波おどりのような手付きに、足はタンゴダンサーのように素早い!)をはじめた彼。 普段はあまり写真を撮られることが好きじゃない彼がはしゃいでいるので、これはいい表情が撮れるぞ!とカメラのスイッチを入れたら… 「撮らないで〜」と言いながらはしゃぐので、足と手が動きすぎてブレた写真にしかならなかった。このブレ写