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ノートルダム大聖堂が燃えたから
ノートルダム大聖堂が燃えたから、彼に会った。
毎朝Google homeに「今日の天気は?」
って聞くんだけど
たまたま今朝は答えてくれなくて
久しぶりにテレビをつけた。
ノートルダム大聖堂が燃えていた。
数年前の年末年始、パリに行った。飛行機がついたのは12月末の夜で、ホテルに荷物を置いて、散歩した。ポンヌフの恋人、みたいな町並みを期待して。
歩き始めてすこしすると、暗闇に白く浮かぶ建物があらわれた。
人の視覚の閾値ギリギリなんじゃないか、むしろ超えてしまっているんじゃないか。ってくらい細かなレリーフ。現実味がない。
しばらくぼーっと眺めて、冷たい真冬の夜風に吹かれながら、撮った写真。ゆっくりと、ああ、パリに来たんだなあって思った。
・・・
ノートルダム大聖堂が燃えた。
他の誰にも上手に伝わらない気がして、彼に「燃えちゃったね」と連絡をした。数年ぶり。
「1000年近く経ってたのに一瞬だね」と返ってくる。
その晩、そうするのがあたりまえのようにして会った。
仕事が終わったあと待ち合わせて、食事をして、散歩した。東京の真ん中なのに誰もいなくて、歩いても歩いても全然疲れなくて。
桜はもうほとんど散って、暗くてよくみえないけれど生まれたばかりのつやつやした葉があって
やわらかい風を吸い込むと、緑の匂いがした。
数年前の話も現在の話も5年後の話もした。プルーストの話もした。マドレーヌを紅茶にひたして記憶が蘇る。マドレーヌをひたしたことがなくても、なんとなくわかるその表現がすごいよね。そうやって何かが特別なトリガーになるのって 生きていくことの醍醐味だし、その人にしかない人生の証拠だよねって。
何年かに一度会って彼と話す。「ずっと読みたかった小説を読んでいる時のような感覚なんだよ」
会って話すたびに人生が交差して、数年後にそれを思い出す。どんどん立体感が増す。そういうことをこれからも繰り返す。
ノートルダム大聖堂がどうとか全然話さなかったけど、あの冬に あの場所に行けてよかったよね。燃えちゃったから、とかじゃなくて。いつか限りなく元通りに近い形になるとして。そういうふうにして、生きてきた過程を愛おしく思えたらいい。桜より新緑が好きなのは、彼がその美しさを、数年前に教えてくれたからです。
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