帰ることのない旅に持って行く一冊の本
ふと思いました。
帰ることのない旅に出るとして
その旅にたった一冊の本を持っていくことができたなら
どの本を持っていくか。
答えは、1分もかからずに出ました。
それで娘にも同じことを訊いてみたのです。
ちなみに娘は25歳。
うーん、と悩んで
一冊に決められないからと、3冊あげてきました。
ランサムの 『ヤマネコ号の冒険』
そして
サン・テグジュペリの『夜間飛行』と『人間の土地』。
ああ、なるほどと思いました。
ママは?と訊かれたので、「わりとすぐに決まったの」と
岡倉覚三の『茶の本』と、明かしました。
そしてすぐに
「最初は小泉八雲の『日本の面影』かなぁと思ったんだけど、その直後に、いや『茶の本』だと確信したの」
と、話したのです。
「ママ何回も読んでその度に泣いてるよね」
「なんか泣いてるなと思ったら『茶の本』読んでたこと何度もあったしね」
娘は笑いながら、そう言いました。
でも事実で、開くたびに感極まり涙するのです。
『茶の本』は、いつもそばにあって
ふと手に取っては開いてみる。
そこには溢れるような想いと
宝石のような言葉が綴られている。
岡倉覚三のかなしみが
よくわかる。
日本への、日本人への
世界への、人類への
ひいては宇宙への
燃えるような愛が感じられる。
実際、この本を道づれに心の赴くまま旅をしたら
どんなだろう。
古代インドの思想では最晩年を「遊行期」といわれています。
わたしは五十半ばにして遊行期に心が向いているのかしら。
それにしても、娘が選んだサン・テグジュペリの
『夜間飛行』に『人間の土地』
私も彼女の年齢なら選んでいたかもしれません。
想像してみてください。
一冊の本を心の友として、人生最後の旅に出る日のことを。
あなたの手には、どんな本が携えれていますか?
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