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ヨガ・瞑想における意識ー神経生理の『第三の状態』?
《概要》
・瞑想やヨガの方法などによって、心身に通常とは違った「第三の状態」とも言うべきものが現出するだろう。
・この「第三の状態」についての考察では、自律神経や脳幹に注目するのが良いのではないだろうか。
『第三の状態』
心理学や脳科学、医学などでは人間の意識の状態について様々に言及されています。
ヨガの思想の中には一例として、起きている時の通常の意識、夢を見ている時の意識、熟睡中の意識、純粋意識といった分け方があります。
ここでは細かいことは省きます。
まずは睡眠から覚めて日常の喧噪の中にいる時の意識の状態「覚醒状態」と、睡眠中で自覚的な意識を失っているとき、意識喪失の状態「睡眠状態」があります。
さらに、特に指摘しておきたいのは、特殊なヨガの方法や瞑想などで生じる状態であり、日常の喧噪の時の覚醒状態と同じものとは言えず、かつ、睡眠状態でもない意識状態です。
今はこれをとりあえず「第三の状態」と呼びます。
(この第三の状態にも様々な深さ・段階、相があるだろうし、瞑想の種類や呼吸法を用いるなど方法によっても違いが生じるだろうと思われますが、今は細かいことは省きます)
特にマニアックな探究をしている人、密教・生命エネルギーの実践をやっている人の場合にはこの第三の状態が重要になると思われます。
関連note:【ヨガの分類②】クンダリーニ系ハタ・ヨーガ。瞑想やムドラーを重視する密教のヨーガ
意識ー神経生理
第三の状態の時には、脳・神経生理はどういう状態なのでしょうか?
私は、これについては科学的な根拠をあげて述べることはできません。
瞑想や変性意識の時の神経科学的な研究はあるので、興味ある人は調べて見て下さい。
あくまで私の直感、気まぐれな思いつきを述べたいと思います。
私が特に関心を持っているのは以下のものです。
・自律神経の活動 状態
・脳幹を主とする活動 状態
・自律神経の活動 状態
自律神経である交感神経と副交感神経は拮抗的に働き、全身を二重支配するとされます。
拮抗的に働くとされますが、一方が活動的なときにもう一方は完全に休止状態にはならずに、24時間活動しています。
一方が活動・興奮状態で「ババババババババッ」の時は、もう一方は「パ 、パ 、パ 、パ 、パ」みたいな感じです。
この拮抗的とされる自律神経の活動・状態について、第三の状態の時には、通常とは違った活動が見られるのではという私の根拠の無い直感があります。
つまり特殊な意識ー神経生理の状態を作り出すために協調があるのではないかということです。
一方が活動的であるときに、もう一方も活動的であるのではないかということです。
まぁ、とにかく、瞑想とか密教・生命エネルギーとかの実践者の中には、その実践中の自律神経の状態が、通常とは違ったものかもしれないという体感的な感覚がある人もいるのではないでしょうか?
⇒ 自律神経の協調に関して、書籍からの引用
上で述べた自律神経のことに関連して、けっこう前に神経学者による興味深い考察が示されたことがあります。
(最新の科学的研究については分かりません。興味があります)
以下、『脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー ニューバーグ 、ユージーン ダギリ 他著 茂木健一郎 監訳 PHP 2003 からの引用
“ …… 興奮系や抑制系の活動が最大レベルになったとき、もう一方の系統を活性化させ、変性意識状態を誘発する場合があることが分かってきた。…… 意識的にも無意識的にも同様の変性意識状態に入れることは、脳が宗教的な神秘体験をする力と自律神経系との間に、何らかの関係があることを示唆している。
われわれは、自律神経系は宗教的体験を構成する重要な要素なのではないかと推測している。…… ” pp.68-69
“ …… 一部の研究者は、身体の生理的機能と脳の活性の両方を測定し、興奮系と抑制系の両方が同時に活性化していることを示唆する証拠を提出している。つまり、瞑想中の高度な集中を維持するためには、抑制系だけでなく、興奮系も活性化することが必要だというのである。このことは最近、瞑想時の心拍数の研究によって確認された。瞑想時に心拍数が大きくゆらいでいることから……、瞑想時には自律神経系が変動しやすく、その活性も非常に複雑になっていることがわかる。” p.87
“ ……V・S・ラマチャンドランやマイケル・パーシンガーなどの研究者も、宗教的体験に関与する主な構造の一つとして大脳辺縁系の名をあげているが……、われわれには、複雑で多様な宗教的体験のすべてが、側頭葉と、その中にある大脳辺縁系から生じてくるとは信じられず、もっと多くの構造が関与しているはずだと考えている。” p.87
V・S・ラマチャンドラン(Vilayanur Subramanian Ramachandran)
マイケル・パーシンガー関連の記事
(James Austinという研究者は) “ 著書の中で、こうした構造の一部(視床や側頭葉など)と瞑想との関係を指摘し、この過程に関与する神経伝達物質系の一部を解明しようと試みているが(James Austin "Zen and the Brain" )、瞑想に関与する構造を具体的に特定できないうちに神経化学的過程を解明しようとする彼のやり方は、あまりに性急なように思われる。 …… われわれは、各種の宗教的体験やスピリチュアル体験には、上記の構造のほかに自律神経系も重要な役割を果たしていて、これなしには理解できないと考えているのだが、彼は、自律神経系の寄与をあまり重視していないのだ。” pp.87-88
・脳幹を主とする活動 状態
脳幹とは、間脳(視床、視床下部)や延髄などを含むもので、基本的な生命活動の維持や意識状態、欲求などに関わるものです。
ここには自律神経系の高位中枢があるとされます。
また内分泌系の高位中枢もここにあります。
意識の発生や意識レベル、意識の切り替わりの中枢があるとされます。
睡眠や覚醒に関する中枢もここにあるとされます。
睡眠中の夢に関しても、諸説はあるのですが、脳幹からの信号によって夢見が始まるとの説があります。
関連note:【 明晰夢の見方 】 無意識から創造性を得る夢見のヒント
ヨガのプラーナヤーマに関係しそうなことでは「呼吸中枢」も脳幹にあります。
「情動」を司るとされる大脳辺縁系と連絡があり、さらに、意志や知性、創造性、情操などを司るとされる高次の脳部位と自律神経系との中継地点でもあります。
参考、脳の構造についての簡単な解説↓↓
思考モデル
脳幹は根本的な生命活動や「意識」というものの基盤とも言えるほどのものであり、「第三の状態」について考察するときに注目するのは当然です。
「第三の状態」が現出する経路は複数考えられるのかもしれませんが、たとえば瞑想によるものの、一つの思考モデルとしては以下のようなものが提案できます。
瞑想によって心と呼吸を静める
↓↓
日常の喧噪に対応するような脳部位が静まる
↓↓
また、瞑想の深まりによって特殊な自律神経の活動 状態が生じる
↓↓
脳幹がこれらを受けて、(覚醒や睡眠、夢見の時もそうであるように)「信号」を発生させる
↓↓
脳幹からの信号を受けて脳の活動 状態に変化が生じる
↓↓
意識ー神経生理の「第三の状態」の現出が明確になる
とりあえずはこの脳幹と自律神経を重視する考察が、基底的な思考モデルになり得るのではないでしょうか。
DMT / 生命エネルギーの体験
アヤワスカなどサイケデリクス界隈で注目されているものの一つに、DMT(ジメチルトリプタミン)があります。かなり強い幻覚剤です。
強力な精神作用を持つものであり、衝撃的な「神秘体験」を経験させることもあるとされます。
「精神の分子(The Spirit Molecule)」とも呼ばれているそうです。
これは実は存在自体は自然界では珍しいものではないんです。
人体内でも合成、分泌され存在するものです。
瞑想やヨガをやっている人の中にも、この内因性DMTに関心を持つ人がいるようです。脳の視床後部にある松果体(松果腺)に関連付けて言及する人もいます。
こういった内因性サイケデリクスを上記の思考モデルに組み込む場合には以下のものが提案できるでしょう。
① 瞑想によって心と呼吸を静める
↓↓
② 日常の喧噪に対応するような脳部位が静まる
↓↓
③ また、瞑想の深まりによって特殊な自律神経の活動 状態が生じる
↓↓
④ 脳幹がこれらを受けて、(覚醒や睡眠、夢見の時もそうであるように)「信号」を発生させる
↓↓
⑤ 脳幹からの信号を受けて脳の活動 状態に変化が生じる
↓↓
⑥ 意識ー神経生理の「第三の状態」の現出が明確になる
このうちで、内因性サイケデリクスの分泌が促されるのは、④以降で特に⑤や⑥、⑥がさらに明確になり深まった段階だろうという考察です。
また重要な生命エネルギーの体験に関しても、同様の考察が提案できるでしょう。
基礎的な生命エネルギーの体験の場合には、③以降に生じるものがあるかもしれません。
ヨガ、ヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法
ヴィム・ホフ・メソッドやホロトロピック・ブレスワークなどでは特殊な呼吸法が用いられます。
関連note:ヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法とは?やり方、効果、心身への影響や危険性についても
ヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法では保息(ヨガで言うとクンバカ)がともないます。
このヴィム・ホフの呼吸法との関連性は分からないのですが、ヨガにもこれとそっくりの呼吸法があります。
これは有名なスワミ・ヨーゲシヴァラナンダ師の書籍『魂の科学』の続編的なものである『実践・魂の科学』だったか『実践 ヨーガ大全』だったかにもあったように記憶しています。
さらにクンバカとバンダをしっかり加えたもので、ヨガのプラーナヤーマの中では激しいものの一つです。
このヨガの呼吸法は、いわば「ムドラー」であり、やり方によっては健康被害が生じたりします。
かのオウム教団で熱心に行われていました。
この呼吸法と内因性サイケデリクスを関連づける考察もあるようです。
この呼吸法の特徴は以下のものです。
・呼吸性アルカローシスが生じる
・激しいものである
・クンバカがともなう
・ヨガ式のやり方だとさらにバンダがともなう
(さらにマニアックなやり方だと、「チャクラ」や「生命エネルギー」を意識するなどの観相やアシュヴィニー・ムドラーがともなうものもある)
これらから総じて神経生理、自律神経、中枢神経への強めの刺激が考えられます。
これによって実際に内因性サイケデリクスの分泌が促されるかもしれません。
また呼吸性アルカローシスとクンバカに注目する場合には、ひょっとすると、相対的には、知性などを司る高次の脳部位に対して脳幹(や辺縁系)の活動が高まっている状態を作りだすかもしれません。
① 瞑想によって心と呼吸を静める
↓↓
② 日常の喧噪に対応するような脳部位が静まる
↓↓
③ また、瞑想の深まりによって特殊な自律神経の活動 状態が生じる
↓↓
④ 脳幹がこれらを受けて、(覚醒や睡眠、夢見の時もそうであるように)「信号」を発生させる
↓↓
⑤ 脳幹からの信号を受けて脳の活動 状態に変化が生じる
↓↓
⑥ 意識ー神経生理の「第三の状態」の現出が明確になる
この呼吸法による作用は、上記の思考モデルにおける③~⑥に関わるかもしれません。
しかし、こういったムドラーのような行法を用いる場合には、この思考モデルは適切ではなくて別のモデルが必要だとも考えられます。
この第三の状態を現出させるために、「瞑想リトリート」も有効だと思われます。
これについては次のnote『瞑想リトリートについて』で。