家庭菜園は母の長年の夢だったらしい。
私が6つのころ、両親はマイホームを購入した。
家の周りはぐるりと庭用スペースになっていて、最初は何もなかった。
そこから何十年もかけて、母は緑豊かな庭園を作り出した。
春にはスミレやパンジーが咲く。
夏の初めにはトマトやきゅうりが植えられ、それらは日を重ねるごとに家を緑で覆っていく。
夏の朝、朝食用のトマトやきゅうりを採ってくるのは私の役目だった。
緑の多い庭の中で、トマトの黄色い花と赤い実は一際目を引いた。
トマトをもぎ取る時、手にはトマト特有の青臭い香りが染み付く。
それは洗ってもなかなか取れなかったが、不思議と嫌ではなかった。
やがて夏が終わり、庭の木々が黄色や紅色に染まる。
東北の秋は短いもので、あっという間に冬が来て、庭は一面深い雪に覆われる。
春の庭、夏の庭、秋の庭、冬の庭。
どれも美しいが、特に植物の生命力を感じるのはあの赤いトマトに象徴される夏の庭なのだった。
ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。