「本と食と私」今月のテーマ:異国の料理―人生に残された料理の刻印
人生に残された料理の刻印
文:田中 佳祐
リチャード・ローティという哲学者の本『偶然性・アイロニー・連帯』を読んでいて、旅について思ったことがある。
この本は個人の生と他者との関係性について書いた一冊だ。ローティは「自己の偶然性」という章で、フィリップ・ラーキンの詩の一部を引用している。
私はこの本を読み、難しくて天井を見上げた時にイタリア旅行のことを思い出した。
旅の目的は美術を見ることで、ヴェネチアで芸術祭の会場に行き、その後ローマに移動して教会を巡った。美