小説|神様たちの子守唄
たとえば、どこかに悪夢を見るのが怖くて眠れない少女がいたとします。ベッドにはイヌ、イノシシ、カニ、コアラ、ウサギなどのぬいぐるみたちがいるものの、それでも少女は不安で不安で寝つくことができませんでした。
少女を安心させてくれるのは、いつだっておばあちゃんでした。ベッドのそばへ座り、おばあちゃんは自分で創ったお話を聞かせてくれます。楽しい話、悲しい話、面白い話。いろいろな物語が少女を深い眠りに誘いました。
ところがある時、おばあちゃんは永い永い眠りにつきます。少女は親戚の家に引きとられました。もう物語を聞かせてくれる人はいません。少女は、悪夢を怖がって、眠れない長い長い夜を、何日も何日も過ごしました。
少女を哀れに思ったのは神様です。おばあちゃんのようにお話を考えて、夜になると、天から少女に物語を語りました。おばあちゃんのお話のほうが楽しかったと思いながらも、少女は神様の物語で眠ることができました。
けれど、神様はおばあちゃんほど多くの物語を思いつけず、困ってしまいました。同じお話をしても、少女は眠ってはくれません。神様は考えます。そして、六人の天使たちにお話を創るようお願いすることにしました。
六人の天使たちは知恵をしぼり、毎日、かわるがわるお話を考えて少女に聞かせました。夜空から響く物語が、毎晩、少女を眠りに誘います。悪夢のかわりに、少女は楽しい物語の世界を歩く夢を見る日々がつづきました。
でも天使たちはへろへろです。六人で力を合わせても、おばあちゃんほどたくさんのお話を考えるのは、ほねがおれました。六人の天使は考えます。そうして、夜空できらめくお星さまたちに、お話を創るようお願いします。
星たちは交代で毎日お話を考えました。天の川には、数えきれない星々。もう少女への物語が絶えることはありません。星たちが毎晩、少女にお話を語れるから。そのうえ星々のなかには、おばあちゃんもいるからです。
ショートショート No.145
本作は【ピリカグランプリ・後夜祭】の作品です。
ピリカさんたちにお誘いをいただき、後夜祭に参加させていただきました!たとえば、この小説で神様たちが考えたお話は、「ピリカ☆グランプリ」に応募されたすべての作品のような、すばらしい物語だったかもしれません。
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