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【読書noteNo.25 こんなに笑ったエッセイは、はじめてかもしれない。『もものかんづめ』】

先日YouTubeを見てたら、面白い動画に出会った。今、話題になっている元AKB48の福留光帆ちゃん。

私自身、アイドルはあまり興味はない。

というより、皆同じ顔に見える、というオジサン現象にすでに陥っている。

でも、この子は結構好き。

頭の回転が速く、話が面白いから。

どうしたら、そんな答えが思い浮かぶのか?

と、いつも驚かされている。

ホントに20代なのか。

人生二周目のような回答を、マシンガンのようにぶっ放している。

そんな彼女がオススメしていた本が、今回紹介する本だ。


こんなに笑ったエッセイははじめてかもしれない。

私自身、あまりエッセイは読まない。

読んでこなかった、と言っていいだろう。

そんな私が、エッセイデビューを果たしたのが、この本だ。

名前の通り、良識に反した話題を集めたエッセイ。

下ネタのオンパレードである。

詳しくはこちらの記事に書きましたので、ぜひお読みください。

しかし、この本を最後にしばらくエッセイからは遠ざかっていた。

谷崎潤一郎やボードレールといった不道徳な世界を描いた作家の本にのめり込んでいったからだ。

閑話休題。

冒頭に挙げた動画に出会って、『もものかんづめ』を早速手にとった。

矢沢永吉の「止まらないHa~Ha」ではないが、笑いが止まらなかった。

どの話も面白かったが、「奇跡の水虫治療」は、格別。

数々の努力も空しく、ただいたずらに一年半が過ぎていった。友人たちは皆、海へ行ったり彼氏ができたりして青春を謳歌している。しかし私には、そんな事は許されない。水虫持ちの女には、海も彼氏も贅沢品なのだ。
一体どうしたら治るのだろう。こんな事では嫁にも行けない。将来、就職する時にも身体検査で水虫持ち、という事がバレて採用試験に落ちるかもしれない。私の人生は水虫で台なしだ。「ギャー」と叫んでバイクで海までとばしてやりたい。そして、万引・強姦(ごうかん)・シンナー遊びだ。すべて、水虫、おまえのせいだぜヘイヘイヘイ、と心の中の私は完全にグレてしまっていた。

『もものかんづめ』15頁より引用

水虫ぐらいで、大げさじゃないか。
グレるなよ!

トイレの中でこれを読んだとき、笑いが止まらなかった。

あらゆる水虫治療を試みた著者。

その努力も虚しく、水虫は治らなかったそうだ。そんな著者の絶望感とやけくそ感が文章から伝わってくる。

この本に収録されている話全てにいえるが、日常生活における「洞察力」がすごい。

今挙げた水虫のエピソード一つとっても、との話しも、展開からオチまで、無駄なところが一つもない。それは、著者が細部まで観察しているからこそ、書けるのではないかと思う。

最近笑っていないな、と思っている人にはぜひ手にとってもらいたいエッセイである。


次回は、ボードレールの『巴里の憂鬱』を紹介します。新訳が、数年前に出たようで、そちらを使います。












※最終的に、ある方法で水虫は治ります。ネタバレになるので伏せておきます。








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