職人ワザ炸裂! 輸出部の若きエースが語る「飛行機を使った貿易」の舞台裏 日航関西エアカーゴ・システム輸出部 新田さんインタビュー
大量のトラックが行き交う大きな道路……。
フォークリフトがキビキビ動き、大量の貨物が運ばれていきます。
こんにちは〜!ライターのおかんで〜す!
私はいま、関西国際空港のでっかい物流エリアにきております!
飛行機はお客さまを運ぶだけではありません。もうひとつ、大切なものを運んで世界中を飛び回っています。それは……貨物!
国内外のいろんな貨物は飛行機に載せられ、各空港の物流エリアへと集められます。そして運送会社などいくつかの行程を経て、我々エンドユーザーの手にわたるワケですが。
旅行されるお客さまを飛行機のどの席に案内するか手続きする職員さんがいるように、貨物を飛行機にどうやって積みつけるのか、それを手続きする職員さんもまたいらっしゃるんですよ。
■ 輸出部の若きエースが語る「飛行機を使った貿易」
[お話をおうかがいする、日航関西エアカーゴ・システム(株)輸出部輸出1課の新田さん!]
--- 新田さんのお仕事についてまずは教えてください。
私は輸出部輸出1課という部署に所属しており、国際線の貨物を担当しています。国際貨物の仕事を一言で説明すると「飛行機を使った貿易」です。輸出貨物を把握して、貨物の重量・お客さま全体の重量などと調整を行いながら、飛行機に「何をどれだけ積むのか」を記した指示書を書き、貨物の積み付け現場と相談しながら飛行機を定刻までに出発させる……そんな仕事をしています。
--- 意識していない限り普通は気づかないところですね。
すごく裏方の仕事ではあるんですが、より多くのモノを運ぶことができるというのは、経済に大きな影響をもたらします。また、貨物自体は何も言いませんが、貨物を送っていただいているお客さま、お待ちになっているお客さまを常に意識し、最高のサービスを提供する必要があります。いかに効率よく、多くの貨物を、完全な状態で安全に輸送するか。背景にいらっしゃるお客さまのことを考えながら、経済を実際に回しているのが目に見える、やりがいのある仕事です。
--- いろんな種類の貨物があるわけじゃないですか。搭乗するお客さまの人数というか、重さともバランスをとらないといけないでしょう?
そこが難しいところですね。座席数は、搭乗率100%に近くなるように絶妙に調整する人がいるんですよ。でも当日のお客さまの数で輸送する貨物の重さを調整しなければいけなかったり、たとえばファーストクラスは座席自体が重かったりするので、総重量だけではなく、飛行機が安全に飛べるように機体の前後の重さを考えないといけません。
[お話をうかがった部屋の眼下には絶え間なくトラックが。]
---パズルみたいですね……!
本当にテトリスを組んでいるような感覚です。貨物のチェックインのタイムリミットは離陸の2時間前なんですが、トラックの交通状況によっては先に積み付けておきたい貨物がギリギリで届く場合もある。どうしてもリミットより先に貨物を積み付けはじめないといけないので、たとえば「お客さまの重量がこれくらいなので、この範囲ならこれくらいの貨物の重量を動かしても大丈夫……」とか、その時々の判断が必要になります。
--- 仕事の一番難しいところはなんですか?
飛行機の出発時間は絶対に遅らせることができないところでしょうか。どんな貨物が来ても、どんなトラブルが発生しても、私たちの業務が飛行機の出発時間に影響を与えることは許されません。かといって、スッカスカの貨物で見送るわけにもいかない。
--- じゃあ、一番達成感のあるところは?
勿論安全や作業品質を確保することを大前提として、最大限に貨物をバランスよく積み付けて、オンタイムに飛び立ってくれたときは本当に達成感があります。とはいえ100%満足いく仕事は、まだ数回しか経験がありません。
--- オ、オンタイム?
あ、すみません。「時間どおりに」という意味です。
■ 小型セスナのパイロット免許も保有!?航空オタクから航空関連の仕事へ
--- わたし、出身が伊丹なんで、よく伊丹空港に遊びにいってたんですよね。
伊丹空港といえば、スカイパークとか千里川河川敷とか飛行機がよく見えていいですよねえ!
--- オンタイムという専門用語をサラッと言ったり千里川河川敷を知っていたり、お主、もしや航空オタクなのか……?
そうですね!小さい頃から飛行機が好きで、進学も航空関連の学部がある大学に進学しました。大学時代は、よく羽田や成田に飛行機を見に行ったりもしましたね……。
--- ガチ勢やないか!!
本当はパイロットに憧れていたんですよ。じつは、小型セスナのパイロット免許も持ってるんです。フライトプランを自分で作成したり、大学の部活動では、グライダーを操縦したりしました。
--- 専門用語がサラサラ出すぎて……。それだけ航空オタクなら、関連の仕事につけるのは願ったり叶ったりじゃないですか?
とはいえ、航空貨物は全然知らなかった業界といえば業界なんです。お客さまとのやりとりや意外と事務作業が多かったりして、日々勉強ですね。
■ 貨物のプロが働く現場!輸出部のオフィスを覗き見!
インタビューをしていた会議室を出て、輸出部のオフィスを案内してもらいました。広大な敷地内には複数の航空会社やフォワーダーと呼ばれる航空貨物代理店の倉庫があって、倉庫を持たない海外の航空会社は業務を委託しているところが多いんですって。
こちらが輸出部のオフィス!業務に別れて第1から第3まで部署の島があり、みなさん黙々とPC画面に向き合っていました。こんな「イェーイ!」みたいなポーズしても誰ひとり反応してない。
--- めっちゃピリピリしてるじゃないですか……いやホントすみませんお邪魔します……。
関空は国際空港なので、24時間飛行機が飛んだり着いたりしているので、ピリピリしてるのは日常茶飯事です。あっでも、ピリピリしてるといっても集中していて真剣だということであって、社内の雰囲気が悪いとか、そういう意味じゃないですよ!
--- ここまで静かだと雑談する暇もないですね……
現場は常に状況が変わっていくので、あっちこっちで毎日何かがあります。喋りながら仕事をすることはないですね。だから時間があるときに喋らないと、挨拶でしか声かけなかったり……。
これが積載する貨物を調整する画面。正直なにがなにやらサッパリでございます。
さて、いよいよガレージ状になっている積み付け現場へGO!
■ 最高の効率で積み付けるのが職人芸!ここが貨物の出立地
安全のため、ピッカピカのベストを着て見学。
--- ここで実際に貨物を積み付けるんですね!
そうです。トラックなどで運ばれてきた貨物はまずここに納められて、先ほどのオフィスで貨物をどのように積めるかをシュミレーションし、指示書を設計します。その後、実際に積み付けたものを計量して再度オフィスにて確認、そうしてやっと飛行機に載せることができるんです。
--- ぬおお、でかい!
「A」「B」各10000kgまで計ることができて、5kg単位で重量が出ます。
Bプラットに新田さんが乗っているので、だいたい70kgと表示。
実際に積み込みをしている貨物も見せていただきました。
--- 大小さまざまな箱なのに隙間が少ないですね。職人芸だわ……。
積み付ける作業を専門にする職員さんたちのテクニックですね。私たちが書いた指示書はあくまで指示書。最終的な細かい調整は現場判断になります。
隙間が空いていないためにコンテナの中で貨物がズレることを防止できます。貨物に損傷を与えないことを意識して、完璧なかたちで完成まで持っていってくれることに、感謝しかありません。
--- 新田さんは入社3年目なんですね。仕事面でどう成長したか、どんな人が向いているかを最後に教えてください。
マルチタスクができるようにはなりましたね。離陸時間を逆算し、貨物とお客さまや座席、機体自体の重さを考慮して……と俯瞰でものを見ることが必要とされているので。アレ見ながらコレに注意する、ということが得意になりました。
--- たしかに。
現場って本当にどんどん変わっていくんです。変わりゆく情報をアドリブでこなしていかないといけない。まっすぐな線上をまっすぐにしか進めない人は難しいかもしれません。その時々で「なにがベストか」を考える事ができる人、そんな人が向いているのかもしれません……。
でも入社すれば毎日成長していき、自ずと身についてくれますよ。
■ おわりに
どの場面でも楽しそうに話をしてくれた新田さん。
ここには書ききれないんですが、精密機器を保管しておくための部屋や、仕事に使う道具も紹介してくれ、好きな飛行機の型番からお気に入りの空港まで、いろんなことを教えてくれました。
これから関空を利用するときは、「JALには『777(トリプルセブン)』っていう機体があって、これが一番大きいんですよ。最新鋭のハイテクな飛行機で、やっぱり貨物スペースも大きくて……」とキラキラ語る新田さんの瞳を思い出そうと思います。
貴重なお話をどうもありがとうございました!
(文・写真:平山おかん)
ライター:平山(おかん)
京都の編集プロダクション、合同会社バンクトゥの編集兼ライター。「おかん」の通称はほとばしるオバちゃん感から。伊丹空港32L滑走路の南側、千里川河川敷で視界スレッスレに着陸する飛行機を眺めながらビールを飲んでボーッとするのが趣味のひとつです。