読書記録 さくらももこさんの『憧れのまほう使い』を読んで
昔、読んでいたはずの、さくらももこさんの本。ここ最近立て続けに買い集めて読んでいる。単行本として出版された当時も、「さくらさんの文章は、なんておもしろいんだ」と思っていたはずだが、20年以上たって自分が大人になり、いろんな経験をしてから読むと、また違った印象を受ける。
昨日は、さくらももこさんの『憧れのまほう使い』(新潮文庫)を読んだ。
さくらさんが高2の冬、書店でみつけた一冊の絵本に恋したこと。
その作者への憧れはずっと続き、漫画家になってから、その作者の生誕の地イギリスを訪れたお話。
その絵本にはじめて書店で出会った時の、さくらももこさん。
高校生の少女だった、さくらさんが夢中になったその絵本は、エロール・ル・カインの『おどる12人のお姫さま』(ほるぷ出版)
ちびまる子ちゃんの作風とは違うように思うが、『憧れのまほうつかい』の中には、しっかりとル・カインに影響を受けて、さくらさんが描かれた繊細なタッチのイラストがいくつも挿入されている。
これまで出された単行本の表紙の色彩や絵柄が美しいと思っていたけれど、ル・カインの影響を受けて描かれていたのかと思うと、一冊の本との出会いは大きいんだなと思う。
ル・カインさんに弟子入りしたいと思うほど憧れた様子。
まだ学生だった少女が、ずっと描くことを仕事にしたいと思い続けたこと。
そして、本当に漫画家になったこと。
ちびまる子ちゃんの漫画は、ゆるくて楽しいけど、生まれた背景には膨大な時間と行動があったからなんだとあらためて思う。
旅の様子は、やはり、おもしろエピソードが満載だが、憧れの人の生前の様子を、ゆかりある人たちに聞く、さくらさんの幸せな時間を想像させてもらった。
文庫本になって、追加された特別インタビューは、小さな頃から絵を描き続けられていた様子が語られていて興味深かった。
ちびまる子ちゃんを生み出した、さくらさんの創作の源は、こどもの頃から絶えることのない美しいものへの興味と、描き続けたエネルギーがあったからなんだと思った。
単行本がもうないことは寂しいけれど、当時なかったインタビューで、ものを生み出す人の気持ちや在り方を知れたことはうれしい。
もう20年以上も前の本なのに、今もなお作者のエネルギーを感じる。
時間を超えて、私の心を動かしてくれる本。
なんて、ありがたいものなんだろうと思う。
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