:妄想歳時記:出来損(でけぞこ)ないの秋、 仕上げは松虫で
立秋をとうに過ぎても、秋とは名ばかり。
昼間はまだまだ暑く、夏の疲れが身体に残る。
そんな出来損ないの秋を、仕上げるために
松虫を訪ね、小さい秋を採集する。
阿倍野の松虫塚、寂しい伝説がいくつもある。
ただスズムシの古名がマツムシと言われ、
その時代、鳴いていたのはスズムシか?
考え過ぎると頭に熱がこもる、それはやめ。
どちらしても、この地は昔、
虫の音がきれいな松原だった、これでよし。
マツムシ、チンチロ チンチロ チンチロリン
スズムシ、リンリンリンリン リーンリン
コオロギ、リーリー リー
カネタタキ、チンチンチン
伝説に想像を膨らまし、聖天山まで秋の声を探す。
結局、小さい秋は見つからず。
あきらめかけた帰り道。チンチンチンと音がする。
おっ、見つけたのは阪堺電気軌道の小さい電車。
松虫塚:
大阪市阿倍野区にある史跡。伝説では、通りかかりの二人の旅人の一人が松虫の声に惹かれ、草むらに入るとそのまま命尽きた。それをあわれみ、この地で供養をしたという、能の演目にもなっている。
また、後鳥羽上皇寵愛の白拍子、松虫鈴虫姉妹が、この地に隠れ住んだとして知られている。
阪堺電気軌道:
大阪市内と堺市内を行き来する路面電車。チン電、チンチン電車と呼ばれる。
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