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小磯通信
2019年5月20日 19:17
人の言葉は死ぬほど響かない。私には、私を囲む2つの壁がある。1つは家の壁。それは私と社会とを隔ててくれる。家を出てスイッチオンの私は社会に媚びへつらいながら、ぎこちなく口角を持ち上げて、作り笑顔で生きている。玄関を開けて木造のその内側に戻ると、そこには何一つ飾りのない素の私。録画した先週のドラマを横目に、携帯でSNSを眺めて生きている。もう1つの壁は、私という魂を覆っている骨、神経、皮
2019年6月13日 20:02
涙もいい加減干からびて、渇いたアスファルトの向こうには夏が来る。甘い香りに身を委ね、私は、気づけばここまで歩いていた。太平洋に打ち落とされて、ゆらゆら揺れる空をたしかに感じながら、それでも何もせず、何も考えられなかった。烈火の如く燃え盛る炎を背にしても、なんとか這いつくばって、外れた歯車を戻そうとしていた。だけど仄かに鼻をかすめたような気がして、思わず振り返った。本当は、誰の気持ち
2019年5月16日 18:39
僕らは静かに目を開ける。長い時間が経った後。静かな中には音が聞こえる。人気の少ない浜辺のように。息を切らして走ってる。抜きつ抜かれつ倒れたり。不安になって振り返る。ほんのり足跡が残ってた。真っ直ぐ星を眺めてる。長い時間が経った後。私は静かに目を閉じて、そのとき、そのときを待っていた。(あとがき)お久しぶりです。詩を書いてみました。三段落構成で、テーマはそれぞれ誕生
2019年2月21日 09:09
おれのポエジーが黙ってないぞ細切れにされて指先から出ていったきり帰ったためしがない宇宙に行ったんだろうかどこにつながってるんだろうかこの指先は熱くなり冷たくなりいくらかすり減ったのは指先とポエジー(ミズウミ)
2019年1月2日 22:52
校庭には桜が咲いて、陽気な風が髪をなびかせながら、彼女は生まれた。平凡な日常と移り変わる季節、その中でとめどなく沸き溢れる感情を叫んでいた。ほの温かい太陽に照らされて、その表情は誰よりも輝いていた。雨はすっかりあがって、強すぎる日射しが風鈴を少し鳴らす。彼女は階段をかけ上がっていた。汗ばんだ背中にぴったりとくっついたTシャツが、全く気にならないほど軽やかな足取りに、満面の笑みで。蝉の声が鳴り