こい瀬 伊音 (こいせ いと)

詩人を名乗る小説書き。 石田衣良パブリッシュサロン「世界はフィクションでできている」出…

こい瀬 伊音 (こいせ いと)

詩人を名乗る小説書き。 石田衣良パブリッシュサロン「世界はフィクションでできている」出身。サロン内 ショートショートコンテストで4度の優秀賞受賞。ストーマ啓発ポスターのキャッチコピー「私の大切なものは目に見えない。服を、着てしまえば」意気込みは「あなたをいと中毒に仕立てあげる」

マガジン

  • 掌編小説集『十三夜(いまだみちず)』

    ちいさい小説をここにおきます。 マガジンタイトルには  十三夜 に  あとすこしで満ちるのだという  不遜な態度と  いまだみちず に  あと二日をじりじりと歩むようすを 表現しました。 ほんとうは、 満ち欠けはいつものことですが…

  • 詩 『糸/音』

    音にすると 少し離れる。 たけど繋がっている。

  • ちいさな歴史集『うつろい、うつろわず』

    うつろひ、とは 転居だったり 枯れて散っていくもの 色づいていくもの のこと。 変わっていくことに美しさを見出だして 変わったり 変われなかったりするおはなしを ここに。

  • 舵とり練習帳

    「文体の舵をとれ」の練習問題へのとりくみをアップしていくマガジンです。

  • クロコライダーズ!

    なんだか今、足踏みしてる気がする。 このままでいいのかな? 誰かに信じてもらえれば、もう少し強くなれるのに。 これは、 6つのピースからなる青春群像劇。 あなたを、わたしを応援します。 忘れられない2020年8月に。 (武田花さんのポップス大作戦#1~6への応募作です)

最近の記事

    • ヴァンパイアズ シークレット

      • バグり渦中、ドリップ溺愛注意報

            #イグBFC6                                    家で彼氏作りたいけど量が多すぎになんのまじだるいな。あまったやつはじゃがいもとかにんじんアイラップの上から揉んで潰して、そんで冷凍保存すれば? っていうけど、冷凍庫いつもぱんぱんなんだもん。でさ、いつ食べる? ちょっと放置して問題ないとこがまたいいんだけどさ。 「いつでも。食べたいとき! 冷凍庫に彼氏があると安心じゃん」  うちは半バグ派。いつも小分けにして、ちゃんとふたつずつ

        • ルラの夢

          #古賀コン6 一時間で書く お題「架空☆1レビュー」  ルラはサッカーゴールを地引き網に見立て、男子五人を強引に曳いていく。 「このなかでわたしとケッコンしたいのはだれ?」  プリンセスの突然すぎる問いかけに、カケルは鼻の下を伸ばす、ユウトはケッコンに魂を奪われる、タッキーは競走馬みたいにぶるぶるふるえている、ショータはぽかんとしている。そして僕はドン引きして、みんなの様子をみてる。ここに選ばれてるんだから、僕もすこしは自信をもっていいってことかもなあ。ルラは正真正銘にきれ

        マガジン

        • 掌編小説集『十三夜(いまだみちず)』
          17本
        • 詩 『糸/音』
          44本
        • ちいさな歴史集『うつろい、うつろわず』
          4本
        • 舵とり練習帳
          8本
        • クロコライダーズ!
          6本
        • 【閲覧注意】感想文!学校の先生には見せられないバージョン!
          3本

        記事

          遊泳禁止

          遊泳禁止 浜から砂が失われ 海水浴場が閉鎖する 遊泳禁止を示すロープが潮風に吹かれ さびれた街をいっそうさみしくする 受け入れやすい物語を持って死んでゆくひとたちを簡単に見送り 砂が波に拐われてゆく 不自然はひとつもないと勝手に救われて 侵食されているのかも そうして生きてゆくのかも 物語の準備をして 焦燥から逃げて

          ばいばい ばいばい

           #古賀コン5   肉を切らせて骨を断つのって言ってたセンパイが泣いてる。その話を聞いたときから、切らせる肉はやたらリアルなのに断つはずの骨がなんだかふわっとしていて(骨やのに。ぼやっとしようもないのに)ゆうたらセンパイはいっつも肉を切り売りしてばっかりで、ほんまはいっこも骨には触れてへんのんちゃうん?  思ってたけど口にはできひんかって、それはその、センパイにも立つ瀬やら面子やらあるかもしれんからで、年下からはまあよういえんかった、ら、血だらけが痛々しい。 「うわあああー

          獅子は十六匹の群れから 若い兄弟たちが旅立つ さようならさようなら 春は別れの季節だから ただそうなる そのようにある 四肢の十六本をもてあまして あとの十二を切り離した さようならさようなら ふたりは対のままで ひとりとは縦に裂いたエリンギとなる ただそうあるしか はなむけの言葉に裏打ちされた 自信をひとつ 胸に 支持十六票の提案を捨てても 一分につき何千リットルもの泉は涌く さようならさようなら すべて涙に流したら からだはからからのスポンジとなる ただそうあれ そ

          ある藤原家の食卓

          古賀コン4テーマ「記憶にございません」 (※一時間で書くこと)               こい瀬 伊音  資源ごみの分別をしていたら、まだパッケージから出されていないままのお守りが出てきた。高貴な紫色の地に若草色で縫いとってある文字は「合格御守」。 「えええっ初詣のとき買ってあげたお守り、そのままぽいっと捨てたの? だから神様に見放されたんじゃ……あきれられたんじゃないの?」  やいやい言う妻に、俯いたまま知らねーおぼえてねーと息子。いやまぁ二ヶ月前のことだから、覚えて

          詩「磔」

          #殺すな とガザを嘆くのに 被災地の獣は必ず仕留めよと腸《はらわた》がいう 喉笛に箸を一本深く突き立てて その姿を校庭の遊具に磔せよ 体育倉庫の奥に眠る黒と黄色のロープで縛れ #殺すな と平和をと 憎しみのない世界を願っているのに 2024.01.03 タスケテのあ行は息が漏れるから シネと短く叫び突き刺せ

          意図的秘密の『棕櫚10』+『レイドバックSF』

          はじめに 『棕櫚10』 『レイドバックSF』に 興味をもってくださったみなさま、ありがとうございます。 2023年、素敵な二冊に誘ってもらえて、うれしさのあまりここぞとばかりにすきをつめこみ放題!の作品を寄せました。 すこしふしぎ、けっこうふしぎ、わけがわからない! それでもよく、それでも好き というお声はとてもとてもありがたく、勇気の出るものです。 ふたつの作品は、あるひとつの作品世界に連なったものでした。本文のうしろにひっそりと作品名を記し、だれかそこにたどり着いてくれ

          意図的秘密の『棕櫚10』+『レイドバックSF』

          詩「シュトーレンと光」

          まんなかにナイフを入れて 五ミリずつ 七ミリずつ ドライフルーツがよく馴染んで 今日より明日 もっとおいしくなる 粉砂糖をまぶしたそれは おくるみにくるまれたキリストの姿 まんなかにナイフを入れて 五ミリずつ 七ミリずつ 分断した傷口は開いたまま乾いて 今日より明日 もっと凄惨になる 硝煙や砂、血にまみれて 父が子の内蔵をこぼさぬように抱く 寿ぐ言葉よ 夜のあとには朝を与えよ 2023.12.24 明日がたのしみって思えることは しあわせなことなんだね どんなこどもに

          めかくし

          わたしのピンクのスニーカー もしかしてPUMAのかもしれない 靴箱の片方だけを開けて みないふり みないふり 「ねえわたしの靴のしたにやわらかなあかちゃんがいるの」 「ここでジャンプしてもいい?」 「ハンバーガーのおもちゃもあげよう」 「きっと喜ぶよね」 踏みつけて踏み抜いて 瓦礫の下へ追いやって みないふり いないふり 2023.12.09 靴底にいのち感じてしまうかも てんとうむしの音は乾いて

          オレンジのちアプリコット

           まばゆいオレンジのなか、裕貴の背中が遠ざかっていくのを見送りながら、わたしはちっともさびしくないことを確認していた。 「あーさむっ」  ぴったりと閉めていた掃きだし窓が反射して、逆光のわたしを映し出している。冷気が入り込まないように、と思ったのだけれど、閉め出された気持ちにもなる。この部屋、どうしようか。  越してきて、四年がたとうとしていた。ベランダ用のスリッパのままで、点検のように1LDKの部屋をぐるっと見回す。二泊三日の乱雑を片付けてしまえば愛着もある。会社まで近すぎ

          オレンジのちアプリコット

          詩 赤い涙

          片道の燃料はあります この飛行機を僕にくれるのです こんな名誉なことがあるでせうか 出発は明日です 最後の夜です 僕を忘れないで  しあわせになってください まだ死にたくない  花は散るもの テロルをすべて憎むなら 若き特攻兵に涙してはいけません 彼らは戦争のきまりごとを破り 白人たちを恐怖の底に突き落とした 僕を忘れないで   来年も知覧の桜は まだ死にたくない   僕がいなくても綺麗 世界を敵にまわして戦わざるをえない 彼らの境遇を想像してみるとしたら…とおもい

          「戦争反対」

          かたく目を閉じ 耳をおおいましょう そこには静けさがある なにもいうべき言葉はありません ここは日が射し 八百万の神々がおもいおもいに暮らしている かたく目を閉じ 耳を塞いでいるあいだに 乳児すら静かになる かける言葉は見当たりません そこは病院 瓦礫がまだ息のあるひとの墓石ともなる 神は祟るもの だから祀るもの ネクタイをかたく結びあい訳知り顔を並べる人々が 自分の口を閉ざして後ろで手をとりあっている 息をし、食べ、叫べ わたしは口をこじ開ける あなたがたの神など知ら