井門 孝治

理化学研究所 量子コンピュータ研究センター所属。元国立大学 准教授、理研発ベンチャーの元取締役。科学技術とイノベーションに関わる仕事をしています。物理学の博士。専門は量子物理や素粒子物理など量子論。経営管理修士(MBA)。

井門 孝治

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  • 俺のブツリ

    2022年のノーベル物理学賞でも話題となった量子物理。量子コンピュータなどの量子情報理論の発展等でますますその重要性を増しています。量子論を中心に物理の基礎を分かりやすく伝えます。

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    ワインと日本酒を中心に書きます。

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プロフィール

理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 高度研究支援専門職 博士(理学)・経営管理修士(MBA) 日本ソムリエ協会ワインエキスパート・SAKE Diploma 早稲田大学大学院理工学研究科物理学及応用物理学専攻博士後期課程修了。早稲田大学理工学総合研究センター助手、名古屋大学産学官連携推進本部特任講師、理化学研究所 実用化コーディネーター千葉大学 特任准教授などを経て、2022年10月より現職。 理研発ベンチャー株式会社Kokoroticsの取締役も務めております。 内

    • 物理の分業体制

      物理学は大きく分けて2つの分野からなっています。理論物理と実験物理の2つです。物理学の研究は分業になっているというわけです。物理を理論的に研究する物理学者と、実験的に研究する物理学者がいることになります。 ファインマン物理学「力学」のなかで、ファインマンが述べている通り、 「理論物理学者は洞察し、演繹し、新しい法則を推測する。けれども、実験はしない。実験物理学者は、実験し、洞察し、演繹し、そして推測する。」ということになります。 さらに、朝永振一郎は自身の著書「量子力学 I

      • J. J. Sakurai「現代の量子力学」

        「現代の量子力学」の著者であるJ.J.Sakuraiは、ミドルネームが付いているので、日系アメリカ人なのかと思っていた。しかし、「現代の量子力学」を読んでみると、純粋な日本人であることが分かる。高校までは日本に暮らしていたようで、大学の学部からアメリカに留学して、そのままアメリカ滞在を続けた人のようである。本名は、桜井純だから、Jun Sakuraiとなるはずが、Jun John Sakuraiとなり、J.J.Sakuraiと呼ばれるようになったようだ。米国人にとって、日本語

        • 半導体

          4価元素であるSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)は、4個の価電子を持っています。 ここで、Ge結晶に、5価元素である微量のP(鉛)を混ぜることを考えましょう。P原子はGe結晶の中に入り込んで、Ge原子に置き換わります。P原子が持っている5個の電子のうち4個はGe原子との電子対結合に使われます。残りの1個の電子を余分にもつことになります。このように、電子を出す不純物はドナーと呼ばれます。 次に、Ge結晶に、3価元素である微量のAl(アルミニウム)を混ぜることを考えましょう

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          スタンフォード大学サスキンド教授「The Theoretical Minimum」

          この講座が最高すぎる。 スタンフォード大学でサスキンド教授によってなされた社会人向けの学びなおしの講座だ。 ただで、その講義を視聴できる。 サスキンド教授は、スティーヴン・ホーキング博士との20年以上にわたる「ブラックホール戦争」で有名だが、ひも理論しかやっていない方だと思っていたので、あまり好きではなかった。だが、この講義を視聴してみて変わった。物理の説明が分かりやすい。サスキンド先生は自分でメモしたレポート用紙数枚だけ手元に持って講義しているが、語ることは膨大だ。 サス

          スタンフォード大学サスキンド教授「The Theoretical Minimum」

          量子力学の原理

          量子力学を特徴づけている原理をいくつかご紹介しましょう。主に以下の6つがあります。 波動と粒子の二重性 重ね合わせ コヒーレンス 量子もつれ 測定 波動と粒子の二重性 量子的な物質は、粒子と波動の両方の性質を持っています。粒子でもあり波動でもあるものを量子と呼びます。 重ね合わせ 量子系は複数の状態を同時に取ることができます。この状態の重ね合わせといいます。 コヒーレンス 量子系の重ね合わせ状態や量子もつれなどの状態が壊れないで維持されることをコヒーレン

          量子力学の原理

          社会人の物理の復習2

          放送大学の大学院には、「先端技術のための現代物理学」という講座があり、これを受けることで、大学の物理を復習できる。 内容としては、電磁気学、量子力学、統計力学、固体量子論を学ぶことができるが、力学や相対論は入っていない。 「先端技術のための」という触れ込みなので、それに関連する内容に絞っているということなのであろう。ただし、オンライン講座なので、テレビで視聴することはできず、ちゃんと履修する必要がある。 放送大学の大学院は、「履修は、1科目(2単位22,000円、4単位4

          社会人の物理の復習2

          超対称変換

          ボーズ・アインシュタイン統計に従う粒子はボソン、フェルミ・ディラック統計に従う粒子はフェルミオンをよばれます。ボソンとフェルミオンを入れ替える変換が超対称変換です。 ボソンの状態を$${\ket{b}}$$、フェルミオンの状態を$${\ket{f}}$$で表しましょう。このとき、 $${Q\ket{b} = \ket{f}}$$ となるような変換$${Q}$$が超対称変換になります。 ボソンの生成演算子を$${a^{+}}$$、フェルミオンの生成演算子を$${c^{+

          超対称変換

          社会人の物理の復習

          忙しい社会人が物理(特に大学で学ぶ物理)をすばやく復習したい場合、放送大学を利用するのも良い。 放送大学には「教養学部教養学科」があり、その中の「自然と環境コース」で、物理に関する科目が用意されている。 導入科目として、「初歩からの物理」と「物理の世界」があるが、あくまでも導入までで、詳しいところまでは行かない。 専門科目の「力と運動の物理」、「場と時間空間の物理」、「量子物理学」の3つが大学の物理を復習するのに適している。 力と運動の物理古典力学を学ぶ。ニュートン力学

          社会人の物理の復習

          社会人の物理

          忙しい社会人が勉強をしようと思っても、まとまった時間を取るのは難しい。ましてや、物理の勉強をしようとしたら、なおさら時間がかかる。時間が取れたとしても、大学で学ぶ物理の教科書はどれも分厚く、始めからやろとすると膨大な時間がかかるだろう。そこで、お勧めするのが、レオナルド・サスキンドの「Theoretical Minimum」シリーズだ。スタンフォード大学での社会人向け講座をもとに書籍化された。 「Theoretical Minimum」というくらいだから、それぞれの物理を理

          社会人の物理

          物理学の基本原理

          物理には、万有引力の法則やファラデーの電磁誘導の法則、熱力学第一法則など様々な法則があります。これら物理法則を司る基本的な原理があります。物理における原理としては、以下の4つがあります。 最小作用の原理 局在性 ローレンツ不変性 ゲージ不変性 最小作用の原理 作用積分の変分をゼロになることを要求して方程式を見出します。最小作用の原理に従って、力学系の運動の方程式を求めることができます。 局在性 事象は時空間の一点においてダイレクトに起きるというものです。量子力

          物理学の基本原理

          ブロッホ球

          量子コンピュータで使われる量子ビットは、量子力学の重ね合わせの原理から、0と1のどちらも取ることができます。また、0と1の間の0.5といった状態も取ることができます。量子ビットは、状態$${\ket{0}}$$と$${\ket{1}}$$の任意の重ね合わせ状態を作ることができます。単一の量子ビットの状態は以下のように表すことができます。 $${\ket{\psi}=\alpha\ket{0}+\beta\ket{1}}$$ 量子力学によると、$${\ket{\psi}}$

          反変ベクトルと共変ベクトル

          スカラー場$${\phi}$$の時空間微分を考えましょう。 $${\partial_{\mu}\phi = \frac{\partial\phi}{\partial X^{\mu}}}$$ ここで、2つの座標系$${X^{\mu}}$$と$${X^{'\mu}}$$を考えたとき、それぞれの無限小並進$${dX^{\mu}}$$と$${dX^{'\mu}}$$は、次のように書くことができます。 $${dX^{'\mu} = \frac{\partial X^{'\mu}}

          反変ベクトルと共変ベクトル

          海外での日本酒ブーム

          2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから、日本人にとって伝統的な食文化である和食が海外でブームになっている。それに伴って、日本酒を取り巻く環境は大きな変化を迎えている。日本酒の輸出量がここ10年で2倍になっており、日本酒の海外での需要が高まっている。特に、純米大吟醸などの高価格帯の日本酒が人気だ。 また、世界最大のワイン教育機関であるWSET(Wine & Spirit Education Trustの略)が、国際的な認定資格である「WSET SAKE」を

          海外での日本酒ブーム

          次元解析

          物理で出てくる単位にはさまざまなものがあります。長さはメートル($${m}$$)、時間は秒($${s}$$)、重さはグラム($${g}$$)などが基本の単位になります。物理量の単位は、これら基本単位の組み合わせで構成されます。例えば、速度の単位は、$${m/s}$$、加速度の単位は、$${m/s^2}$$で表すことができます。そして、基本単位がどのように組み合わされているかを表すのを次元といいます。次元の記号は、長さは$${L}$$、時間は$${T}$$、質量は$${M}$$

          トモグラフィー

          X線CTは1973年にハンスフィールドとコーマックによって発明されました。彼らは1979年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。40年以上も前に実用化されていて、レガシーな代物と思われていますが、実は、その画像解析の技術はまだまだ問題点が多いです。例えば、歯科診断用のX線CTの場合、金歯などの金属があるとアーチファクトと呼ばれるノイズが多くなり、うまく画像を再構成することができません。これは、X線CTなどトモグラフィーの画像の再構成には、多元連立一次方程式の解を求めること

          トモグラフィー