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『エッセイ』地震が頻発しているので、龍について考える

ふざけているわけではない。昨夜も能登で大きな地震があり、ふとそんなことを思い出したのだ。

水曜日はエッセイ・もしくは雑文の日。

昔、地震は日本を取り巻く龍が暴れるせいだと考えられていた。鯰は龍よりもあとらしく、有名になったのは安政の大地震の瓦版だとか。大河ドラマ「青天を衝け」で藤田東湖が圧死して、竹中直人の徳川斉昭が大泣きする、あの場面がそれ。

それはともかく、昨年noteに書いて一時中断した際に消した龍についてのエッセイを、復活させたいとおもいます。(地震についての部分は昨年5月時点での内容と、ご了承ください)




いくつもの戦のありてこの町はおりふし龍の舞ふやもしれぬ

誰が名付けたか知らないけれど、北は石川県能登半島から南は三重県熊野古道に至る範囲を「昇龍道」と言うらしい。東は静岡・長野、西は滋賀県まで含むそうだ。能登半島を頭に、三重県の最南端を尾に見立てた形がちょうど龍が昇っていく姿に似ていることから、そう名付けたのだそう。要はこの辺りの観光地をひとまとめにして「昇龍道」と名付け、ぐるっと回ってもらおうという試み。観光業界の思惑が透けて見えるけれど、岐阜県を中心にして歴史的にも東西南北の大きな動きが幾度もあって、大局的にもこのまとまりは間違いではない。そうおもって見ると、ここ数年能登のあたりに地震が多いのは、龍が怒っているということか?

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僕が住んでいるところは昔からいろんな意味で要衝であって、時代を揺るがす戦が二度も行われた。というよりむしろ、「戦があった」という以外何の取り柄もない町だ。その二度の戦についてはまた別の機会に取り上げたいとおもうので、ここではそれについては書かない。時代を揺るがす二度の戦といえば、歴史に詳しい方ならあああそこかと、すぐにお分かりになるだろう。
そんな町だから、戦のたびに龍が舞うのではないか、そんなことを考えたりするのだ。そこに「昇龍道」だ。何か因縁めいておもえるではないか。

その大きな戦を題材に、小学高学年以上向けの児童文学作品を書いたことがある。サークル誌に参加していた頃だ。こちらでたびたびお話している今江祥智さんに添削いただいたのがその作品。作品の中で龍を飛ばしてみたのだけれど、これが今江さんには不評だった。龍が当たり前すぎる、というのが批評の内容で、僕は龍には一家言あるのでね、と今江さんはおっしゃった。そう言えば、タイトルもズバリ「龍」という作品が、今江さんにはある。今江作品の龍は龍であって龍ではない。それはイコール子どもの姿そのままなのだ。


今考えてみれば、テーマに対してどんな龍にするかというのは大変重要なポイントだった。戦いがあるだけのファンタジーならばごく普通の龍でもいいけれど、子どもたちを対象にして何を伝えたいかという点で、確かに普通の龍を飛ばすだけでは別にわざわざ登場させる必要もなかった。今江さんはそこを見抜いていたのだとおもう。
この作品については改めて書き直してみたいとおもっている。

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「龍」と「ドラゴン」は同じか? というテーマがデザイン学校での絵本の講義で取り上げられたことがあって、結論としては全く別のもの、ということになったのだけれど、海外の作品が翻訳されるときはほぼほぼ同じものとして扱われている気がする。「龍」と「ドラゴン」の一番の違いは、龍は翼がなくても空を飛べるけれど、ドラゴンには翼があることだ。『ゲド戦記』でテルーが変身するもののことを「龍」と称している記事があるけれど、あれも「龍」ではなく「ドラゴン」だ。
何より龍は「霊獣」で、「龍神」というくらいだから神様なのだ。『千と千尋の神隠し』に登場するハクを思い出していただきたい。本名が「ニギハヤミコハクヌシ」、すなわち水の神だ。
対してドラゴンは「幻獣」とか称されるけれど、扱いはあくまで生物。ドラゴンクエストのドラゴンのごとく、基本的に戦いの相手として登場する(もちろん、作品によって異なるけれど)。
ただ、龍もドラゴンも、おおもとはどこやらの古代史に登場する「巨大な蛇」だったようで、それが西洋に渡ってドラゴンになり、中国では龍になったということらしい。思想の違いやら環境の違いやら、いろんなことが絡み合って一方では化け物になり、一方では神になったものだろう。神としての龍に、蛇に近い形態が残っているのは面白い。

ドラゴンが「龍」の名で出てくる作品を少しご紹介する。

『エルマーのぼうけん』は読んだことがないのでわからない。
『龍のすむ家』こちらは僕の書棚にあるもの。

takizawa蔵書

ファンタジーと言えばイギリス。そのイギリスの、ごく普通の一軒家が舞台のこの作品は、ドラゴンが大暴れすることもなければ大冒険が始まるわけでもなく、子どもとネコと龍(ドラゴン)に囲まれた、愉快で楽しい毎日のお話。

『はてしない物語』こちらに登場するフッフール(『ネバーエンディングストーリー』ではファルコン)は、別名「幸いの龍」というようにどちらかと言えば龍に近い。

『ホビットの冒険』にも出てきたようだけれど覚えていない。また、ドラゴンがドラゴンとして登場するものに『エラゴン』があって、こちらはアメリカ人作家の作。読んだ記憶はあるのにストーリーはさっぱり。映画も見ていないので何とも言いようがない。

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日本の「龍」は神様なので、助けてくれたり力を授けてくれたりはするけれど、そこまで人間的になったりすることもない。その神秘性が、ドラゴンとは違う魅力なのだろう。ちなみに蛇は海と山でそれぞれ千年修行をすると龍になるという。神になるのも並大抵のことではない。
(短歌は自作です)




以上が昨年アップした記事。
龍は民話や昔話に数多く登場する。村娘に恋をしたり、神と言いながら結構人間臭いところもあったりする。もっとも日本の神様は、超古代から豪族の長の影が透けて見えていて、人間そのものだったのかもしれないけれど(戦で死んだりなんかして祀り上げられたのは別)。
それでも基本的には龍は自然の力の化身のようなもので、長く恐れられてきたのだろう。自然に対して畏怖と敬いを持つこの国だからこそ、大陸から伝来したものではあるけれど、もっと生活に密着したのだろうとおもう。
それにしても、これ以上大きな災害が起こらないことを祈りたい。




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