『詩』あたりまえのこと
雨上がりの林を歩いていると
雫が緑色に光っている
雫の一滴一滴に
過ぎてきたことが映っていて
ときおり足を止めて
緑の葉の一枚に手を触れると 雫が落ちて
記憶がふっと蘇る
その施設では
目が合うとお婆さんが
きまって僕の手を取りに来てくれた
寄り添うようにして歩きながら お婆さんは
遠く離れた街から息子夫婦が
今度会いに来てくれるんだよ、と
いつも嬉しそうに話してくれた
あの子は英語が喋れてね
今はよその国に行ってるんだよ
今度帰ってくるんだって
でも僕は息子夫婦に
一度も