No.14 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」
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二次会のパーティー会場は、
既に人で賑わい始めていた。
イェンが座るテーブルを探すと、
幸いチャンさんと同じテーブルに座っている。
近づいて行くと、先ほどまでは見えなかった
SOCIALの別の同僚の姿も見える。
「あれ?ユンさん、来てたんですか?」
「はい!さっき着きました。
田中さん、ここ空いていますよ。」
ユンさんは、海外進出部門だ。
僕と彼女は、普段はあまり交流はない。
イェンは、彼女の友達と話している。
少し席が遠いが、同じテーブルには
座っているので、
(まあ、後で話すタイミングもあるだろう)
と思い、ユンさんの隣に座った。
パーティー会場のスタッフが、
飲み物をサーブし始め、
僕も、Tigerビールをもらった。
司会が、ハキハキとした声で、
二次会の開始を告げ、乾杯の音頭を取る。
「モッハイバッヨー!!」
日本語で、1.2.3カンパーイだ。
僕らのテーブルも、それに習い、
乾杯をする。
皆、杯を持って立ち上がり、
「モッハイバッヨー!!」
と言って、ガチャンッ!と杯をぶつける。
隣の若い兄ちゃんが、やたらと強く
杯をぶつけて来て、溢れたビールが僕のスーツにかかる。
(今日は水運が悪いな。うん。)
チャンさんに、一度海の中に落とされている為、
最早気にもならない。
隣の若い兄ちゃんは、
日本人が隣に座ったのが嬉しいらしく、
やたらと僕に乾杯を求めてくる。
彼も少し英語を話せたので、
僕も彼に乗っかり、杯を重ねて行く。
「モッハイバッモッハイバッモッハイバッヨー!!」
酔いが回って来て、乾杯も熱気を帯びて来る。
二人とも、目つきが変わってきている。最早戦いだ。
隣の兄ちゃんは、既に顔が赤い。
それでも、僕にお酌をして来るので、
僕も注ぎ返してやる。
(ジャパニーズサラリーマンを舐めるなよ!!)
背番号はないが、日本代表としての
絶対に負けられない戦いは、
僕に軍配が上がった。
彼は、活動限界を迎えたようだ。完全に沈黙している。
(よし。俺の勝ちだ…)
なかなかに杯を重ねた為、僕も酔いが回っている。
ようやく乾杯地獄から解放された僕に、チャンさんが、
「田中さん、大丈夫ですか〜?」
と言いながら、目で右を見ろと
アイコンタクトを送って来る。
「大丈夫ですよ〜。」と言いながら右を見ると、
イェンの隣が空いている。
(チャンス!)
僕は、スクッと立ち上がると、
コップとビールを持ち、
彼女の隣に座った。
「Hi」
「Hi Are you fine?」
「Yes maybe.」
「You are good at drinking beer.」
「Yes yes.」
(しまった。酔っ払って、全然頭が回らない…)
母国語ならまだしも、アルコールが入ると、
僕の英語のレベルでは、会話に支障が出る。
それでも、一生懸命に頭を回して、
彼女と話した。
「I heard you work in Ho chi minh city.」
「Yes I work in Ho Chi Minh and in Japanese company.」
「Oh really? How long do you work?」
「Almost 3 years.」
そんな事を聞きたい訳ではないのだが、
最後の一歩が踏み出せない。
そんな葛藤をしながら、会話をしていると、
周りの席の人達が、突然立ち上がり、
帰り支度をし始めた。ベトナム式の結婚式は、
突然始まり、突然終わる。これは普通の事だと
後で知った。
(え。もう終わりなの?)
まだ始まって1時間程度だ。
展開に頭がついて行かず、
アタフタとしていると、
イェンが、
「Nice to see you. I need to go now」
と告げて来た。
「Ah, ok. Good to see you.」
彼女は立ち上がり、出口の方に向かう。
(このままで良いのか?ここを逃したら、
もうチャンスはないぞ。)
と、思うと同時に、身体が動いていた。
イェンは、会場の入り口付近のお手洗いに入ったようだ。
お手洗いの前で待ちながら、気持ちを落ち着ける。
(ふう。よし。言うぞ。言うぞ。)
もう気が気ではなかった。
やがて、イェンが出て来た。
手を上げながら、
「Hi ahh…」
「Hi what?」
後が続かない。頭が回らない。
(ヤバイ…連絡先って、何て言うんだっけ?)
やっと、
「Your cellphone…」
と、この世の終わりのような顔で、
スマホを指しながら言ったが、
「Cellphone?」
とイェンは一瞬怪訝な顔をしていたが、
すぐに察したようで、
僕のスマホをばっと奪い、
番号を打ち込み、通話を押した。
イェンのスマホに着信したのを確認し、
「This one. See you.」
と言い、去って行く。
「Thank you!! I will contact you!!」
一瞬振り返り、手を振って笑顔で去って行く。
その場で立ち尽くしていたが、
忘れないうちに、スマホの連絡先に、
イェンの名前を登録した。
大きな勝負をやり遂げた僕は、
テーブルに戻って行く。
「あ!田中さんいた!どこに行ってたんですか〜!」
「ごめんごめん!もう帰る?」
「はい!行きましょう!」
帰るというのは、ホーチミンに帰るのだ。
チャンさんは、当初2泊3日にしようと誘って来たが、
日曜の夕方に黒川社長とのミーティングがある為、
1泊2日で帰る事にした。
初めてベトナムで遠出をした、
ファンティエトは、イェンと共に、
僕の思い出に刻まれた。
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