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No.16 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」

ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」No.15はこちら

2018年6月中旬

(今週もハードだった…)

土曜日の夕方、展示会の運営サポートを終え、

会場のベンチにもたれ掛かっていた。

黒川社長から指示された、

海外進出部門の展示会運営サポートは、

1日だけかと思ったら、2日間あった。

ただ幸いにも、2日間のうち、1日は

土曜日だったので、平日の稼働が潰されずに済んだ。

(土曜出勤で、平日の稼働が潰されなかった事を

喜ぶのも何かおかしいけどな…ハハハ。)

行動量の目標を大幅に上げた分、日割りには少しだけ

届かなかったが、何とか肉薄している。

「さて、オフィス戻るか」

海外進出部門の、リンさん、

他のメンバーとタクシーに乗って戻る。

「リンさん、今日も残業ですか?」

僕がニコニコとリンさんに聞く。

「今日は帰ります!」

「え!リンさん帰っちゃうんですか?

後で戻って来ますよね?」

「戻りません!たまには早く帰らせて下さい!」

「うわー。今日は一人ぼっちか〜…」

「田中さんも早く帰って下さいよ!

今日は社長もいないし。」

リンさんは、海外進出部門のマネージャーで、

僕の数少ない残業仲間だ。

リンさんの言うように、黒川社長は数日前から

出張に行っている。

COMVIM CENTERに着き、

海外進出部門のメンバーを見送り、

僕は一人オフィスに上がって行った。

土曜日なので当然だが、

オフィスには誰もいない。

僕は、鍵を開けてオフィスに入った。

「ふう。さて、やるか」

平日の勤務時間は、ほとんど自分の仕事は

出来ない。黒川社長や、人材研修、人材紹介、

ITサポート部門のメンバーからの質問事項や、

依頼事項で、引っ切り無しに声を掛けられるため、

毎回集中力が切断される。

ある時から、緊急の場合を除いて、

自分のやりたい仕事は、皆の帰った夜や、

土日にやる事が多くなった。

「この習慣も、絶対良くないのは分かってるんだけどなぁ。」

かと言って、今の所このスタイルを解決する

良い知恵も浮かばなかった。

黒川社長への週次報告書を送り終え、

時間を見ると、もうPM7:30を過ぎている。

「ヤバイ!急がなきゃ!」

約束があるのだ。

荷物はオフィスに置いて、

鍵を掛けてオフィスを後にする。

バックパッカー通りとも呼ばれるブイビエン通り

で飲みの約束がある。

マクドナルドで待っていると、

彼が現れた。

「お疲れ様です!」

「お疲れ様です!あれ、仕事だったんですか?」

ビジネススタイルの僕を見て、

水野さんが聞いた。

「はい。そうなんですよ。今週は土曜まであって」

「あ〜、そうなんですね!お疲れ様です!

とにかく、行きましょうか!」

ブイビエン通りに向けて歩き出す。

彼の名前は、水野あきひろ。僕と同じ26歳だ。

ITサポートの取引先に訪問した際に

この4月に入社し、4月の中旬にベトナムに来たばかり

との事で、歳も近く意気投合したのだった。

「へ〜!これがブイビエン通りか〜!

凄い活気ですね!」

「そうですよね!じゃあ、適当に

その辺入りましょうか!」

僕らは、手頃な感じのバーに入り、

ビールと、チップスを注文した。

「同い歳ですし、敬語はナシでいきましょう!」

「OK!!じゃあ、乾杯!」

「あきひろは、どういった経緯で

ベトナムに来たの?」

「俺は、現地採用やねん。

ベトナムに来る前は、ワーホリで、

オーストラリアのブリスベンっていう街

にいたねんな。」

「へ〜!そうなんだ!ワーホリ興味あるんだよね〜、

良い所だった?」

「めっちゃ良い所やで!オススメやわ!

コウイチは、どうしてベトナム来たん?」

「俺は、大学卒業して、東南アジアで働きたくて、

今の会社に入ったんだよね。それで4年間音沙汰なかったんだけど、

今年辞令をもらって、ベトナム来た感じ」

「へ〜!凄いな!じゃあ、念願叶っての

ベトナム勤務や!楽しまなな!」

「だね!」

あきひろも、僕もお酒は飲める方だから、

どんどん杯を重ねていった。

「コウイチ、イケる口やな〜!

もう何軒か行こか〜?」

「OK!」

僕らは、すぐ近くのバーを2軒目に決めた。

あきひろが、流暢な英語でジンをオーダーする。

(うお〜、流石ワーホリ経験者。英語めっちゃ上手いな)

関心しながら、

「あきひろは、めっちゃ英語上手いね!」

「いや〜、そんな事ないねんけどな。でも、ありがとう!」

「オーストラリア行くと、英語は伸びる?」

「正直、自分次第やで、俺は、学校行ったけど、

周り日本人ばっかやったから、すぐに辞めて、

働きながら、毎日オージーの集まるバー行って、

そこで英語覚えたわ」

「なるほどな〜。努力したんだね。」

「そんなシミジミ言われると照れるわ!

飲もか!」

彼は、ジンの瓶を取ると、

二人分のグラスに注いでいった。

「これ、多分ほぼ原液やで。ハハハ。

コウイチ大丈夫か?」

「大丈夫!大丈夫!イケるっしょ!」

軽いノリで言ったが、これがイケなかった…。


気付いた時、僕はどこかの通りの路上で寝ていた。


ヨーロピアンの男性が、路上で寝る僕の手を引きながら、

何か言っている。

「Hey men! Are you fine? Don't sleep here!

Where is your house? I can bring you there!

(おい!大丈夫か?こんな所で寝るな!

家はどこだ?送って行ってやるよ!)」

僕は、状況が掴めないまま、彼と歩いて行く。

落ち着いて周囲を見回すと、

レタントン通りの近くだという事が分かった。

タイバンルンの入り口まで着くと、

僕は彼に、

「My home is near here. Thank you so much.

(家はこの近くだから。ありがとう。)」

と伝えた。

「Plz be careful men. Good night!

(気を付けろよな!お休み!」

と、笑顔で言った彼は爽やかに去って行く。

家に帰り、シャワーを浴びながら、

記憶の糸を手繰り寄せて行く。

(あきひろと2軒目に行って、その後

確か3軒目に行ったのかな?)

それ以上思い出せず、

身体を拭いて、ベッドに横たわり、

眠りについた。

昼頃に起きてから、

あきひろに連絡すると、

「コウイチ、昨日大丈夫だったか?

ひどい二日酔いやわ。ハハハ。」

どうやら僕らは、合計6軒ハシゴをして、

僕が路上で寝ていたあそこは、

6軒目のクラブの前だったようだ。

「コウイチ、無事で良かったわ〜。

6軒目が人い過ぎて、俺ら逸れたねん。

あのジンの原液が悪かったな!ハハハ!」

僕がこの日以来、ジンを飲むのを止めたのは

言うまでもない…。

ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」No.17はちら

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