No.27ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」
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2017年4月末日
僕は、タクシーに揺られて、ビンズン省の工業団地に入居されている、
お客様の元に急いでいた。
(次のお客さん…絶対に受注する!!)
時はこの日の朝に遡る。朝礼の際、黒川社長から、
「研修チームは、昨年全く貢献出来ていないんだから、今期のスタートである
今月は、絶対に達成しろよ!!田中、分かってるな!!」
「はい!」
…勢い良く返事をしたのは良いものの、午前中1社目で、早々に打ちのめされるのであった。
「いや〜、田中くん、鋭意努力したんだけどさ、やっぱり今期は予算が取れなかったよ。ごめんね〜。」
「え…もう予算組み出来ているというお話で、本日契約の締結という事でしたよね?」
「それがさ〜、本社の社長が、『教育ぐらい、自社で賄え!!』って、凄い剣幕で言って来たんだよね〜。申し訳ないんだけど。じゃあ、この後会議あるから!それじゃ!」
一方的に面談を打ち切られ、打ちひしがれながら、お客様先を後にした。
(ヤバイ…一番の見込み客からの契約が…)
気持ちを切り替えられないまま、お客様先を後にして、近くのカフェに入る。
「あ、もしもし、クエさんですか?マズイです…契約予定だった1社目の企業、契約取れませんでした…」
「え!?どうしたんですか?確か予算にも組み込んでもらっていたという話でしたよね?」
「そのはずなんですが…本社の社長から、急にNOが出たようで…」
「そうですか…でも、ダメだったものは仕方ないですね。次があります!田中さんなら出来ますよ!ゴーレン(頑張れ)!!」
「…そ、そうですね。落ち込んでいても仕方ない!他の企業様に行ってきます!!」
クエさんの後ろで、人材研修チームが、口々に「ゴーレン!!ゴーレン!!」と叫んでいるのが聞こえたのも、僕を勇気付けてくれた。
(よし!!まだまだ回れる先はある!!)
気合いを入れ直し、2社目、3社目、4社目と訪問して行くが、どの企業様からの返事もパッとしなかった。元来、『押して取る』という営業が苦手な事もあり、こういった切羽詰まったシーンで成果を出すようなタイプでもない。地道に関係構築をして、手順と時間をかけて営業をするのが常であった。
(次が最後の1社だ…。)
ふと、タクシーの車内のバックミラーに写った表情を見て、入れ込み過ぎて引きつっている自分の顔が写り、苦笑してしまった。
(こんな表情してたら、ご契約頂けるものも頂けないよね。よし。どうせダメ元だから、リラックスして行こう!)
そう思うと、自然と肩の力が抜けた。
「久しぶりだね!田中くん!テトの彼女の親御さんへのご挨拶はどうだった?」
「お久しぶりです!いや〜、思った以上に修羅場でしたよ!日本人は、歓迎されるなんて噂話は、耳半分に聞かないといけませんね!!」
こんな、どプライベートのなかなか珍しい経験談を前に、この社長様も身を乗り出してアレコレと聞いてきた。リラックスして臨んだ僕は、仕事の話そっちのけで、身振り手振りを交えて、テトの時のイェンの親御さん、親戚への挨拶でのエピソードを面白おかしく話したのであった。
「いや〜、笑った、笑った。田中くん、良い経験したね〜。あ、で今日は何だっけ?」
「あ!仕事の話忘れて帰る所でしたよ!ハハハ。人材研修実施の話、確か少し先とは伺っていたのですが、その後動きはあったかなと思いました。いかがですか?」
「あ!そうそう!ちょうど相談しようと思っていたんだよね!5月か6月で実施出来ない?人数は、そうだな、30名前後だと思う。」
(何〜!?ダメ元で来て良かった〜!」
内心小躍りしている気持ちを抑えて、
「そうでしたか!5月、6月は、何社か研修が入っておりますが、ちなみに、上旬、中旬、下旬ですと、どちらをご希望でしょうか?」
すかさず日程を詰め、何と、全く見込んでいなかったお客様より、ご契約を頂く事が出来たのだった。
お客様先を出た僕は、契約書を写真で撮り、クエさんに送ってから、電話した。
「もしもし、クエさん。やりました…4月予算達成です!」
「うわー!シンチュックモン!(おめでとうございます!)」
「これで、今期、幸先良くスタート出来ましたね。引き続き頑張りましょう!」
「はい!頑張りましょうね!気を付けて帰って来て下さい!」
帰りのタクシーに揺られながら、僕は余韻に浸っていた。
(何とかやれたな〜…お客様と、あとは、イェンとご家族にも感謝だな。)
思い出すだけでも苦しくなる、あのダナンでの経験をした事が、まさか自分の窮地を救う突破口を開くとは思わなかった。
(でも、日本で成果が出ていた時も、思い返したら、こんな感じだよな。自分の事を曝け出して、お酒を飲んで、人間のお付き合いをする。やっぱりこれが正解だよ。)
帰りが遅くなるため、黒川社長に電話で業務報告をした。
「お疲れ様です。最後のお客様で、人材研修のご契約を頂けまして、何とか4月予算達成出来ました。」
「おう!おめでとう!引き続き宜しく頼むぞ!」
「はい!頑張ります!」
電話はそれで切れた。
8:00PM少し前に、オフィスに着いたが、既に誰もいなくなっていた。
(いる訳ないよな…)
「ふうっ」っと少しため息をつくと、誰もいない静かなオフィスで、
受注後の処理を一人黙々と始めるのであった。
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