No.8 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」
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急いで家に戻り、身支度を整えて、待ち合わせ場所である、COMVIM CENTERに向かった。待ち合わせの時間は、18:00。17:45には、現地に到着した。
(良かった。余裕を持って到着出来た。)
一人で周囲を観察しながら待っていると、他にも数人待ち合わせをしている日本人らしき人を見かけた。
(COMVIM CENTERって、待ち合わせだったり、ランドマーク的存在なんだな。)
そんな事を考えていると、18:00ちょうどに、目の前にタクシーが止まった。見ると、黒川社長が乗っている。僕は、少し緊張しながら、タクシーのドアを開け、
「お疲れ様です!お久し振りです!」
と元気良く声を掛けた。
「よお!無事着いたか?空港から市街までは問題なかったか?」
「いえ、しっかりボラれました。ハハハ。」
そんな会話を交わした。黒川社長とは、ベトナム渡航前に日本で一度お会いしている。SOCIAL立ち上げ時代からの社員で、叩き上げで役員にまで上り詰めた人だ。黒川社長も、この春に人事異動でベトナム・ホーチミンに駐在する事になった。
ふと、黒川社長が、大きな声で僕の後ろの方に声を掛けた
「吾妻さん!こっちです!」
(吾妻さん?誰だろう?)
振り向くと、長身で眼鏡をかけた、目元が鋭い男性が、ノシノシとこちらに向かって来る。
(なんだか、強そうな人だな。。)
そんな事を想いながらも、反射的に、
「初めまして!田中と申します!」
と挨拶した。
「初めまして!吾妻です!君が噂の、期待のエースだね!」
「いえ、エースなんてとんでもない!」
「エースじゃないと、こっちが困るんだよ!」
黒川社長から突っ込まれ、慌てて、
「はい!頑張ります!」
と言うのがやっとだった。既に脇汗が凄い。
「じゃあ、とりあえず行きますか」
と黒川社長が歩き出した。
レタントン通りとは、反対側の通りの方に向かっていく。COMVIM CENTERは、入り口は2つあり、1つは、僕の家のある側、レタントン通りだ。もう1つは、リチュチョン通りだ。
道すがら、吾妻さんと少し話したが、吾妻さんは、カンボジアの教育支援をするNPOからSOCIALの社員となった変わり種で、SOCIAL VIETNAM、SOCIAL CAMBODIA、SOCIAL INDONESIAの人材研修事業のトレーナー育成の為に、各国を行き来しているとの事だった。
黒川社長は、リチュチョンと、ハイバーチュン通りの交差点を渡り、角の建物の階段を上って行く。キレイ目なベトナム料理屋があった。
(キレイなお店だな〜。汚いお店の方が興味はあるけど。とにかく、初ベトナム料理だ!楽しみ〜!)
ワクワクしながら席に着く。
黒川社長が席に着くなり、灰皿を引き寄せた。僕は、飲みの席で、この辺の気が回らない。先輩にも何度か指摘された事があるが、自分がタバコを吸わないからか、飲食店でのアルバイト経験などがないからか、どうしても反射的に灰皿を用意したりが出来ない。お酒がなくなりそうになったら、次を促したり、お酌したりは出来るのだが、タバコに関してはどうしても直らない。
黒川社長が、タバコに火をつけながら、
「ほら、何でも好きなもの頼めよ!」
とメニューを渡して来る。
「ありがとうございます!えっと…」
(好きな物って言ってもな…)
そんな僕の気持ちを察したのか、吾妻さんがリードしてくれる。
「黒川社長は嫌いな食べ物特にないですよね?田中くん、嫌いな食べ物ある?パクチーとか」
「あ、僕は特にないです!何でも食べられます!」
「そっか、じゃあ、、エモーイ!」
店員さんが、やってくる。
(エモーイ?また新たなベトナム語だ。すみません的な感じかな?)
吾妻さんが、
「カナイ!モッカイ!カナイ!モッカイ!」
と、テキパキと料理を選んでくれる。
(????家内?木灰?)と、日本語な訳がないのに、勝手に心の中で漢字変換している。
「あと、飲み物はお二人ともビールで良いですか?」
「はい。」
と黒川社長。それに続いて、僕も
「はい!」
「じゃあ、バーロンビアタイガー チョートイダー?」
と伝えると、店員さんは、奥に引っ込んで、やがてビールとグラスを持って戻って来た。グラスに、日本では見かけない氷が入っている。
「ビールに氷を入れて飲むんですか?」
「おー!初めてか!ベトナムではこのスタイルなんだよ」
と黒川社長。
氷の入っているグラスにビールを注ぐのは初めてながら、3人分のビールを注いで行く。
「じゃあ、とりあえず、ようこそベトナムへ!これから頼むぞ!乾杯!」
「乾杯!こちらこそ、宜しくお願いします!」
そう言いながら、ビールを流し込む。昼頃に機内食を食べてから何も食べていなかったので、空きっ腹にビールがしみた。
「くー、美味い!氷が入ってると、変な感じはしますが、美味しいですね!」
「でしょ?始めは俺も抵抗あったんだけど、慣れたら、もうこっちの方が美味く感じるから不思議だよね!」
「お前、学生時代東南アジアを旅行してたって聞いたけど、氷入りビールは初めてなんだな」
「はい!ベトナムは学生時代の旅行で来た事がなかったのと、学生時代は好んでお酒を飲まなかったので。」
「ふーん、どこの国に行ったんだ?」
品定めするような調子で、黒川社長からの質問が続く。
(なんだか、面接の気分だな。)と内心感じながら、
「はい!マレーシア、シンガポール、インドネシア、カンボジア辺りですね!大学卒業前最後の春休みには、SOCIALカンボジアと、SOCIALインドネシアにもお邪魔させて頂きました!」
「へー!そうなんだ!学生時代に海外現地法人に顔出してるとは、やるねー!流石海外志望!」
吾妻さんが相槌を入れてくれる。
「いえ!せっかくの機会だったので、人事部にお願いしたら、訪問してもOKとの事だったので。一応ドレスコードも確認して、旅行だし、Tシャツ、短パンでも良い、って事だったので、そのまま旅行着で行ったら、SOCIALカンボジアでは何も言われなかったんですが、SOCIALインドネシアでは、『せめて襟付きのシャツ着てこいよ』と言われてしまいましたが。ハハハ。」
「そうか。梶さんなら言いそうだな。」
梶さんとは、SOCIALインドネシアの当時の社長だ。今は代表者が変わっている。
「まあ、その頃からのアピールもそうだし、お前の元職場の佐藤支社長からも推薦されてたから今回の引き抜き制度で目に留まった訳だ。」
「え、佐藤支社長からの推薦ってどういう事ですか?」
「聞いてないか?本社で会議があって、顔合わした時に、よく『横浜に海外勤務希望の面白い若手がいるから宜しく』って言われてたんだよ。」
「そうだったんですか。。知らなかった。」
(佐藤支社長に、感謝しないとな。)
「まあ、何はともあれ、自らも望んだ海外勤務だし、沢山の海外勤務希望者から選ばれたんだ。24時間365日働くつもりで、頼むぞ!」
(ん!?24時間365日!?)と一瞬思いながらも、
「はい!頑張ります!」
と元気良く答えた。
吾妻さんは、何も言わなかったが、その様子を複雑な表情で見守っていたのが気に掛かった。
その後は、先ほどの注文の時に使ったベトナム語や、簡単なベトナム事情について質疑応答のようになり、一通り話も食事も終えて、吾妻さんから教えてもらった、会計をもらう言葉、
「エモーイ!ティンティエン!」
を試し、会計をもらった。その日は、黒川社長にご馳走になった。
お店を出て、黒川社長がタクシーに乗り、
「じゃあ、明日午後にな!」
と言い、帰って行った。吾妻さんと僕は、家が近所との事だったので、一緒に歩いて帰った。帰り際に吾妻さんから、
「まあ、始めは慣れない事ばかりだろうから、気楽にね!」
と言葉を頂き、お礼を言って、帰途についた。食事の席での吾妻さんの表情が何を意味していたのか、少し気にはなっていたが、その日は疲れていたため、シャワーを浴びてすぐ眠りについた。
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