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No.2 ノンフィクション小説「ブロークンライフ!!」

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「なぜ俺が選ばれたんだろう?」

家で一人そんな風に想いを巡らせていたが、部署の人選をするような役職ではない自分には、検討も付かず、その日は第三のビールを一本空けて眠りについた。

その翌日、驚いた事に、他の3部署からも引き抜きの声が掛かった。全く知らない、法務部門、M&A部門、営業企画部門だった。

自分としては、既に海外部門に決めていたし、勢いで返事もしてしまったのだが、気になったので、特に熱心だったM&A部門の責任者に質問してみた。

「あの〜、何で僕を選んだんですか?」

「お前は選ばれし者なんや」

(え、それだけ?)

それ以上詳しくは教えてくれなかったが、内辞なんて今までの人生で初めての経験だったので、

(こんな感じなのかな?)

と思いながら、引き抜きのお話を頂いた全ての部署の責任者に、社交辞令的に、

「もう少し考えさせて下さい。またこちらからご連絡させて頂きます。」

とだけ答えて、日常業務に戻った。

外回りを終えて、会社に戻ると、支社長が

「田中、ちょっと良いか?」

と応接室に手招きしている。

(内辞の事かな?)

と思いながら応接室に入ると、

「電話あったよな?」

「はい」

「どこからあった?」

「海外部門、法務部門、M&A部門、営業企画部門です。支社長これ何なんですか?」

「今年から、営業部門からの引き抜き制度が始まってな。引き抜くだけで、増員はしないってんだから、まったくこっちからしたら良い迷惑だよ。ハハハ。」

(そうなんだ。営業からしたら人が抜けたら困るし、そりゃそうだよな。。うう、気まずい。)

「でも、何で僕なんですか?殆どの部門の責任者の顔も知らないんですが。」

「お前、プレゼン大会で毎回壇上上がってたろ?優勝は出来てなかったけど、一番会場沸かせてたから、お前は知らなくても、皆んなは知ってるんだよ。」

「え!そうなんですか。知らなかった。」

「で、田中。お前、行くんだろ?海外部門に。」

「はい!絶対行きます!」

「そっか。お前が抜けるのは正直かなりイタイけど、ずっと言ってたからなお前。海外部門に行くなら良いよ。応援する。」

「支社長。。ありがとうございます。」

「でも、お前、いつ現地に赴任するんだ?」

「4月1日と聞いてます。」

「4月1日!?お前、一人暮らしだよな?アパートとか、引っ越しとかどうするんだ?」

「これからすぐ取り掛かかるつもりですが、、バタバタですね。ハハハ。」

「そりゃそうだろ。。国内ならまだしも。。分かった。ちょっと待ってろ。」

その場で誰かに電話をし始めた支社長。

「もしもし?寺内?俺、佐藤だけど。ウチの田中が海外部門から内辞もらってて、4月1日から現地入りするように指示受けてるらしいんだけど、流石に急過ぎるから、後ろ倒しにするよう調整してくれ。頼むよ。」

寺内さんは、人事部の部長で、佐藤支社長の同期だ。
電話を切った支社長が僕に、

「これで大丈夫だろう。とにかく、海外部門に行くまでは、まだウチの支社の人間だ。期末だから、お前も最後まで協力してくれよ。あと、忙しい中悪いが、引き継ぎ訪問もロクに出来ないだろうから、引継書徐々に作っておいてくれ。頼むな。」

「はい。色々とありがとうございます。」

支社長はスッと手を出し、

「おめっと〜」

ちょっと癖のある、いつもの言い方で、祝福してくれた。

「ありがとうございます。」

僕は支社長の目を見ながら、その手を力強く握った。

支社長は、何事もなかったかのように、業務に戻っていく。

僕は、

(支社長、本当にカッコいいな。)

と思いながら、気持ちを鎮める為にトイレに寄ってから業務に戻った。

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