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ずーっと ずっと だいすきだよ

エルフィーのことを、はなします。
エルフィーは、せかいで
いちばん、すばらしい犬です。
ぼくたちはいっしょに大きくなりました。
でも、エルフィーのほうが、ずっとはやく、
大きくなったよ。
           〜絵本抜粋

時々、泣きたくなるほど心を掴まれる絵本と出会うことがある。その一冊が『ずーっと ずっと だいすきだよ』というハンス・ウィルヘルムさんがイラストと文を手がけた絵本。

小学校の国語の教科書にも採用されたので、ひょっとしたら目にされている方もいらっしゃるかもしれない。

犬や猫たちの成長はとても早く、10年も過ぎればその姿に老いが見え始める。共に暮らす人間からすれば彼らの生涯はとても駆け足に感じられて、少し寂しい。

1年前に我が家の年老いた猫が行方不明になり、私はこの小さな存在が自分にとってどれほど大切なものだったのかを思い知った。家具にいたずらされて叱ったり、爪切りの際にはお互いにジリジリと闘ったり...大変だと思っていたことさえ愛おしく思い出される。外出着に猫の毛が付くのがあれほど厄介だったのに、彼がいなくなって服は綺麗なまま。その金色の毛が何も付いていない服を見て涙がこぼれた。

いるのがあたりまえになっていた日々が、なんて幸せだったのだろう。頬に押し付けてくる湿った鼻先の柔らかな感触。じっと見つめる茶色の瞳。
私は自分の方が心や生活を支えられていたのだと、いなくなってようやく気づいたのだった。

たった一つ、私は彼を抱きしめながらいつもかけていた言葉がある。
「大好きだよ。本当に大好きだよ。」

いなくなった時に、私はそのことを思い出しながら探し歩いていた。あの子は私があの子のことを大好きだということを知っている。だから...きっとまた会える。
なんの根拠もないけれど、そう思うことで救われていた。

みんなはエルフィーのこと だいすきだった。
すきなら、すきと いってやればよかったのに
だれも、いってやらなかった。
いわなくっても、わかるとおもっていたんだね。
             〜絵本抜粋

本当にそうなのだ。動物にでも人間にでもだけど、言わなくてもわかるだろうと、照れくさいのもあってなかなか言葉に出して伝えようとしない。そしてきっと永遠にお別れする時になって、伝えなかったということが悲しみを深くするのかもしれないと思ったりもする。

またいつか、縁のあった小さな命と一緒に暮らし始めたとしても、その犬や猫たちは見送った命の代わりにはならない。だから今、ようやく会えたあの子と一緒にいられるときに、いつも伝えたいと思う。

「ずーっと、ずっと、だいすきだよ」と。

いつかぼくも、ほかの犬を、かうだろうし
子ネコやキンギョも、かうだろう。
なにをかっても、まいばん
きっと、いってやるんだ。
「ずーっと、ずっと、だいすきだよ」って。
    〜絵本抜粋





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