保育日誌⑥:憧れの年長さんへ
卒園が近づいてきました。
この時期は年長さんの怪我が以外と多く、保育士も注意を払っています。
年長クラスの3月生まれ、T君はいつも元気な男の子。
前置き通り、彼が先日怪我をしました。
滑り台を勢いよく駆け上がった時、見事に転倒。
グラついていた前歯が抜けました。
しかも2本。
もともとグラついていた歯ということもあり出血も少なく、にっと笑って歯抜け状態の間抜けな笑顔に思わず笑ってしまいました。
まあ、かなりヒヤッとしましたが。
話は少し変わって、保育園では例年、年中児が卒園児にメッセージを考えて贈ります。
年中児のMちゃんも保育士と一緒にメッセージを考えていましたが、中々考えつかないようで悩んでいるようです。
「誰のメッセージ考えてるの?」
保育士が聞きました。
「T君なんだけど…」
先日歯が2本抜けたばかりの彼です。
何かヒントになるように、Mちゃんにアドバイスをします。
「T君と遊んだこととか、お世話になったことを思い出してごらん」
「うーん。あんまり遊んでないしな。いつもうるさいし」
パンチの利いた悪態です。
こうした卒園児と思い出がいつも美しいとは限りませんね。
それでも振り返ることは大事です。
「じゃあ、T君の好きなところ、かっこいいところでもメッセージになるよ」
と伝えると、Mちゃんが閃きました。
「あ、歯が抜けているところかっこいい!」
思わずずっこけそうになりました。
「え、なんでそこ?」
「だって、私この前、歯抜けたでしょ?なのに、T君は、2本も一気に抜けたんだよ、すごくない?」
何が「なのに」なのかと思いましたが、Mちゃん先日、年中児一番乗りで歯が抜けたばかりだったのです。
それを毎日のように、友だち保育士に自慢して喜んでいたのを思い出しました。
なるほど、T君の歯の抜けた姿は彼女にとっては憧れの姿だったのでしょう。
1本で嬉しかったにも関わらず、T君は驚愕の前歯2本抜きです。
でもね、Mちゃん。その歯は滑り台ですっ転んで抜けただけなんだよ。
子どもは何に憧れを抱くかわかりませんね。
Mちゃんの純粋な眼差しはたいへん可愛らしかったのですが、メッセージは変更してもらいました。
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