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【校閲ダヨリ】 vol.53 NIE(Newspaper in Education)について、元教員の視点から考えてみる その2



みなさまおつかれさまです。
前回は、NIEについてその概要と授業案をひとつお届けいたしました。
今回は、新聞を使った学習についてもう少し展開してみようと思います。


2.新聞の構造を分析してみよう


「新聞」というと、どうしても「読むもの」ととらえてしまいがちですが、実は立派な研究材料になり得ます。
対象を子どもに設定するなら、活字への苦手意識が強すぎて「読む」までたどり着けない子への提案はもちろん、反対に「読むスピードが速すぎて」暇を持て余してしまっている子の追加学習課題としても対応できます。
また、新卒者などの研修にもこの案は大いに役立つのではないかと思っています。



で、それは何? 何を分析するの?



それは、「人それぞれ」でよいかと思いますが、ご参考までにいくつか型を示しておきますね。

①全体的な構造分析

・何ページ(面)あるのか
・社会面、国際面、経済面、地域面など、どんなカテゴリに分かれているのか
・写真は何枚くらい使われているのか
・広告にはどんな種類があるのか

新聞というメディアの全体像をとらえることができるテーマです。個人でも完遂できますし、グループ学習に発展させることも可能です。
ここを足がかりとして、たとえば「純粋に事実だけを伝える記事と、記者や有識者の意見が書かれている面はどこか分析する」「一面にはなぜカテゴリ分けがされていないのか調べる」「記事形式の広告は新聞だけのものなのか、雑誌と比較しながら調べる」といった、もうひと掘りした学習につなげることもできます。


②カテゴリを絞った構造分析

・広告の種類の違いにより、どんな効果の差が生じるか

→新聞は主に「使用する段数」によって広告料金が異なりますが、そこを突き詰めてみても面白いかと思います。私も全面広告の値段を最初に知ったときは目玉が飛び出るかと思うほどの新鮮な驚きが得られました。


・「株価欄」に、いくつ会社名が載っているか数えてみる

→私は正直、自分でこの作業をするには気が進みませんが、研究内容としてはすごく面白いと思います。このテーマの良いところは、「そこからさらに発展させて研究を深掘りできる」ところではないかと思います。
株式とはどんな仕組みで、株式会社とは何か。「東証一部」「マザーズ」とは何で、そこに入るにはどのような条件が必要なのか。夏休みがさらに充実しそうなコンテンツが目白押しです。


・新聞社ごとの比較

→「全国紙と地方紙で扱うニュースにはどんな差があるのか」「全国紙のなかで、論調の違いから新聞社の特性を探る(記事を読み込む必要があるので高校生以上向け)」など、複数の新聞を使って分析をします。社会に対する予備知識や、ある程度の読解力が必要になるものが多いので、対象年齢は上がると思われます。


・レイアウト系の分析

→「新聞は『文字が小さい』というイメージがあるが、雑誌と比較して本当に小さいかどうか調べてみた」「記事内の文字の流れ方(読み進め方)が難しいものを集めてみた」「この記事はゆったりと読める気がするのに、こっちの記事は窮屈な気がする。その差は果たして文字の大きさの違いなのだろうか」など、デザイン的な視点からも分析ができます。出版物に深く携わる身としては、新聞は組版の基礎的な部分を学べる良い教材だなあと思っており、デザインが好きな人におすすめのテーマです。取り組む際は「級数表」というツールがあるとより研究の精度が上がるものが多い気がします。



3.投書してみよう


新聞は、発信型の企画も各紙用意されているところが多くあります。「読むもの」という固定観念を取り払うと、かなり自由な展開ができます。
記事に対する意見を書くのも良いし、エッセイなど創作系の文章でも構いません。私が購読している新聞では、読者の制作したイラストを紹介する面もあったりして、「思った以上に開かれたプラットフォーム」なのが新聞です。
近年、義務教育の場で重視されているテーマが「思考力「アウトプット力」ですので、それに紐づいた学びを得られるでしょう。
高校生以上であれば、方向性は変わりますが「プレゼンテーション」というベクトルからもアプローチが可能かと思われます。


いかがでしたでしょうか。
新聞という成熟したメディアから、多くのことを学ぶことができそうですよね。
子どもはもちろん大人まで、それぞれの習熟度に合わせて課題を設定することが可能です。

少し逸れますが……私が「学び」について日頃考えているのは、「どんなことでも、どんなに『これは要らない』と思っても、自分の糧とすることができる道はある」ということです。
現役教員時代は「先生、この勉強将来なんの役に立つの」という問いをよく投げかけられ、そのたび困惑したものですが、今ならそれに明確に答えることができそうです。


それは未来の君にしかわからない。でも、君が将来進みたい道を見つけたときに、昔捨ててしまったことが必要で諦めなければならないのは寂しいだろう? だからだよ。


大人たちは、そんな、頑張りながら日々学ぶ子どもたちに何が残せるでしょうか。
学ぶことは、可能性を広げることです。我々大人も子どもたちに負けないように、楽しみながら学んでいきたいですね。


それでは、また次回。


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