『問いの編集力』安藤昭子 | Discover
よく過去の自分に本を贈るならという話があるけれども、私ならこの本を若気の至りしかなかった時分の自分に送りたい。というより、本で問いたい。
職業柄、ひとにはよく問うてきた方ではないだろうか。いわゆる教師からコーチへと移ろうにつれて、その問いはイエス&ノーで答えられるクローズクエスチョンから、それが難しいオープンクエスチョンへと変えてきた。しかし、そんなことは問いの本質ではない。問いは内容ではなく、方法が肝要だからだ。
この本は問いを農業に見立てているところも、農福をやっている身としては嬉しい限りだ。目次を見ていただくとわかるのだが、問いの土壌をつくり、種を集めたあと、発芽させ、ついに問いは実を結ぶ。
例えば、問いの種を集める際は、眼鏡を借りてこいと本書はいう。眼鏡とは、ひとの身になることで、幼い子どもになって、はじめておつかいにいったなら、テレビ番組よりも手に汗を握るのではないか。普段の見慣れている道が一変し、途端に日常が驚きの連続になるかもしれない。
子どもの目線になってというのはわかりやすいから例にしたけれども、今週急に肥えだした雀になって見てもよいし、ご自身の盲腸から日々の暮らしを眺めてもよい。要は内外から見直すことで、問いが育まれるのだ。
偶然を必然にする。
これも問いを編むことによって、できるという。
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