17. 音と記憶のつながり:音が引き起こす感情と体験
音は私たちの感情や記憶に深く結びついています。特定のメロディや環境音を聞くと、過去の出来事や場所、人々のことが瞬時に蘇ってくることがよくあります。音楽だけでなく、日常的な音や自然音もまた、私たちの意識の中に眠る感情や記憶を呼び起こす力を持っています。音がいかにして記憶を刺激し、感情と結びついた強力な体験を作り出すかについて掘り下げてみましょう。
音が引き起こす「瞬間の記憶」
特定の音を聞くと、その音が発生した場所や時間、さらにはそこで感じた感情までもが一瞬で蘇ることがあります。例えば、海の波の音を聞いたとき、誰もが異なる体験を思い出します。ある人にとっては子供時代に家族と過ごした海岸の思い出かもしれませんし、他の人にとっては孤独な時間を過ごした旅行先かもしれません。音はその場にいた感覚を一瞬にして呼び起こし、感情を伴った記憶を蘇らせます。
この「瞬間の記憶」を利用したのが、スポンジ バンッ バンッの象徴音®の制作です。象徴音®は、特定のブランドや場所、体験を象徴する音で、聞く人にその瞬間や体験を呼び起こさせます。例えば、ある企業の象徴音®を聞くだけで、その企業が持つ信頼感や温かみを瞬時に感じ取れるようにデザインされています。
感情を動かす音の力
音には感情を動かす力があります。音楽がその最たる例であり、あるメロディが幸福感をもたらす一方で、別のメロディが悲しみや懐かしさを引き起こすことがあります。しかし、音楽だけでなく、環境音や日常の音にも同様の効果があります。たとえば、雨の音はリラックス感や落ち着きをもたらし、都市の喧騒は忙しさや活気を感じさせます。
フィールドレコーディングを通じて集めた音も、この感情と記憶のつながりを活かしたプロジェクトの一環です。例えば、大塚の美食街で集められた調理音の音などは、その場所で過ごした記憶や経験を持つ人々に強烈な印象を与えます。アーティストはこれらの音を活用して、特定の場所や文化を象徴する作品を作り出すことができ、聞き手に感情的なつながりを与えます。
ブランド体験と音の結びつき
ブランドと音の結びつきも、感情と記憶のつながりに深く関わっています。象徴音®を使うことで、ブランドはその企業やサービスが提供する価値を音として表現し、消費者に対して強い印象を残すことができます。音を通じたブランディングでは、消費者がその音を聞くだけでブランドの特定のイメージや感情を思い起こすことが可能です。
たとえば、スポンジ バンッ バンッが手掛けた名鉄のサウンドロゴでは、ジャズの街として知られる岡崎の地域性を音で表現しました。この象徴音®は、聞いた瞬間にその場所の文化や雰囲気を呼び起こし、地域とのつながりを感じさせるものです。ブランドは、こうした音を通じて、消費者との感情的なつながりを築くことができます。
音がもたらす未来の体験
音を使って記憶や感情を引き起こす力は、未来の体験デザインにおいても重要な役割を果たします。特に象徴音®やフィールドレコーディングのような取り組みは、単なるサウンドデザインを超えて、消費者に強い印象を残す体験を作り出すためのツールとして進化しています。
今後、AIやパーソナライズされた技術が進化するにつれ、音が持つ感情的な効果はさらに強調され、個人の記憶や感情に寄り添ったサウンド体験が増えていくでしょう。音を通じて人々がどのように感じ、記憶し、ブランドや体験と結びついていくかを探求することが、これからのサウンドデザインの重要なポイントになることは間違いありません。
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