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土を踏む

今日はなんとなく、気持ちが落ち込んでいた。

なので、土を踏める道を選んで歩くことにした。


僕が普段歩く道は、舗装された道ばかりだ。

舗装されている道は歩きやすいのだが、その歩きやすさゆえ、つい歩みを速めてしまう。

普段は嫌ではないのだが、今日に限っては速足で歩かされるのは御免だった。


土の上を歩くとき、僕の歩みは自然とゆっくりになる。

単に歩きにくいからか、普段味わえない感覚をじっくり味わいたいからか、はたまた野生の本能を思い出すからか。

そんな思考を遊ばせながら、土と芝生に覆われた公園を歩く。


土が、僕の体重を優しく受け入れてくれた。

人は不思議と、自然に癒しを求めることがある。

今日、土を踏みたくなったのも、僕が無意識に自然を求めていることの表れなのかもしれない。


公園を抜け、いつもの散歩道に戻ってくる。

舗装されたその道ではやはり、足が前へ、前へと進んでいく。

身体がどんどん活動するペースを速めていく。

だが不思議なことに、あれだけゆっくり歩きたがっていた僕の心は、速足で歩く身体を受け入れているのだった。

土を踏みしめ、草の匂いを感じながら歩いたあの時間が、心に新鮮な息吹を吹き込んでくれたのだろうか。


そしていつものように、身体は灰色の街に溶け込んでいく。

数分間の穏やかな時間を、徐々に身体が忘却していくのを感じる。

そんな中でもたしかに、自分の心に青々とした気持ちが宿っていることを感じられるのだから不思議なものだ。


自然を歩くことは、私たちに何か大切な感覚を思い出させてくれるのだろう。

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