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文字を書くスキルはどのように評価されるのか?

文字を書く(Handwriting)スキルは標準的な検査(Movement Assessment Battery for Children-Second Edition: MABC-2やDevelopmental Development Test of Visual-Perception-Third Edition: DTVP-3など)では,トレース(なぞり書き)課題によって算出される,「ズレの量」が重要な指標として使われています。
ズレの量は,目と手を協調的に動かす運筆動作ならではの指標と言えます。

https://filetransfer.fr/uploads/2017/5/1493796871-Correction_M_ABC_2_GA1_pour_diffusion.pdf

それ以外に,文字を書く時には親指と他の指でペンを正確に制御する,力のコントロール能力が必要となります。さらに,ペンの操作だけでなく,「筆圧」を調整することも求められます(Smits-Engelsman et al., 2008)。

前回の記事でご紹介した,発達性協調運動症(DCD)児は,文字を書くときにペンや鉛筆を強く握りやすく,過剰な筆圧を高めてしまうために、疲労が生じやすいことが知られています(Cermak and Larkin, 2002)。

この筆圧については言語間の文化差によって異なる結果が示されています。

ヘブライ語やアラビア語のように右から左へ文字を書く場合,右利きの人は紙を押しながら書くことになります。このような言語では,DCD児は手書き課題の際に,筆圧が弱いことが分かっています(Rosenblum and Livneh-Zirinski, 2008; Rosenblum et al., 2013)。

Rosenblum and Livneh-Zirinski, 2008 Fig.2 と Table.2 を引用
表の下線部は筆圧の結果を示している。名前を書く課題とパラグラフの模写課題で,DCD児は筆圧が定型発達児よりも低下していることが分かります。図b左はパラグラフ模写課題のDCD児の筆跡を示しています。著者は,この筆跡に関して定型発達児と比較して,文字が整理されておらず読みにくいこと、文字の修正が多いことを指摘しています。

このように文字を押して書く,または引いて書くといった動作により筆圧パターンは異なることが分かります。
日本語は左から右に書きますが,漢字一つ一つやひらがな,カタカナで押し書き,引き書きが必要となるため,動きの協調性が求められる言語です。

そして,文字を書く際のペン先の動きの「滑らかさ」も書きの評価として用いられることがあります(Caligiuri et al., 2010)。
滑らかさは性差があることも知られており,男性のほうが女性に比べてペンの移動速度が速く,滑らかではない動きを示すと言われています。

これらの「ズレの量」「筆圧」「滑らかさ」を定量的に評価することができるタブレット端末のTracecoder™をKNOTでは導入しています。

https://tracecoder.com/

書きが嫌いになる前に,予防的に早期にトレーニングに取り組むことが重要です。
出来るだけ早く1年生や2年生のうちに、専門家にご相談されることをお勧めします。

KNOTでは、Tracecoder™による書きの評価,そしてトレーニングを実施しています。
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Caligiuri, M. P., Teulings, H. L., Dean, C. E., Niculescu III, A. B., & Lohr, J. B. (2010). Handwriting movement kinematics for quantifying extrapyramidal side effects in patients treated with atypical antipsychotics. Psychiatry research, 177(1-2), 77-83.
Cermak SA and Larkin D (2002) Developmental Coordination Disorder. Canada: Cengage Learning.
Rosenblum, S., & Livneh-Zirinski, M. (2008). Handwriting process and product characteristics of children diagnosed with developmental coordination disorder. Human movement science, 27(2), 200-214.
Rosenblum, S., Margieh, J. A., & Engel-Yeger, B. (2013). Handwriting features of children with developmental coordination disorder–results of triangular evaluation. Research in developmental disabilities, 34(11), 4134-4141.
Smits-Engelsman, B. C., Westenberg, Y., & Duysens, J. (2008). Children with developmental coordination disorder are equally able to generate force but show more variability than typically developing children. Human movement science, 27(2), 296-309.

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