文字を書く(Handwriting)スキルは標準的な検査(Movement Assessment Battery for Children-Second Edition: MABC-2やDevelopmental Development Test of Visual-Perception-Third Edition: DTVP-3など)では,トレース(なぞり書き)課題によって算出される,「ズレの量」が重要な指標として使われています。 ズレの量は,目と手を協調的に動かす運筆動作ならではの指標と言えます。
それ以外に,文字を書く時には親指と他の指でペンを正確に制御する,力のコントロール能力が必要となります。さらに,ペンの操作だけでなく,「筆圧」を調整することも求められます(Smits-Engelsman et al., 2008)。
前回の記事でご紹介した,発達性協調運動症(DCD)児は,文字を書くときにペンや鉛筆を強く握りやすく,過剰な筆圧を高めてしまうために、疲労が生じやすいことが知られています(Cermak and Larkin, 2002)。
この筆圧については言語間の文化差によって異なる結果が示されています。
ヘブライ語やアラビア語のように右から左へ文字を書く場合,右利きの人は紙を押しながら書くことになります。このような言語では,DCD児は手書き課題の際に,筆圧が弱いことが分かっています(Rosenblum and Livneh-Zirinski, 2008; Rosenblum et al., 2013)。