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影絵

訳もなく電気も付けずに2人で横になっていた。何かを待っていたのかもしれないし、たまたま電気を付けなかっただけかも知れない。

彼女は何の前触れもなくスマホのライトをオンにして天井に掲げ、それから僕の胸の上にそれを置いた。たまにくるこの無茶振りに僕は意地でも応えなくちゃならない。多少、というか全然面白くなくても。

だから手始めに僕は影で犬を作った。(お、今笑ったな?よしよし。手応えはあったぞ)次にうさぎを作ろう"とした"。結構な頑張りだったのに訳の分からないクリーチャーが天井に現れた。これが決め手だったらしい。彼女は爆笑していた。意図せず面白くなってしまったが笑ってくれるならそれでいい。

彼女とのこの平穏な時間に僕は他に何にもなくていいや。なんて思ってしまう。欲に塗れたぐしゃぐしゃなはずの僕が、彼女と同じ限りなく透明なまん丸になっていく瞬間。それは彼女の魔法であり、鱗粉だ。もし夢なら覚めなくていいとも思う。

そうして僕らはしばらく影絵で遊んだ。

ゴージャスバスタイム

前回の宇宙風呂で好評だったキラキラを継承した入浴剤を使って僕らはまたキラキラお風呂を堪能した。今回はキラキラの粒が細かくて水中でモワモワと光の渦がうねっている様は溶解した金の中に浸かっている様でもあった。あと2回分残ってるし、いつ入ろうか?次入る時はもっとちゃんとアイスとか準備しよう。もっとゴージャスバスタイムしよう。

僕らは影絵の影

隣にいようがいまいが関係ないが寝る前に必ず彼女の事が思い浮かぶ。理由は特にない。好きだからしょうがない。そんな事をしていたらふと思った事がある。

"僕らは影絵の影の様なものなんじゃないか"

お互いの手が自分自身だとして、天井に映る影が僕らから見た僕ら。自分たちの手元は自分達に近過ぎるからこそよく見えないし、正確な形をそれそのものを見ないと分からない。だけれど僕らは天井に投影された影しか見る事ができないから、時々お互いが思った形になっていない事がある。

"犬って言ってたのに何それネッシー?"

みたいな事になりかねない。もちろん僕や彼女は犬だと思って手を形作るんだけど、影の見え方もその形の感じ方も、ましてや光の当たる角度なんてバラバラでどう映るかは映って見なくちゃ分からないことの方が大半だ。だから僕らは注意深く"ね、それって何の形?"と確かめ合うし、2人で形を作るときなんかぎこちなく自分の手を動かしながら、僅かずつ、しかし確実に慎重に形を成していく。

そうやって少しずつ少しずつ動きの癖や、その姿形を覚えて読み取って影に落とし込んでいく。だから僕らはきっと影絵の影の様なものなんだ。すれ違い、位置を確かめ合い、また影を合わせて少しずつその形を変えながら生きていく。何度も何度もやってるうちに綺麗に合う様になってより完璧に近付いていく。

"ね、あれなに?"
"いや、あの、ウサギ、、、"

何度繰り返したって分からないこともあるのかも知れない。それでも僕らは互いの形を、その温度を確かめ合いながら今日も影絵を作っている。

天井にはまだ歪なウサギが跳ねていた。

今日はここまで!
いつかまた与太話を。
んじゃまた!!

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