ラドゥ・ジュデ『Sleep #2』アンディ・ウォーホルへの挑戦
ラドゥ・ジュデは最新ドキュメンタリーを2本、ロカルノ映画祭2024に出品した。本作品はその片割れである。いきなり題名が"#2"となっているのはアンディ・ウォーホルの伝説的実験映画『Sleep』への言及であり、続編の自称である。映画は定点カメラで24時間ライブ中継されているウォーホルが"眠る"墓の映像を繋ぎ合わせて作られており(これが正しいライブ配信切り抜き映画か)、ジュデ自身によってDesktop Filmと自虐的に表現されている。おおよそ撮影した順番で映像が並べられており、幾度となく訪れる昼と夜のサイクルを経て季節が進みながら、人や動物が来たり来なかったり、墓の上に置かれたキャンベル缶が増えたり減ったりする。来た人はだいたい写真を撮って帰る。セルゲイ・ロズニツァ『アウステルリッツ』のラドゥ・ジュデ視点という感じか(あれは『夜と霧』の"続編"だった)。定点カメラから遠すぎるので彼らの会話は聞こえない。机を持参した家族が墓の隣で宴会やってたのは流石に悪趣味すぎて爆笑した。定点カメラなので画質はおおよそスクリーン向きではないが、物理的な遠さが視覚化されているようで(つまりカメラが近すぎると表現できなかったものが見えるという意味で)良い効果を持っていた。あと、たまに俳句の英訳らしき文章が映像の上に登場する。季語、というか季節がそのまま入っているので相性が良いと見たのか。
・作品データ
原題:Sleep #2
上映時間:61分
監督:Radu Jude
製作:2024年(ルーマニア)
・評価:70点
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