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クリストフ・オノレ『マルチェロ・ミオ』父を演じ直し、父に近付く旅

2024年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。クリストフ・オノレ長編16作目。マルチェロ・マストロヤンニ生誕100年記念映画?キアラ・マストロヤンニとは長年のコラボ歴があるので、今回のふざけた映画も監督できたのだろうと推測する。物語の主人公は女優キアラ・マストロヤンニであり、他の関係者もほぼ全員実名で登場する。キアラはある日、鏡の中に父親マルチェロを幻視し、24歳の時に亡くなった偉大な俳優である父親を演じ直すことで彼の足跡を辿り直し、心の距離を埋めようと試みる。そう決意してから、キアラは父マルチェロが映画で演じたキャラの格好をして、自らをマルチェロと呼び始める…わけだが、映画のキャラを演じ直しても俳優としての彼には近付けても父親としての彼には近付けないのでは?と思うなど。冒頭からトレビの泉が登場し、ラストでも『甘い生活』が引用されるし、TV番組に出演するのは『ジンジャーとフレッド』だし、台詞で『三つの人生とたった一つの死』が引用されるし(気付けたのはそれ一本のみだが他にもあるっぽい)、そもそもの格好は『8 1/2』だしと、生涯で一度もスランプのなかったスター俳優である父親のキャリアを余す所なく使って全身でオマージュを捧げている。また、登場するバンジャマン・ビオレはキアラの元旦那だったなどマルチェロ・マストロヤンニ以外の部分でも内輪ネタを盛り込んでいるっぽい。流石に分からんて。また、そこまでして内輪ウケを狙いまくっているのに、子猫を理由もなく登場させて一瞬で退場させるなど意味不明なシーンも多く、特にファンでもフランス芸能界に詳しいわけでもないので困惑するだけだった。まぁ確かにサングラスかけるとお父さんそっくりではある。ちなみに、終盤でマルチェロ=キアラに"私の名前当ててみて"と声を掛けた老女、『甘い生活』のパオラちゃん(ヴァレリア・チャンゴッティーニ)かと思ったら、ダリア・ダルベルティ(Delia D'Alberti)という方でした。いや、分からんて。

追記
そういえば、これ観てたらガイ・マディン『My Dad Is 100 Years Old』を思い出した。ロベルト・ロッセリーニ生誕100年のトリビュート短編で、娘のイザベラ・ロッセリーニが父ロベルト・ロッセリーニ、母イングリッド・バーグマン、アルフレッド・ヒッチコックなどを演じていた作品だった。こっちの方が面白かったですね。

・作品データ

原題:Marcello Mio
上映時間:120分
監督:Christophe Honoré
製作:2024年(フランス, イタリア)

・評価:50点

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