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フランソワ・オゾン『私がやりました』私が変態プロデューサーを殺しました?

フランソワ・オゾン長編22作目。ジョルジュ・ベルとルイ・ヴェルヌイユが1934年に発表した同名戯曲の映画化作品。1935年パリ、女優マドレーヌは弁護士ポーリーヌと共に安い下宿をシェアして暮らしていた。家賃滞納中だが仕事もなく、貧しい生活を余儀なくされている。ある日、マドレーヌは大物プロデューサーに愛人になるよう迫られたので怒って帰宅するが、彼女が帰った前後でそのプロデューサーは殺されており、検察官に犯人扱いされてしまう。状況証拠と偶然の一致だけで犯人を決めて掛かる検察に対して、正当防衛として殺してしまったこと、そしてそれは男性優位社会への女性たちの反抗であるとして裁判に進んでいく。明らかにボブ・フォッシー『シカゴ』っぽい展開なのだが、『シカゴ』自体は1924年の出来事を女性記者モーリン・ワトキンスが脚本にした作品(をフォッシーがミュージカルにした作品)なので、寧ろこっちの方が後発らしい。本作品では、自立を求める女性の探求と家父長制との闘いを中心に据えていて、後発で最初から正当防衛無罪放免を期待する似たような殺人事件が起こったり(実際に『シカゴ』の時代は女性被告への判決が甘々だったらしい)、真犯人が名乗り出てきたりしても、基本的には序盤でマドレーヌとポーリーヌが裁判をハックした手法で話をすり替えていく。判決前最終口上でのマドレーヌの台詞を含めて要所要所での台詞は確かに社会批評として優れているのだが、それを盾にしちゃうのはあまり良いとは思えなかった。

・作品データ

原題:Mon Crime
上映時間:102分
監督:François Ozon
製作:2023年(フランス)

・評価:60点

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