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カルラ・シモン『太陽と桃の歌』スペイン、ある桃農家一族の肖像

2022年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品、金熊賞受賞作。子供たちが原っぱに捨てられた車で宇宙船ごっこに興じている。車は長年の遊びの果てに秘密基地化しており、子供たちの重要な遊び道具だった。しかし、ふと目を離した隙にクレーンで撤去されてしまった。幸福と平穏は永続しない。一気に不穏な空気が立ち込める。先祖代々桃農園を経営するソレ家には危機が訪れていた。地主ピニョルがソレ家の土地にソーラーパネルを設置するため、一家に立ち退きを要求したのだ。土地の借用が口約束だったことを知った一家は立ち退き要求に従う派、抵抗する派、どうでもいい派に分かれ、それぞれの物語が展開される。家長ロジェリオはピニョルを懐柔しようとするが失敗し、その長男キメは立ち退きに反対し、義理の息子シスコはピニョルと癒着することで一抜けしようとし、不機嫌なティーンエイジャーたちは親たちの顔色をうかがいながらも農地への関心はなく、三人の子供たちは縦横無尽に遊び回る。どの立場に居ても、共通して感じているのは築き上げたアイデンティティが突如崩壊することへの憂鬱であり、各々それを解消するために動いている、という真面目で分かりやすい家族の肖像である。年代の異なる三人の子供たちから見た家族の生活はリアルな質感を以て捉えられているが、全体的に無難すぎて特にこれといった印象を残さず終了。より直接的な蹂躙への批判が展開される終盤で盛り返すが110分も我慢できなかった。

・作品データ

原題:Alcarràs
上映時間:120分
監督:Carla Simón
製作:2022年(スペイン)

・評価:40点

・ベルリン国際映画祭2021 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . カルラ・シモン『Alcarràs』スペイン、ある桃農家一族の肖像
2 . カミラ・アンディニ『ナナ』1960年代インドネシアにおけるシスターフッド時代劇
3 . クレール・ドゥニ『愛と激しさをもって』生まれ変わった"私たちは一緒に年を取ることはない"
6 . リティ・パン『すべては大丈夫』リティ・パンはお怒りのようです
7 . パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』兄ヴィットリオ・タヴィアーニに捧ぐ物語
8 . ウルスラ・メイエ『The Line』スイス、トキシックな家族関係について
9 . ホン・サンス『小説家の映画』偶然の出会いの連なり
11 . ミカエル・アース『午前4時にパリの夜は明ける』人生の中で些細な瞬間を共有すること
12 . フランソワ・オゾン『苦い涙』ピーター・フォン・カントの苦い涙
13 . ミヒャエル・コッホ『A Piece of Sky』スイス、変質していく男と支え続ける女
14 . アンドレアス・ドレーゼン『クルナス母さんvs.アメリカ大統領』ラビエ・クルナズと国家の1800日戦争
15 . リー・ルイジュン『小さき麦の花』中国、花と円形は愛のしるし
16 . ウルリヒ・ザイドル『Rimini』"父親"を拒絶し、"父親"となる歌手の兄
17 . ナタリア・ロペス・ガヤルド『Robe of Gems』メキシコ、奇妙に交わる三人の女性の物語
18 . ドゥニ・コテ『That Kind of Summer』カナダ、性欲過剰者の共同生活から何が見えるか

★エンカウンターズ部門選出作品
1 . アルノー・ドゥ・パリエール『American Journal』フランス、独り善がりなシネマエッセイ
3 . Jöns Jönsson『Axiom』ドイツ、嘘とパクリで構成された人生
4 . Syllas Tzoumerkas&Christos Passalis『The City and the City』テッサロニキとユダヤ人の暗い歴史
5 . ベルトラン・ボネロ『Coma』停止した"現在"は煉獄なのか
7 . Kivu Ruhorahoza『Father's Day』ルワンダ、"父親"を巡る三つの物語
11 . アシュリー・マッケンジー『Queens of the Qing Dynasty』カナダ、"期限切れ"の未来
13 . 三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』聾唖のボクサーの日記

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