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クリスティアン・ペッツォルト『幻影』ベルリンを彷徨う三人の女たち
大傑作。2005年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。"幻影"三部作の第二篇。ニナはベルリンの福祉施設で生活する10代後半の少女。ある日、公園でゴミ拾いのボランティアに参加していると、男たちに殴られる女を見かける。彼女の名前はトニ。ニナはトニに破れた代わりの服をあげて親しくなり、息苦しい施設を飛び出していく。一方、幼児の頃に誘拐された娘を探し続けているフランソワーズは偶然ニナを見かけ、自分の娘の面影を幻視する。冒頭でニナがトニに出会うシーンでは、ニナのバストショットの端にトニの靴がフレームイン→振り返るという流れになっていて、未知の人物との出会いとしてフランソワーズに肩を掴まれる→振り返るシーンで繰り返される。映画ではニナがカメラを睨むようなショットが多く登場するが、彼女の見る方向ではなく、寧ろ彼女の後ろ側に本当の世界が広がっているのではないかと思うほど、彼女の前に広がる世界は曖昧で、フランソワーズはニナに、ニナはトニに、ありもしない幻影を重ねている。それが現実になったかのようなラストには流石にゾッとした。私的勝利の女神ザビーネ・ティモテオ登場&ベルリン放浪ということで、マリア・シュペト『The Days Between』っぽいかと思いきや、本作品のほうがもっと不気味。
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・作品データ
原題:Gespenster
上映時間:85分
監督:Christian Petzold
製作:2005年(ドイツ)
・評価:90点
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