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Alexandr Zolotukhin『Brother in Every Inch』ロシア、飛行訓練生の双子兄弟の絆
2022年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。アレクサンドル・ゾロトゥキン(Alexandr Zolotukhin)長編二作目。エンカウンターズ部門ががソクーロフ門下生の登竜門になりつつあるの、良き。と言いつつ、ウクライナ侵攻の直前にプレミアとなった結果、そっ閉じ状態で長らく放置されてしまっているようにも見える。理由は簡単だ。空軍のパイロット候補生たちの物語なのだ。主人公はアンドレイとミーチャという双子兄弟。あまりにもそっくりな上に、映像上で二人は区別されていないので、どっちがどっちとして認識されても良いということなんだろう。二人は双方苦手な科目があって成績はあまり良くないが、なんだかんだ互いを補い合って訓練や授業を乗り越えている。そんな兄弟に対して、同期は優しく接しているし、教官も息子を見るような目線で見守っている。『フルメタル・ジャケット』の世界はここには微塵も存在しない。飛行訓練の様子はまるで『トップガン』のそれであり、ロシア版『トップガン』なんて呼ばれ方もしていたが、本作品には愛国心の煽るような描写は皆無だ。これを観て空軍に入隊しようと思う人間も皆無だろう。それほどまでに、空軍基地を舞台としながら兄弟の関係性についてフォーカスしている。二人共漠然とした不安を感じていて、特に飛行訓練が不得意なミーチャは兄と離されるのではないかと心配している。映像上は区別されない双子の精神状態は牧歌的な風景によって代弁されている。不思議な映画だ。なんだか物足りない気もするんだが、それは戦争映画に慣れすぎているということなのだろうか。
・作品データ
原題:Брат во всëм
上映時間:78分
監督:Alexandr Zolotukhin
製作:2022年
・評価:70点
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