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ベスト4を選ぶなら
流れで、「ベスト4選ぶなら?」となった。
ぼくの文学作品ベスト4はこれ。
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堀口大學先生は、ご自宅が葉山の家のご近所だった。小さい頃、ルパンシリーズでお世話になった。何しろ日本語が美しい。
自宅すぐそばの森戸神社境内には記念碑がある。
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『月下の一群』は初版本の装丁の美しさに惚れ惚れした記憶がある。大正14年の上梓なので、実物を触ったことはなく、何かの展示で。葉山町図書館だと思う。堀口大學先生20代から30代はじめの若き感性で訳された詩たち。コピーライティングの仕事する前には、開いて、自分の日本語センサーを研ぎ澄ませる。
シャボン玉の中へは
庭は這入れません
まはりをくるくる廻ってゐます
『天切り松』シリーズは全部揃えてる。でも、いつもどこかのカバンに入ってるので、揃わない。今日も揃わなかった。粋を思い出させてくれるのと、黙阿弥のような気持ち良いリズム、きっぷの良さ、そして、流れる粋。いき、と読んでね。すい、じゃないよ(笑)
すっかり酔い潰れた政五郎を背中にしょって、尾和うち枯らした寅兄ィがぶつくさ文句をたれながら帰(けぇ)ってきたと思いねえ。折も折、鳥越長屋の根城じゃあ、安吉親分、黄不動の栄治、書生常、振袖おこん、それに使いッ走りの俺がちゃぶ台を囲んで、いやあめでてえめでてえと雑煮なんざ食っていたところに、破(や)れ戸ががらりと開いて、あけましておめでとうござんす・・・
舞台なら大向うから「待ってました!」と声が出るシーン。主な登場人物勢ぞろい。
『半島を出よ』はぼくの中では村上龍最高傑作と思う。分厚い上下二巻、書き下ろし原稿枚数1,650枚(400字詰め)。つまり66万文字。北朝鮮のコマンドが開幕戦の福岡ドームを占拠する。
あの、韓国の方ですか。リ・キヒの左脇の女がもう一度そう聞いた。三十代前半だと思われる女は、漫画的な鷹の帽子を被って発泡スチロールの容器に入った黄色いうどんのような麺類を食べていた。韓国人ではありません、とリ・キヒが答えた。韓国人じゃなかごたるよ。女はうどんを噛みながら隣の夫らしい男にそう言った。観客と会話をするな。何か聞かれても返事をするな。キム・ハッスはリ・キヒにそう言った。リ・キヒに質問した女は、うどんを食べる手を休めることなく、リ・キヒとキム・ハッスの顔と、二人が手にしている武器を交互に見ている。
テロについての物語だが、実のところ、日本の曖昧さ、眠たさ、ダメさを浮き彫りにする。
ここで思い出すのが現在実際に行われている戦争だ。ぼくも含め、多くの日本人は「遠くの出来事」としてとらえている。自分の身にふりかかるとは夢にも思わない。それが、引用した箇所の女性に表れている。武器を持った相手の隣で、平気でうどんを食べ続ける神経。日本の曖昧さ、眠たさ、ダメさ。
『月と六ペンス』は、自分自身が旅に出た時、主人公と重ね合わせて痛かった小説。
転じて、フリーランスに必須の能力としてる。
月は「ロマン、夢」だね。フリーランスに必要な点火エンジン。
六ペンスは「稼ぐこと」。
この両方が必要。
ややもすると月ばかりの話になるけど、稼いでナンボだから。
以上、ぼくの文学ベスト4でした。